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シラミと私とスリランカ人の戦い (後編)

前編あらすじ

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信じたくなかった。
絶対に信じたくなかった。
私がシラミに感染しているなんて絶対に信じたくなかった。

だから、私はルームメイトのシハーナに尋ねた。

「なんでウクヌ(しらみ)がいるって分かるの?」と。

すると、シハーナはこう答えた。

だって卵がいっぱいあるんだもん。ちょっと、髪の毛一本抜くね。ほら、見てごらん。卵がついているでしょ。

たしかに、白っぽくて金色っぽい、小さなものが私の髪の毛についていた。でも、フケと言われたらフケにも見えた。

だから、私は意地になってこう答えた

これはフケじゃないの?フケとウクヌの違いは何?でも、これはウクヌの成虫じゃないよ!成虫はどこ?!

シハーナには英語力の限界があった。

私に、ウクヌがいると伝えても、なかなか伝わっていない状況に苛立ちを感じ、彼女は私にこう言った。

YOU HAVE ウクヌ!!!

このシハーナの苛立ちに、私は萎縮してしまった・・・。

たった100円のウクヌ薬 

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私は、その瞬間。諦めた。私の髪にはウクヌがいるという事実を受け入れることにしたのだ。

そして、藁にもすがる思いで、彼女に聞いた。

ウクヌを駆除する薬ってあるかな?と。

そしたら、彼女は笑いながらこう言った。

大丈夫!私の彼もウクヌ持っているし、いい薬知っているよ。今度持ってくるね。

その時、私は唖然とした。

そうか〜、スリランカ人にとって、ウクヌなんて、笑ってウクヌ〜♪って思える程度のものなんだなと。

そして、翌日、シハーナはどこからともなく小さなプラスチックの容器に入った液体を持ってきた。値段は日本円で100円と書いてあった。

値段の高い物が良い薬であるとは言いたくないのだが、やはり、100円という値段には不信感が募る。

そして、彼女は駆除薬を私の髪の毛に塗ることを手伝ってあげると言ってくれた。

手伝おうとしてくれている彼女には、心から感謝の気持ちでいっぱいだったのだが、私はその得体の知れない薬を、使用することにかなりの抵抗感があった。

でも、もう私にすがれる物は「シハーナ」「よく分からない100円の駆除剤」しかないのだ。

そんなことを考えながら、ふと、私の頭の中で、レーチェルカーソンの「沈黙の春」が一瞬よぎった。DDTと・・・。

でも、私には「それ」しかなかったのだ。だから、静かに「・・・お願い」と言った。

すると、彼女は笑顔で

んじゃ、ベランダに出て!私はビニール手袋をするね!

と言った

え・・・て・・・てぶくろ?

手袋をはめているシハーナを横目に、手袋をつけないといけないほど危険な薬なのか?と薬についての不安感がまたもや高まってきた。

そして、私はシンハラ語の辞書を取り出し、最後のあがきとして

彼女にこう言った

ママ ウクヌ ビッタラ ティエナワ ダ?

(私にはシラミの卵があるの?)

と。

そして、彼女は液体を手袋にたらしながら、

「ティエナワ、ティエナワ(ある、ある)」と笑った。

そして、私は、もう抵抗はやめようと思った。

あ〜、これがDDTと同じなら、私はどうなってしまうのか・・・。 
あ〜、この薬は何なんだ・・・
あ〜、私は皮膚が弱い敏感肌なのに・・・
あ〜、なんで彼女は手袋をつけているんだ・・・
あ〜、なんでウクヌ、私を選んだんだ・・・

と思いながら、そのよく分からない100円のウクヌ薬を塗ってもらった。無色透明、無臭の液体だった。

ウクヌの結末は?

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ウクヌ薬をつけて1時間放置したあと、シハーナに、髪の毛を洗うようにと言われたので、頭を洗いに言った。

その時、私はシャンプーの泡が流れていく様子をみながら

この中にウクヌの成虫いるのかな〜。いて欲しいな。

なんて思って、泡を見つめていたのを覚えている。

さて、その日から、私は徹底的に熱湯消毒に力を入れた。ベッドシーツや枕カバーは何度も洗った。タオルも同様である。

そして、毎日洗髪後は、ストレートパーマをかけたのでは?と思われるくらいに、ドライヤーとくしで髪の毛をとかした。

その際には必ず、白い紙を床に置いて、ウクヌの卵がどれだけ落ちているかを確認していった。

そうするうちに、私はウクヌの卵を見つけるのが得意になっていった。

こんな生活をして約1ヶ月。

毎日のように、シャワーの後、髪の毛をドライヤーで乾かしながら、白い紙の上にウクヌの卵を落としていると・・・

ッボド・・。

茶色い物体が落ちてきた。

足が6本生えた、茶色い1.5~2mm程度の物体が。

その瞬間、私は勝利した!と思った。

そう、私はウクヌに勝った!
ウクヌの成虫をこの目に焼き付けたのだ!
これは、絶対にウクヌだ!

と思い、シハーナの帰宅を待った。

そして、彼女にこの物体を見せたのだ。

彼女はその物体を見るや否や、笑いながら

見つけられたんだ。珍しいね〜。これがウクヌだよ。

と言った。

THE END

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注意:note執筆の都合上、挿絵はシラミではなくノミです!

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