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彫りが深く、高い鼻梁がある。 だがルウ・バのそれは羚羊のように太く、へそ曲がりだ。決…
天の大河が瞬いていた。 薄い大気が澄み、烈風が身を斬るように冷たい。 私は袈裟を二重…
空気が薄くなった。 灌木は既に見ない。 昨日までは平原を覆う草原があったが、今や岩陰…
相貌に見覚えがある。 脳裏の記憶と相結ぶものがある、その少女にだ。 カリシュマと呼ば…
その女性が纏う威光は、日輪の如きものだった。 これがタキシラ国を統べる女王かと思い、…
闇夜の地平線には、プシュヤ星宿が浮かんでいた。 イ・ソフタでの逗留は数日に抑えた。 …
適齢期というものがある。 恥ずかしながらの年齢を刻み、後悔の多い半生を振り返って、初めて文章になるような経験値をつんだ。 それでも何度も途中で筆が止まってしまった物語を、今は不思議なほど順調に書き進めている。 この長い物語は、20代初めに着想した。 というか阪九フェリーの雑魚寝で、夢に見た。 何度か書いているけれど、私の夢はちゃんとストーリー仕立てで、伏線もあればオチもある。しかも登場人物の名前もはっきりと憶えている。 餓王という神話めいた長大な物語を書いてい
イ・ソフタは天空の要害都市である。 ヒンディークシ山脈のレーへ峠を越えた圏谷に位置す…
曙の雲が七色にたなびいている。 光彩が時の経過で移ろう時間だ。 男は膝をついて嘆息し…
「小僧、何を企んでいる」 無言の重圧がひしめいている。迂闊であった。遠巻きに囲まれてい…
これは興味深い。 私は待つことにした。 一応、錫杖棍は手元に置くことにした。 この…
中天に半月がかかっていた。 雨が近いのか、朧に霞を纏っている。 そのために星空が疎ら…