父親の膵臓癌
父は随分前から体調を崩していた。
アルコール中毒だ。
毎日、朝からひたすらお酒を飲んでいるらしい。
70歳過ぎまで仕事を続けていた父。
仕事が生き甲斐。
家族の事をは一切顧みる事なく、
仕事に全てを費やしていた。
それなりに出世もしたようだ。
それ自体は特に悪い事ではない。
そんな時代だったし。
父親が家に居なくて寂しい、と思った事はない。可愛がられた記憶も無いが、それも別にいい。
反対に、居るとあれやこれや傍若無人に振る舞う事が多かったので、居ない方がいい、と言うスタンスだった。
好きか?嫌いか?と問われれば、嫌いだった。
その父が70歳で仕事を引退し、毎日、家に居るようになった。
父はそこそこの稼ぎがあったものの、お金の運用に関しては全く興味がなく、全て母任せだった。
そして、その母も宗教にハマり、お金を費やしたり、最初から最後まで専業主婦だったり、と無知にも程があると呆れるお金の使い方だった。
結果として、老後のお金がほとんどない事が発覚した!!!
退職金も何に使ったのか全く分からないが、底を着いていた。
持ち家もなく、賃貸生活だった。
お金が無いから、唯一の趣味のゴルフにも行けない。月1の同期との飲み会もそのうち行かなくなった。
年金はそこそこ貰っているのに、お金がない…なぜなのか?私たち兄弟は不思議だった。
そこで、家計の全てを見せる代わりに、お金の援助をする事になった。
見てビックリした!!!
何十年も前に入った高額な保険が何件も放置されていた。
そして、父のアルコール代を計算すると毎月、凄い金額になっていた。
これでは、貯金を切り崩すしか無い…
本当に無知とは恐ろしい。
色々、兄弟で相談をして、保険等も全て解約し、最低限の安いモノに入り直した。それでも生活はギリギリなのに、父のアルコール摂取は止まらない。
飲み過ぎで体調を崩しては、病院に行ってドクターストップを受ける。
その間はなんとかお酒を止められる。
体調が良くなるとまた戻る。
その繰り返し…
そして、最近、ついに膵臓癌が発覚した。それを聞いた時、私が最初に思った事は、ついに死ぬのか!!!だった。
悲しい気持ちなど、何もなく、事実としての、遂に死ぬ!!!だ。
もう85歳。そこそこ生きたし、お酒を飲むしか楽しみがない人生…生きていても虚しいだけではないか、とすら思っていた。
しかし、父は死なない。
膵臓癌と言ってもかなりの初期段階。手術をして取ってしまえば、治る段階、との事。
しぶとい…
本当にしぶとい…
入院や手術の費用などを払うお金は持っていない。
すべて兄弟で負担する事になった。
死んでしまえばいいのに。
何度も今まで思った言葉がまた浮かんでくる。その事にはもう罪悪感はない。
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