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見ないふりのままではいられない(ONE LIFEー奇跡が繋いだ6000の命ー 感想)

去年もそうだった記憶があるのですが、大体夏頃にホロコースト関連の映画が来てキノシネに行き、キノシネ会員を更新する、というパターンで生きている気がします。ありがとうキノシネ。そして私のホームキノシネ、キノシネマみなとみらいの顔ともいえるパディントンくんにかかわる(※)映画です。

※パディントンは、キンダートランスポートで疎開してきた子供たちの姿をモデルにしたものだそうな

ということで、6月21日(金)公開予定、「ONE LIFEー奇跡が繋いだ6000の命ー」の試写会に招待いただき、ギロッポンのキノシネマ本拠地試写室で見て参りました。

去年めちゃくちゃ映画見ていてるはずなのに、何一つ感想を書いていませんが、せっかく招待いただいたのに何も書かんわけにもいくめえ…と感想です。
なお例によってネタバレはあまり考慮していない。

<あらすじ>
1938年第二次世界大戦直前。ナチスから逃れてきたユダヤ人難民がプラハで悲惨な生活を強いられているのを見たニコラス・ウィストンは、子供たちをイギリスに避難させようと、里親探しと資金集めに奔走する。ニコラスはチェコから送られた子供たちを次々受け入れるが、とうとう第二次世界大戦が開戦。50年後、老後の穏やかな生活を送るニコラスだが、助けられなかった子供たちのことを心に隠して過ごしていた。どうしても捨てられない当時のスクラップブックと共に。

見る前は「シンドラーのリストの」二番三番煎じかなとか大変舐めたことを考えておりましたが、切り口が全然違いましたすみませんでした。

なお、私の右隣の方は早々に決壊され、正直、いや、早ない!?と思い、左隣の方も話がドーンとなるところで決壊されたので、お、これは今回意外と自分泣かないでいけるかもしれないと思いましたが、嘘でした。すみません、舐めてました。

基本的には、現在のニコラスの視点で進み、回想として50年前のシーンが挟まるという感じでしたがその切り替えがとてもスムーズで嫌味がなかったので、非常に入り込みやすかったです。

とにかく名優揃い!
アンソニー・ホプキンスは言うまでもないんですが、普通にその辺のユーモラスな優しいおじいちゃんみたいでした。ニコラス御本人にもかなり寄せてる気がします。若い頃のニッキーたるジョニー・フリンも違和感なし。

そしてヘレナ・ボナム=カーター姐さんの、凄まじい迫力!!

これは本当に痺れる。ニッキーのお母さんなのですが、息子のことが心配なあまり、息子の活動を反対する…その後和解…とかいう私が考えそうな展開は一切なく、最初から最後までぶっ飛ばしてました。格好良すぎる。まさにこの子にしてこの親、この親にしてこの子。

この映画、出てくる人がみな徹頭徹尾善人で、足を引っ張る人が誰もおらず、本当にストレスフリー。

序盤も一切の御託も前置きもなく「いや子供たちを救わなきゃ!!」のニッキーの思いだけでどんどん進んでいく。

これをニッキーは「見たものを見ないふりはできない」、と言うんですよね。

先日の「関心領域」で、人は見ないふりし続けられる醜悪さと弱さがあると散々思い知らされた上での、アンサーでした。

我々「関心領域」を見て思ったと思うんですよ、今この場で起きていることに無関心でいてはいけない、と。でもそこで終わってしまっていないか。無関心であり続けられるんだ、という絶望で終わってしまった気がしています(勿論、リンゴを配る少女がいるとはいえ)。

まるでそれの対のようなニッキーの行動力は、救いでした。

ニッキーは「自分は普通の人間」「特別なことは何もしていない」と繰り返します。

我々は昨今、「普通」が陥る悪い部分ばかり見てきた気がしますが、善を行えるのもまた「普通」の人間である、ということを、改めて静かに示唆してくれるようなお話でした。

それにしても電車に乗れなかった子供たち、そもそも本当は子供たちだけじゃなく大人だって死んで良い訳ではありません。
誰にだって、己の命を脅かされない権利と、誰かの命を奪わなくて良い権利があります。
今この瞬間でさえ、映画の中のはずのシーンが現実で起こっていると思うと「見ないふり」を自覚するだけでなく、一歩動かなくてはいけないのだろうな。

始めたら終わらせなさい、という格言がありましたが、戦争は終わらない以上始めてはいけない、と強く思います。

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