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優しい時間

こんばんは、さわです。
今日は、ライブの間に
挟んでいたおはなしを。



「優しい時間」


最近は晴天が続いていたけど、今日は風が強い。空は灰色だ。向かいのアパートで男性が三味線のようにギターをかき鳴らしている。朝からずっと眠くて、あと30分、を繰り返しながら眠り続けて、夕方になってしまった。


【何もない日曜日】



なんにもする気がおきないし、ごはんも食べたくない。会社を辞めることになり、月の半ばから有休消化に入った。どこか旅行でも行けばいいけど、そんなお金もない。家族がいないので帰る実家もない。うだる暑さに、いつかの夏休みを思い出す。


【故郷】



友だちだっていなければ、かわいい彼女もいない。趣味もない。我が身が憐れに思えてきて、怠いからだを無理やり起こした。このままどこかに隠れてしまっても、ぼくなんて、誰も探さないんじゃないのか。


【かくれんぼ】



ぼくはいつから一人なのだろう。一番最後に恋をしたのはいつだったろう。ぼくの愛が足りないと言って、彼女は別れ際にはストーカーみたいになってしまった。愛への応え方も分からない。そんなものに正解はあったのか。


【からたち】



シャワーを浴びてサンダルを履き、散歩に出る。ちょっとは歩かないと足が役目を忘れそうだ。アパート下の公園で子供らが遊んでいて、鬼になった子が張り切って数を数えていた。ぼくにもこういう日はあっただろうか。どこかで選ぶ道を間違えただろうか。


【かぞえうた】



行く宛もなくあぜ道を歩いている。働く人も遊ぶ人も、みんな誰かと話したり、しきりにスマートフォンを見たりしている。ぼくは手ぶらだ。立ち止まる。滔々と陽は暮れてゆく。ぼくだけ、誰ともつながっていない。まるで、風景から浮き上がる怪物だ。


【dragon】



寂れた商店街の入口まで歩くと、「バー真夜中」と流行らなそうな書体の看板が目についた。真夜中というにはまだ早いけど。扉を開けると地下への階段が続いている。


【真夜中】



バーカウンターには青年が立っていて、いらっしゃいませ、と小さすぎる声で言った。おすすめを下さい、と、数日ぶりに言葉を発した。青年はしばらく考えて、「ブルームーンです」と青いカクテルを置いた。あの子と、お月さまをよく眺めたっけなあ。


【〇一】



空きっ腹で飲んだからか、酔いがまわってきた。ぼくは同じものを、とお代わりを注文した。バーテンダーは小さすぎる声で、「いい香りでしょう」と言った。出されたカクテルは花の香りがした。


【夜明けの晩に】



朝が近い。気がつくと青年に「ここのバーは、バイトの募集はしていませんか」と声をかけていた。ぼくが今後、誰かとつながれるのかは分からない。でも、もしも、少しでも誰かの役に立つなら、それはこうやって、誰かのそばにカクテルをそっと置いてあげるようなことかもしれない。

青年は「真夜中は、朝が来ると閉店ですから、その後お話しましょうか」と言った。青いカクテルの色は、今度は海の色に見えた。


【海里】



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???

じつは、去年のメモから
このおはなしを見つけたのですが
いつ、どこのライブのものか
わからないんです笑

いつになくお話っぽい
おはなしでした。
バー真夜中、行ってみたいです。

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