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ぼくは小説が書けない ――むかしなら。

書けないというのは大げさで、頑張れば書ける、ということではあるのですが。
しかし、おそらく一昔前なら、私は小説なんてとても書けなかったでしょう。
これは、現代が与えてくれる恩恵への感謝の話でもあります。

小説というのは、書けば疲れます
これは私のような、趣味でキーボードを叩くだけのしょうもないヤツバラでも、名うての物書き様と共通することです。
何かを一生懸命やれば疲れるのなんか当たり前だ、もっと頑張れ! とは自分でも思うのですが、私のてきめんに疲れる場所というのは、「目」なのです。
もちろん多くの書き手さんが同様に抱える悩みだと思うのですが、どうも私は平均よりも打たれ弱いようです。

特に夏場なんかはかなりきつくて、晴れた日にただ屋外を歩いているだけでも、目を閉じて休憩する必要があったりします。
目にいいという錠剤を飲んでみたり、マッサージの類を試したりといろいろやってみたのですが、なかなか解決しません。

それでもやっぱり根性だ! と思い、閉じそうになる目をカッ開いて頑張ってはみるのですが。
ダメなときはものの数分で、目が痛くて痛くて仕方なくなり、かろうじて薄目を開けて、しかめっ面で作業することになります。
また私は片頭痛持ちなのですが、目が疲れてくると真っ先に現れる症状が頭痛でして、これがもう痛すぎてまともにものを考えられなくなります。
セリフ一行書いて、それを見直すのに数分かかったりもします。困ったものですね。

目と頭の痛みを力業で耐えて続けようとすると、やがて苦痛の声が歯の間からこぼれ始め、
「ぶふううううううう」
「うぐえええええええ」
泣きながら謎の奇声を吐き洩らしながら端末にしがみつく奇人の出来上がりです。
私はパソコンで作業するときは、図書館の個別用ブースのレンタルPC(週末に二時間まで貸してくれる。すごい)を利用しているのですが、これでは下手すると通報されかねません。

仮眠すると多少はましになるので、15分ほど仮眠することも多いのですが、目のコンディションがいまいちのとき、はその後30分ほどでまた限界がきます。
それでまた15分休んで……となるとまともにものなんぞ書けやしません。

これらを総合すると、晴れている日は昼間なかなかはかどらないので夜書こうということになるし(電灯の明かりは私の場合日光よりはラク)、それでも一日生活してれば夜には普通に目が疲れてしまっているので昼間に寝ておかなきゃならん……となると、生活に支障が出まくりです。

ところが現代では、スマートフォンが手元にあるおかげで、これに一応のプロットやセリフ、ストーリーラインをあらがきしておけば、あとからキーボードを叩く時間がかなり短縮されます。
文章って、書いてる時間より考えてる時間の方が長かったりしますからね。

機能もそうですが携帯性というのがありがたく、平日の空き時間とかにスマホを取り出してブツブツブツブツしゃべりかけてポイントを吹き込んでおけば、執筆の時に悩む量が減ります。

上記のレンタルPCも、実装されたのはおそらく、けっこう最近でしょう。
スマホと合わせて、自分は本当にテクノロジーや行政に助けられているなあと思います。

こんな私でも自分なりの物語を書ける、現代という時代に感謝しています。
もし、何かものを書いてみたいけど意外にハードル高いな~、キーボードでブラインドタッチとかできなきゃなのかな~、おっくうだな~、という方がおられたら、まずはスマホに吹き込むことから、物語作りを始めるのも楽しいかもしれません。

もしあなたの街の図書館で、奇声をあげて泣きながらPCにすがりついている人がいたら、その人は現代の救われ人です。
どうか優しくしてあげてクダサイ。


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