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「祖母姫、ロンドンへ行く!」椹野道流著(読書備忘録)

書名:祖母姫、ロンドンへ行く!
著者:椹野道流
発行年:2023年
出版社:小学館

はじめはネットでの連載だったかと思う。
読みだすと止まらなくて、祖母姫のチャーミングな我儘さ、孫娘の献身、ロンドンの素敵が詰まった文章に一気に惹きつけられた。

書籍になったと聞いて発売に合わせて書店に駆け込んだ。
木村セツさんのちぎり絵スコーン、表紙をめくると見える赤いタータンチェックなど、「イギリスっぽさ」がとてもかわいい。

ネット連載時よりも加筆修正されていて新たな気持ちで読んで、祖母姫が恋しくなって今、2周目を読み終えたところ。

美しいもの、豪華なもの、優雅なもの、伝統的なものが好き、自分に自信を持ち独自の美意識、知識、向上心を持つ高齢の女性。
クィーンではなく、祖母姫と名付けられたことがチャーミングさをより際立たせている。
孫兼秘書のバッドガールさんは、言い出したら聞かない祖母姫の要望に翻弄され大変そうだったけれども、それさえもほほえましい。
時折漏れる心の声もリアルで思わず吹き出してしまった。

そして、その「バッドガール」は、祖母姫にお仕えするという任務を遂行するため、航空会社のCAやホテルのバトラーはじめ、その道のプロに教えを乞い最善を尽くそうと奔走する。その吸収力と言うか、向上心はやはり祖母姫から受け継がれたもののように思えた。

バトラーの矜持、祖母姫の何気ない一言、バッドガールの気づきなど、私にも響くエッセンスが詰まっていた。

楽をせず、努力をしなさい。いつも、そのときの最高の自分で、他人様のお相手をしなさいよ。オシャレもお化粧も、そのために必要だと思ったらしなさい。胸を張って堂々と、でも相手のことも尊敬してお相手をする。それが謙虚です。

P.248 23.秘書孫、旅のおわりに

祖母姫の人生最後の長旅だと思うと、楽しい時間も少し切なかった。

この本が英訳されて、祖母姫が滞在されたホテルに、ティムさんの元に届いたらどんなに素敵だろう。
バトラーという専門職のすごさ、ドアマンを始め、様々なポジションでプロ意識を持って仕事をしている人がいるということに胸が熱くなった。

ロンドン、行きたいなぁ。

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