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文法研究 比較級の強調表現~many+可算名詞 VS much+不加算名詞~

Sakuraです。「比較」の分野を指導するときに、個人的に引っ掛かる表現がいくつかあるのですが、今回はあまり高校の教科書上では詳しく説明されていない表現にフォーカスを当てます。
今回は教科書の演習問題で出てきた、「much+不加算名詞/many+可算名詞の強調」を取り扱います。

比較級の強調のルール

まず、比較級の強調に関する基本事項の整理を。

1.英語表現Ⅰ・Ⅱの教科書で頻出する説明

勤務校で採用している『be English ExpressionⅡ』(いいずな書店)では以下の記載があります。だいたいの教科書では、これ以上の説明があることはありません。

・much/ far (by far)+比較級で、「ずっと/はるかに~」の意味を作る

(1) I think soccer is much more exciting than baseball.
(be English ExpressionⅡ, p.74)

2.文法書(大学生、教員向け)での説明

高校の教科書以上のレベルになると、さすがに以下のような追加の記載があります。(出典:『英文法詳解』(学研))

・veryによって比較級を強めることはできない(ただし、very much+比較級は可。つまり強調のmuchを強めることは可能)
・even/ still/ yet+比較級で、「さらに一段と~」「なお一層~」の意味を作る

(2) He acted even more stupidlly than usual.
(3) His delight was still greater than mine. (p.535)

ここまで説明があるのですが、肝心の、タイトルにある表現(数量を表すmany/much+名詞の比較級であるmoreを強調する場合)については、演習問題で出現していただけで、教科書内にも詳細な説明はありません。さて、次は何を調べれば出てくるのでしょう。

数量表現の比較級の強調

3.『ジーニアス英和辞典(第5版)』での説明

ということで、語法に強いジーニアス(ジーニアス英和辞典)に頼りましょう。もうすぐ(2022年11月ごろ)第6版が出るらしいので楽しみです。さて以下のとおりの説明でした。

(以下、ジーニアス英和辞典第5版 ”more” の項目より)
(4) I have many [×much] more foreign books than her [she does].
(私は彼女よりずっと多くの外国の本を持っている)
C名詞(Sakura注:Countable、つまり「可算名詞」を表す表記)の複数形を修飾する場合はmany

(5) I have much [×many] information about the matter than he (does).
(その件に関しては私は彼よりずっとたくさんの情報を持っている)
U名詞(Sakura注:Uncountable、つまり「不加算名詞」を表す表記)を修飾する場合はmuchを使う。far, a lotはCにもUにも使える

数量表現の比較級の強調まとめ

上記をまとめると(十分、辞書の記載だけでまとまっていると思いますが…)、次のようになるでしょうか。

・more+加算名詞複数形の場合

このmoreはmanyの比較級(可算名詞にかかる形容詞)であるため、強調する時はmanyを用いる(muchは不可)
(例)many more books than A

・more+不加算名詞の場合

このmoreはmuchの比較級(不加算名詞にかかる形容詞)であるため、強調する時はmuchを用いる(manyは不可)
(例)much more information than A

要するに、原形であるmany books/ much informationの形を崩すことはできない、ということでしょうか。
一般的な強調表現として、副詞のmuchがよく教科書でも出てきますが、much自体が量を表す「(不加算名詞が)多量の~」という意味を持っているため、more+可算名詞複数形を強調するには、形態上、不都合が生じるのかもしれません(可算名詞なのにmuchで強調するのは変だ、という感覚なのかも)。

ということでした。
今回も勉強になりました…。

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