見出し画像

さくら


今日、いやもうとっくに日付変わってるからきのうだけど、自宅から近い水郷公園に、ノンの散歩に行った。車で行った。

少し久しぶりだ。今日は1日気分が低いところにあって、天気はとてもいいのに。

夕方4時頃に急に行こうと思い立って、でも気分が低いから家を出たのは5時前になっていた。2月ももう終わりだから日没時刻もずいぶん遅くなったからまだまだ明るい。公園の駐車場はけっこういっぱいで、運良く1台出ていったからそこにぼくの古い軽自動車を滑り込ませた。

最近は意識的に車に乗るのを避けているから、このほぼ通勤専用の軽自動車を運転するのも久しぶりだった。

ノンを後部座席から降ろすと喜んでいつものコースの方へとリードを強く引っ張った。

しばらく歩くと、大木に西日を遮られた周遊路の向こうから、見覚えのある犬とその飼い主さんが歩いてくるのが目に入った。

さくらだ、と、すぐにぼくは気がついた。

飼い主さんはぼくよりもだいぶ歳上の男性で、だからおじさんと呼ぶが、おじさんは気付いてないみたいだった。

散歩中に会う、散歩友達としては比較的長く知っている相手だ。こちらが気付かなくても向こうがぼくとノンを見つけてくれることもある。頻度は多くないけれど、ノンのことも可愛がってくれる。

おじさんの犬もノン同様、県の動物愛護センターから譲渡されたという経緯を、何度目かに会った時に教えてもらった。その犬はおそらく牧羊犬の血が少し入っていそうな少し大きめの、白と黒の毛がふさふさの、ちょっとつんとしたところのある女の子だ。

そのおじさんとさくらがぼくとすれ違うくらいの距離にまで来た時に、こんにちは、と声をかけたのだけど、おじさんは気付いていないのか目をこちらに向けるでもなく、小声でこんにちはと返して、そのまますたすたと通り過ぎてしまった。

あれ?ぼくなにか失礼なことを前回したのかなと、こんな時にはよく思うのだけど、今回はそんな訳でもなさそうだった。

そんなことをぐるぐると少し考えて振り返ると、遠ざかりつつあるさくらがこちらを何度か振り向いていた。さくらは気付いていたんだな。11歳のノンよりも歳上で、片方の目が白い。足取りはそれなりに、軽い。

きっとおじさんは何か考え事をしていて、ニット帽を被ったぼくがわからなかったんだ、と思うことにした。

さくら

その、片方の白い目を今も思い出すと切なくなる。元々甲斐犬系で真っ黒のノンも顔に白いものが増えた。

色々考えると、切なくなる。

さくら

また今度な。必ずやで。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?