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カラーコード#f5c9c4


あおいは色についてよく考える。中学校までは美術部に在籍していた。熱心ではなかったし上手でもなかったが、そういうことに好奇心だけは持っていた。高校で美術部を選択しなかったのは、部活動を選ぶ初日に美術室を探すのに校内を迷ったこと、高校生ともなればきっと絵が圧倒的にうまい連中に混ざってやっていけない自信があったこと、その迷いの結果として廊下をうろうろしているところを同級生に誘われて映研に入ってしまったこと、動きのある映画には強い興味はなかった、静止している絵の方が好きだった。そして芸術分野の選択授業は音楽を希望した。

それ以来積極的には絵を描いたりだとか関わらずに、個人的にたまに気が向いたらスケッチブックを開いたりノートの隅に真剣に落書きをするくらいだった。さすがに着色まではしなかった。

長い長い時間があおいの周囲を通りすぎていった。ある時カメラを手にいれた。試しに花や空を撮ってみた。自分で絵の具を配合するよりも、見ているものを機械側の設定で再現することの方が向いているかもしれないと思った。それからは毎日のように写真を撮った。

好きな色は自分の名前でもある青だと昔から信じているが、時によっては単純に青がきれいだとは思わない日もあって、あおいにはそれが不思議なことだった。緑、ピンク、紫、黒、白、それらのグラデーションが周りにはたくさんあることに改めて目が届くようになった。どの色が心の奥に届くのかは、その時の心理状態にもよるのだと、何かの記事で読んだ。

そのころ、カラーコードという言葉を知った。RGB(光)、CMYK(塗料)、数字と記号で行く通りもの色を指定する。ほとんど表せない色など無いように初心者向けのデザインブックには書かれていた。

それからは夕焼けを見るにも、あれも記号で表せるんだろうかなどと考えるようになったが、あおい自身はカラーコードに全幅の信頼を寄せているわけではない。幾万通りのカラーコードがあろうと、そこから外れる色が必ずあるはずだと思っている。

自分はそのリストにない色を撮ってやる、といつも思っている。




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