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NOT WONK "Your Name"の日に感じた事

2019年12月7日
私は仕事のため千歳発、羽田行きの飛行機に乗り、雲の上でひとり"Down the Valley"というアルバムを聴いていた。上空から見えるはずもない苫小牧のライブハウスELLCUBEをぼんやりとした想像の中で眺め、"Your Name"という未知の試みに想いを馳せていた。いわゆるライブやイベント、音楽フェスと表現されるそれらとは全く異なる別の何かを思い浮かべながら。

"Your Name"を主催したのはNOT WONK(ノットウォンク)。現在北海道苫小牧市を拠点に活動しており、2019年に"Down the Valley"というアルバムを発表した話題のスリーピースバンドである。私が彼らを知ったのは今年の夏、信頼できる音楽仲間から「NOT WONKを観た方がいい」とすすめられた事がきっかけだった。それから約2ヶ月後、DOSANCO JAMという音楽フェスで初めて彼らのステージを目撃する事になる。フェスは2019年9月6日から9月8日までの3日間に渡り札幌、狸小路二丁目にあるSound lab moleで行われた。

最終日のその日、私は会場にいた。ステージに現れた彼らはTHE・今どきの若者といった感じで、冷静な表情の中にどこか気怠い雰囲気を含んでいるように見えた。"BORED"と書かれた板がアンプの前に置かれる様子を見ながら「彼らは何に対して退屈さを感じているのだろう?それとも退屈な世の中に対して何かを訴えようとしているのだろうか?」という疑問が脳裏に浮かぶと同時に「何かが始まる」という期待と少しの緊張が全身を駆け巡る。NOT WONKの音楽と対峙する覚悟めいたものが自分の中に自然と形成され、目は見開き、耳は研ぎ澄まされ、心は解放されていった。五感と魂が敏感になっていく。あんな感覚を味わったのは初めてだ。

「NOT WONK。」
始まった瞬間に押し寄せる波。正直セットリストはあまり覚えていない。というか、事前にそこまで聴き込んでいないまま彼らの音の中に飛び込んだ私は、瞬く間にその波に呑み込まれていった。ギター、ベース、ドラム、三種類の楽器が生み出す破壊的で美しい轟音に観客のボルテージは最高潮に達した。ダイバー達が頭上を泳いでいく姿を見ていると会場全体がNOT WONKという一つの生命体であるかのような感覚にすら襲われた。こんなにも人々の魂を揺さぶり、解放してくれる彼らの本気の演奏を前に、今どきの若者っぽいと最初に思ってしまった浅い自分を恥じた。

あの日「音楽という名の怪物」に出会った、事件とも言える出来事を思い出しながら、窓の外に浮かぶ黄金色の雲と真っ白な半月を見ているうちに飛行機は着陸態勢に入る。揺れる機内で"This Ordinary "を聴きながら心地よい思い出と"Your Name"への幻想に浸っていた私は「着陸してほしくない」と強く思った。飛行機は予定通り滑走路に降り立った。すぐにスマホの機内モードを解除し、Twitterを開くと"Your Name"に関するタイムラインが飛び込んできた。音楽という共通言語を通して人々が集まり、歴史を変えていく瞬間になぜ自分は立ち会えなかったのかという悔しさよりも北海道の地で"Your Name"という現象が巻き起こっているという事実を目の当たりにして、期待と希望が先行した。行けなかった人の一日にも大きな影響を与えた"Your Name"とNOT WONKの今後が楽しみで仕方がない。

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