猫が死んだ

飼い猫が10/7の夜に亡くなった、元々奥さんの実家で飼っていた猫で16歳だった。
僕と一緒に暮らすようになって1年と数ヶ月だったが、気に入ってくれたのか家にいる時はずっと僕にベッタリだった。
よく喋る猫で2階に駆け上がれば「こっちこい」と大声で呼んだり、腹が減ればこれまた大声で主張する煩くも甘えん坊な性格だった。

今年の春先だったか事件が起きた。仕事から帰宅すると奥さんが夕飯の支度をしていた。
夕飯が出来るまで猫と戯れようと家の中を探すも姿が見えない、声もしない。
奥さんにそれを伝えると「さっき外で野良猫が喧嘩してたけどまさかね」と冗談交じりに話していたが、それが現実であった。
外に出さないで飼っていたので、外にいる事自体が事件なのだが、家の中にいないのだから外を探す。
しかし姿は見えない。
とりあえず家に帰って窓から外を見ていたら小走りに猫が帰ってきた。

一安心だったが、どうも元気がない。
最初は喧嘩に負けたショックか、現実の厳しさを知ったのか、なんて見ていたが、日に日に元気どころか食欲も落ちていく。しかし目立った外傷はない、もちろん出血もしていない。
数日様子を見ていたが呼吸も荒くなっていたので動物病院に連れていく。そこで診断されたのが「膿胸」、肺に膿が溜まって上手く酸素を取り込めない状態になっていた。

その日から闘いの日々が始まった。

肺に溜まった膿は抜いてもらうがしばらくすると水が溜まり、病院で抜いてもらい、また水が……を繰り返す日々。

病院から帰ってくれば元気になって餌もちゃんと食べ、いつもの生活だった。

だが元気な時間は少しずつ減っていた。
9月半ばだったか病院で「肺が癒着していて半分機能していない」と診断。
呼吸も少し動いただけで苦しそうにしている。

もう時間の問題だった。

それでも奥さんが懸命に世話をし、異変があれば病院に連れて行き、根気強く餌や水を与え、そして昨日旅立って行った。

静まり返った家にもう大声で呼ぶ猫の姿はない。
冷たく、丸くなって眠り続けている。

小さい身体でこれ程大きな存在だった事を思い知る。

明日は火葬。お別れが近い。

外はずっと冷たい雨。

何も洗い流してはくれない。

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