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#5 カプースチン作品の変遷①

こんにちは。暑い日が続きますね、溶けそうです。

カプースチンの作品といえば、ジャズの要素が多くて明るく楽しい雰囲気の音楽、というイメージを持つ人が多いと思いますが、それは初期の頃の作品に見られる一側面であるということをご存知でしたでしょうか?

中期以降、特に後期の方になるとその作風はどんどん変化し、ジャズとクラシックが複雑に絡み合ったカプースチンの個性がより明確になっていきます。

カプースチン本人とのやり取りを基に執筆された論文「ニコライ・カプースチンの音楽におけるクラシックとジャズの影響─ ピアノソナタ第 3 番 Op.55 」では、およそ 10年単位で作品の特徴が変化すると述べられています。

特に演奏活動を行っていた作曲初期の1960年代、1970年代においては、当時のカプースチンの演奏活動からの影響が作品に色濃く反映されていて、演奏活動を行っていた時期と演奏活動から退いた時期では作風が大きく異なっています。

今回はカプースチンの作品変遷を、演奏活動を行っていた時期と演奏活動から退いた時期の2回に分けて書いていきたいと思います〜🌱

演奏活動を行っていた時期
(1960-70年)

1960年代

作曲初期の1960年代に書かれた、
《ピアノ協奏曲第1番 Piano Concerto No.1》Op.2(1961)、 《トッカータ Toccata》Op.8(1964)、《アクウェリアム・ブルース Aquqrium Blues》Op.12 (1967)の 3 曲は、カプースチンが所属していたオレグ・ルンドストレーム・ジャズオーケストラのために書かれた作品です。

いずれも編成にバンドが加わっており、特にピアノ協奏曲においてはドラム🥁が用いられていることが特徴的です。
カプースチンはピアノ協奏曲において、「オーケストラとピアノ」という発想ではなく、「ビッグバンドとピアノ」という発想を持ち合わせていたした。
オケの代わりにビックバンドを、という思考がなんともカプースチンらしい‼️

また、後にピアノ独奏に編曲される《ビッグバンドサウンズ Big Band Sounds》Op.10(1966)もこの時期に書かれた作品で、タイトルからも伺えるようにビッグバンドの編成が使われ、スウィングジャズを模した曲調が特徴的です。

1970年代

1970年代に書かれた作品は、当時演奏活動を行っていた国立映画音楽オーケストラでの影響を強く受けています。

国立映画音楽オーケストラは、ハリウッドの音楽に影響を受けた映画音楽のレコーディングを主な活動としており、カプースチンのこの時期の作品は 1940年代のハリウッド映画に触発された、うっとりするようなロマンチックな作品が多いことが特徴的です。😌
1972年に書かれた《ピアノ協奏曲第2番 Piano Concerto No.2》Op.14は、特にハリウッド映画の雰囲気が感じ取れるので、是非聴いてみてください🌟

またこの曲においてもビッグバンドの編成が取られており、日本を代表するカプースチン第一人者の川上昌裕氏は、《ピアノ協奏曲第2番》は「ビッグバンド音楽の良さがピアノを引き立てるというパターンが確立されています。」と述べられています。



今回は作曲初期のカプースチンの背景について簡単〜〜にまとめてみましたが、如何でしたでしょうか?

初期の頃の作品は本当にわかりやすい音楽で、クラシック音楽に抵抗がある人にとっても聴きやすい曲が多いのではないでしょうか。

ここからの作風の変化がまたおもしろいんですよ…個人的には、この変わりっぷりの度合いはスクリャービンと似ているなと思ってます(笑)

作品変遷②もお楽しみに😉

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