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宮古島。帰郷の雑感。

一年半ぶりの帰郷。

環境が変わっただけで不眠に陥る繊細で貧弱な僕は、18歳まで住んていた実家でも無事眠れなかった。

長年、押入れの底で眠っていた煎餅布団は真綿がコンクリ並みに鍛え上げられており、寝返りのたびに骨盤が床を打ちジンジンと痛んだ。

深夜になると壁の向こうからネズミの足音と鳴き声がした。父親曰く、雨が続くとドブから我が家に避難してくるようだ。数日中には捕らえられ処分されるだろう。

年寄りの朝は早い。

実家には僕の部屋はすでに無いので居間で寝ていたのだが、朝5時には父親が起きてきてラジオを聞きながら朝食を作る。独り言が激しい。
6時になると母親と同居の弟も起きてきてバタバタしだす。
普段ベッドで寝ているので人の足音がこんなに響くことを忘れていた。

勿論彼らはいつものルーティーンをこなしているだけで悪いことなど一つもしていない。たまに帰ってくるだけの僕に何か物申す権利など無いのだ。

ただ、厳しい一週間だった。

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沖縄旅行から戻ってきた人が言いがちなこと。

「楽しかったけど、ごはんが美味しくなかった」

もはや何も言うまい。
内地のごはんが美味しいのは言うまでもないし、夏休みに内地から遊びに来た従弟達が痩せ細って帰っていくのを見ていたからだ。

ただ、沖縄人として思うことは、沖縄のごはんは愛おしい。

脂がのっていないカラフルな魚も、パンチもコシもない沖縄そばも、とりあえずダシの素振って炒めるチャンプルーも。

飛び切り美味いわけではないが、こんなに愛すべき料理は他にない。

まぁ、もともと琉球は日本とは別の国なので料理については別のアジアに行くくらいの期待値で遊びに来てほしい

「韓国台湾タイの方が美味しい」と言うのは無しだ。

因みに最近は宮古島にも美味しいお店やカフェが沢山ある。ホテルの朝食は普通に美味しいし、吉野家やマックもあるので沖縄料理が苦手な方でも安心して来島して頂きたい。

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今回の帰郷では山羊を食べてきた。

僕が小さい頃は山羊汁くらいしか調理方法が無く臭いも酷かった。
最近は餌にもこだわり料理のバリエーションも増えたとのことだ。

友人と山羊料理専門店に行き山羊肉炒めと山羊刺しを食べてみたのだが、これがとても美味しかった。山羊肉炒めはシンプルにヨモギと炒められ、山羊刺しもヨモギが添えられていた。この二つは相性が良い。
肉は山羊らしく固いが、臭みがほとんど無かった。
肉の脂をヨモギの香りがサッパリとさせる。

昔ながらの山羊好きに言わせると物足りないかもしれないが、貧弱な僕にはこのくらいがちょうど良い。値段は少々高いが食べる価値ありだと思う。

ラム肉より好きかもしれない。

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故郷で一週間過ごすと、ある思いが蘇ってくる。

そうだ。10代の僕はずっとこの島を出たかったんだ。
どこかに行けば知人に会いそうだし、散歩しても畑と海しかない。
冬は雨風が続き、揺れる木々が気分を憂鬱にさせた。

幼い頃から続く人間関係や親戚付き合いも億劫だ。

内地に出た人間にありがちな地元批判をここに書くつもりは無い。
ただ自意識過剰な僕は田舎社会に閉塞感を感じてしまう。

昔からの知り合いが居ない土地で、大人になってから出会った奥さんとの今の生活を大切にしようと思う。

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今回の帰郷では楽しいことも悲しいこともあった。

楽しいことだけだと良いんだけど、この歳になると色々な問題もある。
皆そうだと思う。

ただ思うことは、家族の顔を見れて良かった。
母親のごはんが食べれて良かった。

次の帰郷では子供の顔を親に見せたい。

以上









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