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3月第1週に観た映画とかの話

 感想の文量を増やしているので、今月は週ごとにまとめようと思う。続けられるといいね……


『キューブ2』観終わった。
 前作では一辺26部屋の三次元構造だったキューブからパワーアップし、今作では四次元構造になったハイパーキューブから脱出を目指す。
 一応脱出を目指すという話の軸はあるんだけど、それを前作よりも捻った感じの構造や展開にしたかったのだろうが、逆に変にとっ散らかったストーリーになっちゃったな……という印象が拭えなかった。たしかに前作で罠がある部屋を回避して進めのパターンは既にやっているし、それを踏襲しても面白くならんべやということで新路線にしたのはわかるんだけれど、それはそれとして明らかに前のキューブとは違いすぎるため、キューブを題材にした二次創作だなぁという味わいが終始した作品だった。

『キューブ ゼロ』観終わった。
 無印や2よりも更に前のキューブの話。閉じ込められた人間側の目線だけではなく、今度はこれまで謎にされていたキューブ外部の話や管理者サイドの目線をメインに物語が語られる。
 SFチックだった2とは一転し、初代キューブに原点回帰した作品。キューブを攻略する側ではなく監視する側の目線から物語が進行するので、「あれはこうなってたのかよ!」みたいなことが色々とわかるのは面白く、なぜこのキューブに閉じ込められるのか? や、脱出したらどうなるんだ? などの疑問に対するアンサーがきちんと描かれていたのも良く、ちゃんと広げた風呂敷を畳んだなぁと好感が持てましたね。だからこそ余計にあれだけやりたいことをやった2は何だったんだよマジで……となっちゃった。
 ただ一点残念だったというか、タイトルにゼロと銘打たれてるからにはまあ『キューブ』シリーズの前日談なんだろうなという心構えがこちら側に出来ちゃっているせいで、この話の最後に仕掛けられてるわりと重大な出来事をあまり驚かず、「へぇ〜そうだったんだ〜」みたいにすんなり受け止められちゃうので、あれくらいのネタをやるならタイトルで前日譚とわからせないでもうちょい考えてほしかったっすね……と、公開されて15年近く経った今になって思ってる。

『アングスト/不安』観終わった。
 オーストリアで実際に起きた殺人事件とその犯人をモチーフにして制作されてる猟奇映画。起きてしまった殺人をフィクションにしてハッピーエンドにしようとかそういう試みは一切なく、ただただ本当に殺人犯が家に押し入って惨殺して逮捕されるまでが克明に描かれて、全体を通して殺人犯による自分の精神状態を淡々と描写していくモノローグと共にストーリーが進行していくので、ウッッッワとなるシーンでも最高に幸せみたいな独白がされる箇所いたるところにあり、ひたすらに気分が落ち込んでいくだけの作品でしたね。
 出所して即「計画立てたからやるぜ!」とルンルン気分でターゲットを探したり、乗ったタクシーの運転手を靴紐でキルしようとする姿は得体のしれないものに恐怖するのに近いものがあったね。オススメはしないけど……。猟奇殺人鬼を扱った作品としては良かったよ……
 あとこう、もっと殺人の手際や計画がスマートに行われてたら、観ていても「ああこれはそういうフィクションなんだな」と引いた目で観られたかもしれないんだけど、「俺は完璧にやってるぜ」みたいなモノローグでも実際は殺人犯の手際がかなりもたついてるように描かれていて、その乖離が余計に変なリアリティを生み出し、そういう人間による犯行ってこうなんだろうなぁということを、説明とかはされないんだけど観ているだけで理解させる描写が上手くて、そういうところが非常にキツかったね。

『エルム街の悪夢』観終わった。
 夢にだけ現れる鉤爪の殺人鬼と対峙する物語。フレディに襲われるのを描いたスラッシャー物ではあるんだけど、むしろ「夢に出てくるこいつは何者なのか?」ということが徐々に明らかになる過程がサスペンスチックで面白く、「なぜ謎の人物に自分達は襲われるんだ?」という主人公が抱く疑問の答えが、ちゃんと中盤で言及されていて、それによってフレディに自分達がターゲットにされる理由付けにもなっていたのが良く出来た作品だったなぁと。まあ、なんでフレディがこんな力を持ってるのかとかは謎のまんまでしたが……(結局タイトル通り少女たちが見ている悪夢ってことなんだろうが)
 あとはまあ、当たり前だけど「夢の中で襲われたことが現実になってるの!」という言動が現実で信用されるわけがなく、結果として孤軍奮闘することになった主人公がやった行動がかなり過激なムーヴだったのには笑っちゃったよ。殺人鬼にやり返すためにはあれくらいしなきゃというのはわかるけど、学生が用意していいトラップじゃないのよ。

『ウィッカーマン』観終わった。
 行方不明の少女を探しに本土から離れた島に来たら、そこはキリスト教ではない宗教が主流となっている異端の島だったよという話。
 ホラー的なカルト映画という立ち位置にあるような作品だが、ホラー映画というよりミュージカルやアート映画のような色がかなり強く、印象的なシーンでは必ずと言っていいほど、それこそ人によっては主人公と同じように嫌悪感を示すような露骨に性的な歌詞の歌が島民によって開けっ広げに歌われたりして、この作品において重要な要素でもあるキリスト教から見た異端とはどういうものかを暗にわからせる役割を果たしていたのが上手かった。
 物語自体も「行方不明の少女はどうなっているのか?」というミステリ要素が含まれた話を軸にした、わりとしっかりめのシナリオになっており、その辺が丁寧だったせいか、綺麗に悪意と宗教観を織り交ぜてラッピングして作ったんだなぁ〜と思わせるような異形な作品に仕上がってましたね。けっこう好き。

『DAGON ダゴン』観終わった。
 乗ってた船が座礁しまい、助けを求めた港町で邪神の生け贄にされかけちゃう話。原作がクトゥルフ神話の『インスマウスを覆う影』ではあるんだけど、ダゴンを信仰していることとそのせいで住人が異形化していること以外はほぼ原作とは関係なく(インスマウスでもない)、この作品オリジナルのストーリーが展開されているのが特徴。
 全体的に原作に触れたことがある人間向けの話になっているため、説明不足なところや突拍子もない場面が多かったり、映像面でも街中のシーンは画面が終始暗くて見にくいといったアレなポイントがいたるところにあったりもしましたが、まあなんとか原作を頑張って映像化しようとしたんだなぁ……という努力はところどころには垣間見れましたね、それが良い方向に作用していたかどうかはわかりませんが……。
 あと微妙にどんでん返しみたいな要素もあったりしたけど、それもひっくるめてなんか変な映画!!!と言えるような作品でしたね。

『テストN』観終わった。
 祖父が残した日記に書かれていたナチスの実験を再現したらとんでもないとこになっちゃったよという話。ストーリーというか……語ることがない……。作中何がどうしてこうなっているのかがほぼ説明されないので、観ている人間が多分こうだろうな……と想像で補いながら、起こる出来事をただただ観ているだけの作品。
 一応、実験が本格化する中盤まではそれまでの準備として後に繋がる要素を散りばめた話をやってくれてはいるんだけど、それ自体も抽象的で説明不足なところが多く、人間関係や状況を把握しているうちに実験が開始し置いてけぼり状態になってしまうので、よく乗り切らないうちに始まって、なぜか人間がおかしくなって終わっちゃったな……と釈然としない消化不良感だけが残ってしまったので、せめてもう少しおかしくなった理由付けをしてほしかった。
 あとラストで全てが伏線でしたと言わんばかりにスマートな言動で主人公が物語を締めるんだけど、そこまでの過程がグダグダだったせいで滑稽な締めにしか思えず、「そう……」と冷めた感じで受け止めてしまったのが残念でしたね。
 受刑者に延々とタイヤを放り投げさせる拷問が観られる唯一無二の映画にはなっているので、そういう責めが好きな人にはオススメです。ナチスの実験なら何してもいいわけじゃないんだぞ。

『スプリー』観終わった。
 バズりたいという欲求に取り憑かれた泡沫動画配信者が辿る最悪の末路とは。動画配信者を題材にした作品ということもあり、主人公が投稿しているユーチューブやインスタでのライブ映像で物語を構成しているという画作りが楽しく、そのおかげでまるでリアルタイムで主人公の配信を観ているかのような臨場感が演出されていたのがとても良かったですね。
 主人公が配信者としてウケてない理由も生々しいというか、視聴者にも「そら登録者が増えませんわ……」と思わせるような空回りした行動を繰り返したり、インフルエンサーに会うとまず「自分のことをフォローして!俺すごいやつだから!」と言い出したりする姿がとにかく痛々しく、登録者数が欲しいがために暴走を繰り返しても才能がないためにバズったりすることはなく、そのせいでどんどんどんどん取り返しの付かない凶行にまで手を染めてしまうのは、なんだかこいつは現代が産み出した承認欲求モンスターなんだなぁと思ってしまったりもした。かなり好き。

『SNS-少女たちの10日間-』観終わった。
 児童への性的搾取の実態を調査するため、少女に扮装した女優たちがスカイプで連絡を取ってくる様々な人間と対話をしていくドキュメンタリー。ドキュメンタリーにふさわしくない言葉ではあるが、「全部やらせであってくれ!」と観ていてドン引いてしまうくらい次から次に出てくるおじさんたちがとにかく酷く、下手なホラー映画では味わうことが出来ない恐怖を味わった。
 作品の性質上明確にこれといった勧善懲悪のオチはないんだけど、それが余計にこれが現実でも日常的に起こってることなんだろうなぁ〜と思わせることに成功していて、どこの誰とでも自由に連絡が取れるコミュニケーションツールの危険性への警鐘を鳴らすことに一役買っている映画になっていましたね。生理的にも精神的にも気持ち悪い描写がけっこうあるので、苦手な人は絶対にいる作品ではあるけれど、犯罪ドキュメンタリーとしては良く出来ていたよ。

『インスマスを覆う影』観終わった。
 原作の舞台を日本に置き換えてドラマ化した作品。オリジナルのアレンジを加えているところはあるものの、制作陣によるラヴクラフトへの敬意がちゃんと伝わってくるような出来栄えで、きちんとクトゥルフ神話みのある作品になっていたのがよかったですね。
 同じ原作を使った『ダゴン』よりも明らかにしっかりしていたというか、あっちはグロとかの路線に力を入れちゃったせいで、「これはちょっと違うかな〜」といった感じが出ていたけど、これは原作にあるイヤな恐怖を上手いこと描いていたのが好印象で、一つの短編ホラードラマとしても楽しかった。

『金融腐蝕列島〔呪縛〕』観終わった。
 傑作。総会屋への不正融資によって揺れる銀行を舞台に、建て直しと行内に巣食う呪縛を断ち切るために奔走する人間を描く物語。旧大蔵省と検察庁と作中のモデルとなった銀行と帝国ホテルが日比谷公園を取り囲むように建っているという地の利を活かし、物語に何か動きがあるとその中心の日比谷公園を行き交いながら進行するという画作りがされていて、それが緊迫した空気感や臨場感を出す効果的な演出になっていたのが上手かった。
 ストーリーにおいては、どうすれば今の最悪な体制を変えて新しく生まれ変われるだろうかと、役所広司や椎名桔平らが演じるミドル層の社員たちが、家族のため、銀行のため、そして総会屋などとの呪縛を断ち切るために必死になって諸悪の根源でもある旧役員と対峙する姿が時にはかっこよく、時にはある意味滑稽に描かれており、ラストに待ち受けるシーンでは思わず胸が熱くなったりもした。
 金融のことなどがわからなくても、劇中のニュース番組を使い今現在どういう状況になっているのか?ということを教えてくれたりもするので、そういう点ではけっこうわかりやすくとっつきやすい内容にはなっていたかなぁと。本当にね、めちゃめちゃかっこいいんですよ椎名桔平が。すげぇ良いの……

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