ビクビクする三流作家

今度出す予定の本の、ゲラが届いた。
これまでに40冊程度の本を出してきた(そのわりに大ヒットがない。毎度、出版社には申し訳ないと思っている)。いつも本を出す過程で「嬉しい瞬間」というのが何か所かあるのだが、「ゲラが届く時」というのはその大きなポイントだ。

ゲラ1

というのは、作家は原稿を書いて提出し、ほっと一息。そこからしばらく待つことになる。その間、編集者はなにか作業をしてくれているのだろうが、それはこっちには見えない。
すると、待っている間に、
「作業は進んでいるのだろうか?」
「なにか問題があったのか?」
「社内でモメているのか?」
「こんなひどい内容とは思わなかった。出版は取りやめだ…とか?」
…などと、悪い想像が黒雲のようにもくもくと湧き出てくるのだ(ぼくだけかもしれない。なにせヒットを出したことがない三流作家だから、考えはどんどんネガティブになり、常にビクビクしている)

そこへ、紙の形で印刷されたゲラが届くと、
「よかったあ! ちゃんと出版されるんだ」
とほっとするのだ。
この形になるということは、すでにデザイナーさんとか他の人の手がかかっているのだから、今さら中止にはならないだろう…と安心する(とはいえ、どの段階でもお蔵入りの可能性は常に残っているのだが)。
今回は、新型コロナの影響ですべての作業が二か月ばかり滞ってしまったから、不安はいつもより大きく育っていたのだ。

ここ数冊は調べものが多い本だったけど、今回は完全なエンタメ。かつてのぼくの本で言えば「愛と青春のサンバイマン」とか「死人にシナチク」が好きな方には、喜んでもらえると思う。あと、この前NHK-FMでオンエアしたドラマ「00‐03 都より愛をこめて」とか(とタイトルを並べても、わかってくれる方は少ないだろうが…)。

このあと、またいくつかの不安の関門を潜り抜け、無事出版となる日まで、三流作家はビクビクしながら作業を進めていく。

お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。