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動詞の区別#3 自動詞と他動詞の意味的・統語的相違

こんにちは、Sakuraです。今回で自動詞・他動詞についてはラストにしたいと思います。
前回は英語と日本語との様々な違い(文字形態そのものから始まり、述語が定形動詞である必要がある点や、目的語、自動詞、他動詞という概念そのものの定着度の差など)に触れました。

今回は、英語の自動詞と他動詞の違いについて、意味的相違・統語的相違に基づいてきちんとまとめたいと思います。

1.自動詞の意味的・統語的特徴

1.1 意味的特徴

自動詞の意味的特徴は、「動詞それ自体で、ある行為や動作が成り立つ」ことだと言えると思います。

ここで「それ自体で成り立つ」というのは、動詞が表す行為・動作をなすために、他の名詞や形容詞などの要素が不要である、という意味です。

ここで例を挙げて具体的に考えましょう。

(自動詞の例)run, swim, come, go, stand, sitなど
例えばrunの場合、「走る」となりますが、走るという行為には、他に何が必要でしょうか。前回の場所を表す副詞を使ってさらに考えてみます。
(※母語である日本語のほうが直感的に理解しやすいので、日本語で例を示します)

(例1)校庭を走る
(例2)廊下を走る
(例3)道を走る

さて、一見すると、校庭も廊下も道も、走るためには必要な要素のように思えるかもしれません。

ただ、「走る」という行為は、その場所がどこであったとしても実行可能な動作であり、次の例のように、場所を表す副詞がなくとも文意が成立するのです。

(例4)彼は走った

「どこを走ったのか」を明言しなくとも走るという行為が成立し、文が成り立っています。

結果的に、例1〜3のような「どこどこを」という場所を表す副詞は、「走る」という動詞にとって、必須ではない、ということになります。
説明の順が逆になったかもしれませんが、runという動詞にとって、走るための場所は「文脈上で補ってもよいが、必須ではない」ということであり、それゆえ、その動詞単独で意味を成すことが可能なのです。

1.1まとめ

・自動詞は動詞単体で行為が完結する
・場所などを表す副詞は、必須要素ではない(=あってもなくても文意は成り立つ)
・このルールは自動詞すべてに当てはまる

ここではrunを取り上げましたが、当然ながらswimやcome, goにも当てはまります。

1.2 統語的特徴

さて、統語的特徴に行きましょう。
統語とは、要するに語順のことであると言ってもほぼ間違いありません。
ここでは、動詞の直後に、どのような要素が続きうるのかを述べていきます。

1.1で、自動詞は単体で行為が完結しうる、と定義できました。
また、例1〜3のように、場所を表す副詞が「続いてもいい」ということも確認できたと思います。

これを語順の観点でまとめるとこうなるはずです。

1.2まとめ

(1)主格主語+自動詞
(2)主格主語+自動詞+*副詞(句) 
     (*どこどこへ、どこどこに、いついつに、どのように、など)

もう少し記号を使って見やすくします。
(1’)S+自V
(2’)S+自V+in/on/atなどの前置詞+名詞(句)
※副詞句(前置詞+名詞)の例:in Tokyo, on Sunday, at the entrance
※副詞(前置詞を使わず、単体で副詞となる語のこと)の例:here, there, then, yesterday, today, tomorrow, fast, slowlyなど

要するに、自動詞の直後には、

①何も来ない
もしくは
②前置詞+名詞か、副詞句が来る

と覚えておく必要があります。
以上が統語的特徴になります。

2.他動詞の意味的・統語的特徴

2.1 意味的特徴と「目的語」の定義

さて今度は他動詞の意味的特徴について触れていきます。
他動詞は自動詞とはことなり、「動作を完結させるために対象・相手が必要な動詞」です。よく見聞きする「目的語(Object; O)」というのは、この「他動詞の対象・相手」を指す名詞(句・節)のことを言います。

たとえば、他動詞の例を挙げるときに私が生徒に紹介するのは、以下のような行為です。実際に目の前でデモンストレーションをして直感的に理解してもらいます。

(例5)チョークを握る
(例6)黒板をたたく・ノックする
(例7)ドアを開ける・閉める

「チョークを握る」であれば、そのチョークを持っていないと、「握る」という行為は完結できません。ただ空をつかみ、握りこぶしを作るという別の行為になってしまいます。
「黒板をたたく・ノックする」も同様で、黒板がない場所を叩いても、当然拳が空を切るだけですし、叩いたことにはなりません。ドアの開閉も同じです。

このように、目の前で再現できる行為を例にして分かるように、動詞そのものだけでは行為が完結しない動詞こそ他動詞である、ということです。

2.2 統語的特徴

上の2.1から、他動詞の直後に目的語(他動詞の相手・対象)が続くと分かったので、統語的には以下のような基本形をなします。

(3)他動詞+目的語(名詞・名詞句・名詞節)

2.3 自動詞・他動詞の見分け方

さて、そうなってくると、当然動詞を見つけて、それが自動詞なのか他動詞なのかを認識・判別しないと正しい運用ができないことになります。

上記では母語を例にしたので理解しやすいと思いますが、実際は英語というアルファベットで書かれた文字列を見て、それが動詞かどうかを特定し、さらに自動詞・他動詞なのかを見分ける必要があります。

2.3.1 インプット(読む・聞く)から判別する場合

この場合は比較的容易で、要するに上記の統語的特徴で挙げた基本構造をもとにして見分ければいいだけになります。動詞の直後に前置詞や副詞が続いていれば自動詞ですし、名詞が続いていれば他動詞、ということになります。

ただし、is/am/areのようなbe動詞や、becomeなどの動詞は、名詞が後続しうるのですが、その名詞は主語とイコール関係となる「補語」となります。よって、be動詞やbecomeは、たとえ名詞が後続していても他動詞ではありません。

2.3.2 アウトプット(話す・書く)の際の判別

難易度としてはこちらのほうが断然高くなります。自分の中で、しっかりと自動詞・他動詞を区別できていないと、それをただしくアウトプットすることはできないからです。

ここで問題となるのが、アウトプットするとき、思い浮かべた行為を、どうやって自動詞なのか他動詞なのか区別するか、という点です。

一教員として、また一学習者として言うと、残念ながら動詞によって決まっているので、暗記するしかありません。動詞の中には自動詞・他動詞の両方の使い方をするものも珍しくないですし、どちらかでしか使わないものも当然多くあります。そのため、動詞ひとつひとつに対して、それが自動詞なのか他動詞なのかを丸暗記する以外に方法がないと思います(少なくとも私はなにかルールがあってそれに基づいて分けている、というわけではありません)。

ただ救いなのは、アウトプットで使用する動詞というのはほぼ基本動詞であり、その数はせいぜい数十だと思います。大量の名詞を暗記するよりは、はるかに負担は少なく済みますし、動詞の自動詞・他動詞を暗記することは、文を(脳内で)作り出すためのファーストステップです。この段階をクリアできれば、すごく楽に英語で表現できるようになるはずです。

3.最後に

ここまで読んでいただいてありがとうございました。すごく長くなってしまいましたが、概念としての自動詞・他動詞の性質をご理解いただけたのではないでしょうか。
次回は「定形動詞(限定動詞)」について触れたいと思います。
Sakuraでした!

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