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2月の勝者ー絶対合格の教室ー(高瀬志帆)

なぜこの本

小学生の子どもの親が頻繁に耳にする話題の一つが中学受験。
この漫画は東京都内の中学受験事情を新人塾講師の視点からリアルに描いた作品。
柳楽優弥主演で2021年にドラマ化されたのでご覧になった方も多いかもしれません。

ちょうど先日の7月11日に最終巻の21巻が上梓されたのでさっそく読んでみました。

どんな本

舞台は吉祥寺の学習塾・桜花ゼミナール。
進学実績で同地域の塾であるフェニックスの後塵を拝していたところにフェニックスから移籍してきた黒木蔵人が塾長として着任してきます。
同時に桜花ゼミナールに新卒で入ってきた佐倉麻衣は中学受験の現実に翻弄されながらも塾講師としてのキャリアを歩んでいく。
中学受験のことを何も知らない佐倉先生に黒木塾長や先輩講師が中学受験の仕組みを丁寧に説明してくれるため、中学受験事情を知らないまま読み始めたとしても、読了後には中学受験マスターに(?)。
桜花ゼミナール、フェニックスと架空の塾が出てきますが、実在の塾を下敷きにしているのは明らかです(フェニ→サピと読み替えすると…)。
また、学校名もデフォルメされていますが、実際の学校がモデル。
その為、実際の中学受験業界の概要も分かります。

ただ、本書は志望校合格を目指してめでたし、というだけのストーリーではありません。
子ども達それぞれの困難や逆境、社会問題にまで踏み入れているのは興味深いところ。
特に黒木先生がコッソリと運営するStarfishのストーリーはずしりとした重みがあります。
中学受験は課金ゲームと同じと断ずる黒木先生がなぜStarfishの運営に手を染めるのか?
子どもがいる方もいない方も、中学受験を経験された方も無関係の方も、お互いに見たことのない世界があります。
中学受験をする子どもと日々の居場所を確保するので一生懸命な子どもの生きる世界は異なります。
黒木先生は教育の分野で社会の分断を橋渡しするミッションを自らに課しているのかもしれません。

そもそも中学受験をするのは何故なのか。
課金をすると圧倒的に有利な世界は果たして正義に適うのか。
以前にご紹介したマイケル・サンデルの「運も実力のうち 能力主義は正義か?」の内容もよぎります。

果たして桜花ゼミナールの面々は合格を、そして幸せをつかむことが出来るのか?

誰に、どんな時におすすめ

まずは中学受験を志すご家庭におすすめ。
だいぶ脅かされる内容もありますが、残念ながら中学受験あるあるのストーリーも多く、実際に近いと思って読んだ方が覚悟ができます。
また、子どもの発達や子どもに纏わる社会の在り方に興味をお持ちの方にもおすすめです。
願わくば、読後に社会の在り様に思いを馳せていただければ…ご紹介した甲斐があったと言えるでしょう。

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