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PTAの負担軽減(卒業証書のホルダーの公費負担)とPTAの意味(PTAとは学校最大の口コミ集団)

議会でPTA負担軽減を訴えることはできるのか。

PTAについて皆さん、それぞれご意見あると思います。私が話すPTAとは、昨年の会長レベルの職(代表)での1年間と、5年前の運営委員という職(1年間)の間に見たり聞いたり経験したものです。

平日何度も学校に行く手間。PTA活動のグループLINEで喧嘩。委員決めでクラス全体でお通夜。委員無理と半ギレ保護者に汗。渡される引き継ぎ資料の多さ。PTAの仕事で家庭に影響。鬱になり体調不良。連絡が多くスマホから離れられない、などなど。私も何度も、無償で何でこんなに大変なんだ、二度とやらない、と思いました。これらのようなPTAの負担を減らすために、ある代のPTA役員が頑張り、翌年のPTA活動を縮小する学校もあります。しかし一方で存続し続ける学校もあります。なぜでしょうか。

学校の状況とPTA

私は、保護者の方がPTAの意味合いをどう感じるかには、その学校の状況が大きく影響すると考えています。つまり、自分の子どもの通う学校を手放しにできる状態にあると思えるかどうか、です。いじめ、不登校、いろいろな先生たち、さまざまな事故。全く問題がなく、朝送り出したらもう安心!と言える学校は、昨今、ほぼないように思います。ですので、PTA廃止を求める声は、年長者のお母さんたちからは少なく、むしろ、お父さんたちや低学年の保護者の方から、ということが多かったように思います。年長のお母さんたちは、PTA廃止の声を聞きながら、じっと黙って下を向く…。なぜか。

PTAは学校最大の口コミ集団

私の印象では、PTAとは学校最大の口コミ集団です。学校は、トラブルを、最低限の当事者に連絡し、大きくてもせいぜいクラス全員(学年全体)に共有される程度の範囲にとどめます(大きな事故を除いて)。しかし学校の様子は知りたい。そして人の口に戸は立てられない。年長のお母さんたちは、少しづつ情報をお互いに引っ張り出し、共有し、喧嘩やいじめ、不登校、家庭の事情、変な先生がいる、といった情報をこっそりやりとりしていました。そのような情報は、メールやLINEで情報共有する性質のものでもなく、ここだけの話ねと制限しながら共有される性質のものです。それは立ちばなしや行事の手伝い、(無意味と悪名高い?)ベルマーク作業の場などででした。知り合いの保護者がいなくてもPTAとして参加すれば(端っこに黙って座っていれば)、そのような年長者からの情報を耳にすることができたのです。

ところがコロナの感染拡大により、そのような機能がほぼない数年間が訪れました。PTAは何のためにあるのか?と疑問に感じる人が増えました。そして正面切って何のためにあるのか?と聞かれても、「だって、こっそり先生の悪口を共有できるんだもん」…とは言えず。胸を張ってPTAと学校の「相互監視機能」とおっしゃる保護者の方もいらっしゃいます。でもその理解の域に達するには、ある程度経験を積まねばならないのでした。

PTA規模縮小にそぐわない部分

ただ、仕事の忙しいお母さんたちが、PTAの規模を縮小したいと考えることもあります。そのような時に、以上のようなPTAの有意義さもなく、無駄な負担となっている作業があります。私の住む市では小中学校の卒業証書のホルダーは、毎年PTAからの寄贈でした。集金の作業、購入の作業。以下は、毎年決まって予算を組んでいたPTAの寄贈品の負担減を実現すべく、私が議会に向けて行った質問と行政からの答弁です。(*正確なところは、議会録や議会映像配信などをご覧ください。)

議会での質問

(1)市内公立学校のPTAの現状について 
ア 市内公立学校のPTA団体の位置付け 
イ PTA費で購入されてきた物品の負担軽減について

2023年6月現在、市内公立小中学校では保護者と教職員で構成されるPTA団体が活動を行なっています。ここ数年コロナの感染拡大により活動を制限していましたが、活動を再開するところも多く、各学校のPTAの活動のあり方について保護者間で組織に対する疑問が噴出しています。

その背景には、まず第一にコロナ感染症の感染拡大以前からの働く女性の増加があります。PTAの会員として活動を支えているのは、その9割近くが母親です。1980年代に7割近く存在した専業主婦の時代は過去のものとなり、現在の専業主婦率は全国3割程度、東久留米市では令和4年のアンケート調査によれば15パーセント程度であり、母親たちは、フルタイムやパートタイム、在宅でのテレワーク、仕事をしていない場合は、乳幼児の育児や介護をしています。そこに加えてコロナの感染拡大があり、雇用の不安定化や経済的困窮、物価高騰等により、平日の参加となるPTA活動は仕事への足枷となりやすく、保護者である多くの母親の方々からは、PTAの活動が負担であるというご意見を頂いています。

さて、日本全国各地の学校においては、大きな流れとして、これまで学校保護者のほぼ全員が半強制的に加入していたPTAの入会方法を改め、任意団体として、加入の意思確認を行うなどの改革を進めています。それは市内公立学校も例外ではなく、市内においてもPTAは、従来のような保護者全員の団体ではなくなり、規模を縮小する傾向にあります。極端な場合には0人の可能性もあります。このような中で、従来通りにあらかじめ学校で必要であるとわかっているものをPTAが購入し続けることは、一部の保護者に費用負担感と不平等感を与えかねないと考えられます。

そういえばPTAってなぜ英語?

歴史を紐解けばPTAとはなぜ父兄会といった日本語ではなく、英語なのでしょうか?PTAのPとはParents、TはTeachers、AはAssociationのことで、これらの頭文字をとった略称です。PTAとは第二次世界対戦のあと、民主化教育のためにGHQと当時の文部省の指導のもとつくられた団体です。そもそもの起源は戦前のアメリカのPTA運動にあります。この戦前のアメリカでの運動に影響を受け、同時期に当時の東京市に学校後援会が結成されています。この後援会は実体的には学校に対する物的援助すなわち公費の補填を主な役割としていました。しかしその後、GHQの指導のもとPTAが日本に導入され、民主化教育を進めるための役割を付与されました。PTAに関する書籍*によるところでは、学校とその子どもたちの親同士の集まりは戦前からあり、その多くは父兄会と呼ばれ、学校との関係を構築するのは男性でした。しかし終戦後、憲法もできて、婦人参政権も確立して、男性の後ろに隠れていた婦人たちも地域やコミュニティの運営の手法、民主主義のやり方を身につけなければならないと言う考えが、占領下の旧文部省とGHQであるアメリカの考えでした。そのためPTA組織は民主主義の基本形態を学べるようなフォーマットになっており、委員の役割、総会の意味、議決をすることの意味、会計処理の常識などを含む、広い意味で言えば、社会教育システムと言える建て付けになっていたのです。そしてPTAは戦後程なくして社会教育法に基づき社会教育関係団体としての取り扱いを受けることになります。

*岡田憲治著『政治学者、PTA会長になる』毎日新聞出版 p121参照

社会教育法のもとに

東久留米市行政におけるPTAの所管が生涯学習課であるのは、社会教育法のもと、PTAが社会教育関係団体として位置付けられたことによります。ちなみに社会教育とは、学校教育法に基づいたもので、主に成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーションの活動を含む)ものです。そのような経緯から、現在のPTAとは、二つの側面、すなわち戦後の日本の困窮した状況の中、学校活動の諸経費の援助や公費負担を進めてきた歴史と、その一方で、成人に対して行われる教育活動という、二つの側面を合わせ持つ団体であるといえます。

しかしこのようなPTAも、戦後およそ80年経つ2023年の現在、会員が減少し、PTA自体も消滅しかねない状況により、人手と予算の問題を抱えています。本日は、予算の問題に焦点を当てますが、人手の問題について一つ述べておきたいのは、人手の問題が学校や地域により異なること、また保護者がどの程度PTAを必要と感じるかどうかについても、子ども達の通う学校の状況により変わりうるということです。そこで本日の私の課題は、このような学校の状況や保護者の状況に応じて、保護者の方々が活動の規模を柔軟に変えられるように、PTAが毎年恒例として購入する物品負担を取り除くことができないかアプローチします。

市はPTA団体をどう捉えているか

まず市としてはPTAをどのような団体として認識されているか、そしてそれに関する通達あるいは文書を出したことがあるかをお聞きします。そしてそれを踏まえて、PTA団体は補助金を申請することが可能かを質問をします。そしてその回答を踏まえ、PTA費で購入されてきた物品の負担軽減の可能性を質問します。ここでは特に、市内公立学校において、卒業生が卒業式で手渡される卒業証書のホルダーを取り上げます。現在市内小中学校では、卒業生徒には証書のみを渡し、ホルダーはこれとは別にPTAが寄贈する形をとっています。この寄贈が、PTA組織が新しく形態を変える際に、保護者間で論争となる点です。この寄贈を負担軽減できないか質問します。

(行政)
質問にお答えします。PTAは児童・生徒の健やかな成長を目的とし、各学校の保護 者と教職員により組織され、個々の在り方や運営について自主的に判断していく社会教育関係団体であり、学校運営に多大なるご支援ご協力をいただいております。次に、各小中学校に発出した通知についてです。社会教育関係団体は、公の支配に属さない団体であり、地方 公共団体はその事業に干渉を加えてはならないものとされています。本年2月には、PTA の加入などについて国会で質問がされるなど、全国的に関心が高まっている状況があり、当市においては、東久留米市小中学校PTA連合会が平成29年度をもって活動を休止しておりますので、市教育委員会として社会教育団体を所管する生涯学習課より、教育委員会に報告した上で、小・中学校長に対し、改めてPTA運営に関する基本的な事項をお示ししたと ころです。

(岩崎)
市はPTAを社会教育関係団体であると認識していることがわかりました。それでは市の社会教育関係団体にはPTAのほかにどのようなものがあるか教えてください。また、生涯学習課において、社会教育関係団体の活動に対する補助制度を有しているか伺います。

(行政)
社会教育関係団体に関するご質問にお答えします。生涯学習課では、生涯学習、スポーツ及び文化財に関連する社会教育関係団体の協力を得ながら、各種事業を進めておりますが、社会教育関係団体は、公の支配に属さない団体とされており、全体の把握はしておりません。次に補助金についてお答えいたします。生涯学習課では、生涯学習の振興を目的とし、生涯学習活動費補助金交付要綱を設置し、団体の活動を支援しています。なお、当該補助制度の創設にあたっては、他の補助制度同様に東久留米市共通業務運用指針を踏まえ、目的や妥当性などを精査した上で定めております。

(岩崎)
ただいまのご答弁により、市内PTAは、市内にある社会教育関係団体の一つであること、また社会教育関係団体の中には生涯学習活動費補助金を受けている団体があることがわかりました。現在補助金の交付を受けている団体と同様に、PTAも生涯学習活動費補助金の申請を行うことは可能でしょうか。

(行政)
PTAへの補助金に関するご質問にお答えします。生涯学習活動費補助金は、生涯学習の振興を目的とした補助制度であり、要綱において、スポーツ振興などを目的に活動する団体、市民文化の向上などを目的に活動する団体、市の歴史的文化遺産の調査、研究、普及などを目的に活動する団体の3団体を対象として定めております。よって、これら3団体以外は補助の対象外となります。

(岩崎)
只今のご説明により、現在PTAは補助金交付の対象となっていないことがわかりました。ただいまの一連のやり取りにより、法律の建て付けとしては、PTA団体とは、むしろ補助金の申請をする側の団体であり、毎年恒常的に決まった予算額を組むのに適した団体ではないことがおわかりいただけたかと思います。それでは次に、現状PTAが毎年決まって生徒に寄贈する物品、ここでは具体的に卒業式の卒業証書のホルダーに関わる費用について論点を移していきます。先ほどのご答弁から、市から卒業生に贈られる記念品には英和辞典や印鑑とそのケースなどがあり、予算が児童一人当たり千二百円であることがわかりました。そしてそれら記念品の選定は、各学校から購入申請があり、各学校でどのように決めているかまではわからないとのことでした。
この小学校卒業記念の英和辞典ですが、最近は、英語の学習はすでに小学校から始まり、授業が行われています。辞書を卒業時ではなく、もっと早い段階、例えば4、5年生などに無償で児童生徒に配布できないでしょうか。ご検討ください。話をPTAに戻します。(中略)卒業証書のホルダーはPTA保護者の負担になっていることがわかりました。卒業証書は、証書だけを持ち運ぶには不便な形状であり、証書をホルダーに入れて運ぶことが想定されます。このようなあらかじめ必要だと想定され毎年決まって購入している物品については、公費で購入することをご検討いただけないか、見解をお聞かせください。(中略)それではPTAで決まって購入している卒業証書のホルダーを公費で一括購入できるよう、ご検討くださいますよう要望します。ただし、市内の児童生徒で英語の辞書を持っていないという児童生徒が出てこないように調整した上で、卒業時の記念品をご検討いただきますようよろしくお願いいたします。

最後に

ここまでお読みくださりありがとうございます。この議会での質問の後、行政が変えてくださった点があります。

これまで東久留米市の小中学校PTAが用意してきた卒業証書ホルダー。
今後は、希望すれば、学校がホルダーを一括購入してくださいます。
但し、市が卒業記念品購入に用意している児童一人あたり1200円の予算の中でです。 学校での一括購入を希望する際は、ホルダー代が一つ数百円かかりますので、記念品は、これまでと違うものを選ぶことになります。一方メリットは、PTA会費および予算計上などの役員の負担が減ることです。所属学校のPTA活動に困難がある場合は、ホルダー購入を、学校と調整してみてください。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。




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