マガジンのカバー画像

れぽーと

10
精神科看護師やってきた車椅子ユーザーが、少し真面目に精神保健福祉やら障害福祉やらを考える。
運営しているクリエイター

記事一覧

災害時マニュアル、精神科も考えよ

災害時の福祉支援体制として、病院や企業、施設などでは、個々に災害時マニュアルを作成しており、災害発生時にはそれに基づいて行動するなどとしている。しかし現状、災害時マニュアルがある施設とない施設とがあるのも実際のところである。
災害拠点病院など大きな病院では、災害時を想定した行動が取れるような意識づけがなされていたり。大学時代の同級生に話を聞いたことがあるが、己の職場との格差に劣等感で潰れてしまうか

もっとみる

養育費のこと

貧困支援の話の続き。
今回は、養育費のこと。

ひとり親家庭への経済的な支援として、就労支援や児童扶養手当などがある。ひとり親家庭は特に母子家庭が多く、非正規雇用の職についている割合が高い。職が不安定なことで所得も低く、より収入の高い就業を可能にするための支援が必要である。

そして、それ以上に、日本では特に、養育費の確保について、もっと真面目に取り組むべきだと思う。
養育費の受給状況に関する厚生

もっとみる

貧困支援のこと

貧困には大きく分けて2種類ある。
まず、人間らしい生活の必要最低条件の基準が満たされていない状態である、絶対的貧困だ。途上国などでみられる、目に見えやすい貧困である。
それに対して日本における貧困は、相対的貧困のことを言う。その国の文化水準や生活水準と比較して困窮した状態を示す。
これは、経済的に余裕のある者が増えれば増えるほど、貧困家庭も増加することを意味しており、日本ではこのような経済的格差が

もっとみる

長期入院に伴う社会性の喪失とアイデンティティ

学童期から青年期にかける発達過程で、自己と他者という関係は、親子から友人関係へと拡大する。そこで社会性を育み、葛藤や模索の時期を経てアイデンティティを確立していくことが発達課題となる。

精神疾患の主要疾患である統合失調症は10~20代で好発する。これはちょうど青年期の、アイデンティティを確立していく時期と重なる。

統合失調症は、脳内の神経伝達物質の異常で起きる、脳の病気である。しかし、その病態

もっとみる

他者との相互作用を通した成長発達の可能性

乳幼児期の発達において、認知や言語、感情などは、周囲と相互に影響しあっており、その様々な環境との相互作用を通して発達していく。
周囲の環境が成長発達に影響する、
それは乳幼児期のみに限らず、年齢に関係なく、大人になってからでも言えることではないだろうか。

まず、乳幼児期の心身の発達過程において、その家庭環境の発達の遅れや問題が生じるケースもあることを理解しておく必要がある。
例えば、親が精神疾患

もっとみる

発達障害と環境

発達障害も知的障害も先天的なものであり、遺伝的要因と環境的要因が複雑に関係しているものである。それだけでなく、その生きづらさからいじめを受けたり失敗体験を積み重ねたりしやすく、二次障害に発展することも少なくない。

発達障害の二次障害に関しては、確実に、その障害者を取り巻く“環境”で引き起こされている。
児童虐待のリスク要因としても、育てにくさや子どもに尽くせない自己嫌悪、といった二者間におけるも

もっとみる

レッテル貼り

 依存症者、引きこもり、障害者(発達・知的・身体・精神)、虐待、全ての問題の根底に無意識の差別による孤立が強くあると思っている。

 今の日本社会はマイノリティを排除する傾向がまだ強い。
どういう考え方があっても良いとは思うよ。
好き嫌いあるし、 なんでも受け入れろとは言わない。僕だって嫌いなものは嫌い。
ただ、考えずに拒絶するのが理解できないの。
ふーん、そうなんだ、そういう人もいるんだね、

もっとみる

看護師へのケアとスケープゴート

 精神科の長期入院患者の奥底にある、見捨てられている、といった孤独感。この孤独感を、慢性期病棟で働く精神科看護師も同じように経験していると、個人的には思っている。
退院支援を進めようにも、受け入れ先がなかったり、サービス調整が難しかったり、本人にその意思がなかったりもざらだ。退院してもすぐ再入院して戻ってくるケースも多い。病棟内は、常連で溢れている。また、国が重点を置いているのは急性期やスー

もっとみる

回復の手始めに

 精神科看護においてよく耳にする言葉に、リカバリー、ストレングス、セルフケアがある。
これらの言葉には共通して、
「意思決定する主体となるのは、ケアの対象者、本人自身である」
という考えが基盤にある。

 回復、リカバリーは、人生の新しい意味と目的を創り出すことであり、本人が希望をもつことを土台としている。ストレングスモデルは、その人の強みや長所に焦点を当てており、自分や環境の強み、資源を利用

もっとみる

医療ニーズを取りこぼさないように

 日本では、1978年に発表された「第1次国民健康づくり対策」をはじめ、幾度の討議や計画改訂を経ながら、現在は2013年度より始まった第4次国民健康づくり対策、健康日本21(第2次)をもとに、その時代に合わせた健康づくり対策に取り組まれている。
 時代に合わせて法制度は変わっていくが、臨床現場にいると、そのような社会の変化について自身の業務に直接関係するような内容でない限り、自ら意識して情報をキャ

もっとみる