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ほとんど双子

 娘が二人いて、1年3か月違いの年子だ。大人になってから分かったことだが二人とも違うタイプの発達障害で、いろんな感覚過敏や識字系の障害を抱えている。幸い知的には問題なく、ちょっと目立つ才能にも恵まれていて、発達障害としてはラッキーな部類だろう。おっとりして努力家の長女と多動でこだわりの強い次女。古い言い方のお神酒徳利のようにいつでも一緒に行動して、お互いに頼りあっているので、親としては心配になって、一人一人別の道を歩めるようにした方が良いのではないかと話したりしたこともあったくらいだ。いくら仲が良くても姉妹でも人間同士。ティーンのころは代わりばんこにやってきて愚痴とも相談ともつかない話をしていくので、こちらもパンクしそうになってしまったのだ。しかも、長女は全日制、定時制と高校を移っても通学がうまく行かず、家にいる時間が長い。次女は昼間定時制のチャレンジスクールが楽しく、友人も増えて順調な日々となっていた。次女が順調であれば長女が落ち込む。自分の日常を取り戻すのにエネルギーを使いたい次女と二次障害で不安定になる長女のペースが合わない。辛かったこの時期のことは二人ともよく覚えていないという。

 だが、親なんて耳を傾けてやきもきする以外の役割などないのかもしれない。二人が19歳、18歳になったころ、10代の混沌が突然あっけなく終わった。次女は4年制大学に進学し、定時制を退学した長女は通信制高校を自分で探してきて課題とスクーリングをこなして、高卒資格を手に入れ、大学は受験してみたが、進学より切り絵でアート活動をすることにするという。

 私が脳卒中で倒れて、一戸建てを手放して暮らしやすいマンションに移ることになったら、一人一部屋の部屋数なのに、成人した二人は一緒の部屋が良いという。そしてある日けんかして、泣きながら長い長い話し合いをして、二人は別れられないので、これからも一緒にやっていくことにしたよと報告しに来た。もう親には全くわからない境地だ。

現在は30代になろうとしている、いわゆるアラサーの二人は相変わらずお神酒徳利。コロナ自粛までは、二人で食事に行き、二人で旅行に行き、二人でイベント出展をして、だが、一人一人違う自分の人生を生きている。

間違いなくユニークだが、ハンデもある二人が支えあって生きて行ってくれそうなのは嬉しいことでもある。いつかそれぞれパートナーを見つける日も来るのだろうか。「お母さん、悪いけど、それはないと思うよ」と次女が言う。まあ、ここまでくる間の困難を思えば、多くは望むまい。


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