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胆嚢をとった話⑤退院編

▽術後3日目

この日の起床時、驚くべき身体の変化を感じた。
痛くない、しんどくない、気持ち悪くない。

勿論、痛み自体はあるのだが、解熱鎮痛剤を飲めば、意識しない程度の痛みになったということだ。
8時間ほど、たっぷり睡眠も取れ、今や電動ベッドの操作も心得ているので、気持ちよく起き上がり、洗顔歯磨きをし、身だしなみも整え、朝食前に解熱鎮痛剤を飲み、明日の退院に備えて少し片付けもした。

朝食も美味しくいただき、その後無事排便することができた。
手術後初めての排便であった。
心配していた排便時に伴う腹部の痛みも大したことなく、耐えれる程度であった。

そして明日、ついに退院。不安材料は、入院中に全て削ぎ落ちた。
私はやっていけると期待に胸が膨らみ、自信に満ち満ちた。
排便とは、なんと清々しく、晴れやかで健やかな作業なのであろう。

腹部の痛みもコントロールできた今、病室にいるのは大変退屈であった。

この日、初めてシャワーの許可が出たが、明日退院して自宅でゆっくり入りたいと思ったので、断って身体を拭くだけにした。
というのも、実は入院前、美容室に行きヘッドスパとトリートメントを受けてきていた為、毛穴も髪も常に清潔感があり、頭皮も全く気持ち悪さがなかった。イメージ的には、中谷美紀のサラサラ前下がりボブのような涼やかさである。髪が美しいというだけで、QOLは、いとも簡単に向上するのである。入院する旨を伝えていたので、美容師もことさら丁寧に施術してくれたおかげで、快適に入院生活を送れた。

ベッドの上だけで生活しているため、腰痛も少し出てきたので、病室内のソファで読書をして過ごした。
こうして入院中に、文庫本の『マッチング』、『ザリガニの鳴くところ』、Kindle内のハリーポッター1〜3巻もスッキリと読み終え、退院の準備は整った。


▽術後4日目

いよいよ退院日の朝を迎えた。
元々退院は5日目だったので、1日短縮されたことになる。

実は、腹腔鏡手術の際に、右下の電気メスを挿入した部分が、電気メスによって火傷を負い、患部がじゅくじゅくしていてまだ出血があった。
それゆえ、治るまで入院していて良い、と言われていたのだが、これが医師側のミスのようなニュアンスも感じたのだが、軽く聞き流し、何より命の無事と順調な回復を喜んでいたので、申し出には感謝し、身体を動かしたいので帰ります、と返答していたのであった。

朝、退院前に主治医がやって来たので、火傷の部分の処置をしっかり聞いた。ガーゼにリンデロンVG軟膏をたっぷりと塗布し、ぺたっと貼り付け、サージカルテープでガーゼを留めるといった簡単なものだった。

ガーゼが家になかったと思い、病室からネットスーパーへアクセスして、適当なガーゼと、当面必要になりそうな食材を買い足した。
会計が出る10時以降の退院になるので、自宅受け取りを15時を指定し、退院許可を待った。

いよいよ会計も算出され、出口で支払いを済ませた。
クレジットカード決済が出来るのでとても気軽であった。

なお、国保の為、高額医療費制度(所得区分ア)を利用し、約24万であった。
県民共済やその他保険に入っているので、個室利用と浴衣レンタルも含め、これらが後から給付されることも大変ありがたい。

かくして私は退院した。
ひとりでやって来て、ひとりで去った。
キャリーを引いて颯爽と———とは行かないまでも、ヨボヨボと人の手を借りながら、気持ちは軽やかにタクシーに乗り込み、帰宅するのであった。


【完】


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