日本社会は女子高生にヨワイ

『一芸を究めない』という本を作る時、ページの関係で本に入れなかった原稿をいくつかUPしている。これは横書きでないと通じにくいので入れなかったもの。ちょっと長い。

日本社会は女子高生にヨワイ
 
「ギャル文字」あるいは「へた文字」と呼ばれたものを、憶えているだろうか? 2000年代の初め、ケータイのメールが一般的になった頃、女子高生たちを中心にちょっとブームになった。ケータイ内蔵のひらがなやカタカナ、漢字だけでなく、アルファベットや記号までを駆使して、日本語をわざと妙な具合に表記する遊びだ。

うまく表記できるかどうかわからないが、やってみよう。
「走召匕マ」
「マ儿††ュ→〒〒<?」
これは、
「超ヒマ」
「マルキュー行く?」
と読む。そう言われれば読めないこともない。
「なんでわざわざこんなメンドクサイことを…」
というのが正直な感想だろう。私もそう思う。

女子高生たちが部首や記号に詳しいわけではない。ケータイの内蔵文字一覧を見ると、ふだん使わない漢字だけでなく、ギリシャ文字、キリル文字、理科記号、地図記号、マーク…など、たぶん一生使わないだろう文字・記号がぎっしり入っている。それを眺めて「似た形のもの」を選んでいるだけだ。
なにしろ、彼女たちは日がな一日ケータイを眺めているのだ(今だとスマホ。その前段階だった)。開発者の大人が考えもしない利用方法を思いついても不思議はない。

実は私は、この「ギャル文字」「へた文字」の本を出したことがある。知り合いの若い女性作家が「いま女子高生の間でこういうのが流行ってますよ」と情報を聞き込んできたので、「面白い! 本にしよう」と企画した。
『渋谷発!!へた文字BOOK』
というのがその本。2003年10月のことだ。著者名は「渋谷へた文字普及委員会」となっている。当たり前だが、私は女子高生じゃない。若手作家たちが女子高生に取材して書いた原稿のまとめ役だからだ。
しかしここから話題が転がり始め、企画者である私が前面に引っ張り出され、事態は思わぬ方向に進んでいく。

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