澤田智洋

著書「マイノリティデザイン」「ホメ出しの技術」「ガチガチの世界をゆるめる」|世界ゆるス…

澤田智洋

著書「マイノリティデザイン」「ホメ出しの技術」「ガチガチの世界をゆるめる」|世界ゆるスポーツ協会代表 https://yurusports.com | など

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    2015年に誕生した「世界ゆるスポーツ協会」に関する記事のまとめ

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赤いビーズクッションは、永遠に沈んでいった。

そう、確かに言った。 「岸田奈美さんとの対談、どんなシチュエーションがいいですか?」と文藝春秋の浅井さんから尋ねられたときに、「そうですね、リラックスできる雰囲…

澤田智洋
3年前
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点字がついた一冊の本ができるまで

「はじめまして、御社が好きです。何か力になれることがあれば連絡ください」 できの悪いスパムメールでしょうか? いいえ、僕が20代の頃に送っていたメールです。 必死…

澤田智洋
1年前
291

コピーライターの思考法は、「褒める」に生かせる。

ひょっとして、コピーライターの思考法って、 人を褒めることに生かせるんじゃないか…? これは、僕が10年前にこっそりと立てた仮説です。 「コピーライターの思考法」…

澤田智洋
1年前
60

一発屋転校生、透明人間になる。

この文章は、パナソニックがnoteで開催する「 #あの失敗があったから 」コンテストの参考作品として主催者の依頼により書いたものです 「僕が旅に出る理由はだいたい100個…

澤田智洋
3年前
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ふと「自分宛」に企画書を書いてみたら、働き方が激変した

人生で、いくつ企画書を書きましたか? 僕は、だいたい年に50回ぐらい企画書をつくっています(広告会社につとめているので平均より多いかもしれません)。これまで17年ほ…

澤田智洋
3年前
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はじめて車両広告が掲載された日、 僕は山手線に乗って1周した

2021年2月発売『マイノリティデザインー弱さを生かせる社会をつくろう』(ライツ社) 第1章「マイノリティデザインとは何か?——広告から福祉へ。「運命の課題」との出会…

澤田智洋
3年前
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マイノリティデザイン。それは、弱さを生かせる社会をつくる方法

2013年5月。息子の目が見えないことがわかった。 彼が生まれたのは、2013年1月。どうして4ヶ月の時差があるかというと、生後間もない赤ちゃんは、大なり小なり目が見えづ…

澤田智洋
3年前
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体育が嫌いだったすべての人に、「あなたは悪くない」と伝えたくて本を書いた。

こんにちは、世界ゆるスポーツ協会の澤田智洋です。 これまで「イモムシラグビー」「ベビーバスケ」「トントンボイス相撲」など、90種類以上のスポーツを仲間たちとつく…

澤田智洋
3年前
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今だからこそ知ってほしい、香港のリアル。

2020年7月1日、「香港国家安全維持法」が施行されました。 どういう内容かというと、「国の分裂や政権の転覆など、国の安全に危害を加えるものを犯罪行為と定める」という…

澤田智洋
3年前
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広告とスポーツと福祉と音楽と漫画の仕事をしています。

こんにちは、澤田智洋です。 これまで一度もポートフォリオ(作品集)をまとめたことがなかったのですが、色々な場面で必要になってきたので、重い腰を上げてみます。正規…

澤田智洋
3年前
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オリンピック銀メダリストは、なぜUberEats配達員を始めたのか?

2015年8月、ある男をTwitterでフォローした。 男の名は、三宅諒。現役のフェンシング選手で、ロンドンオリンピック男子フルーレ団体の銀メダリスト。たまたま目に入ったプ…

澤田智洋
3年前
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カメラを持つと変身する男 –パラリンピックを撮りつづけて20年–

ひょんなことからカメラマンにその男は、物腰が柔らかい。「ありがとうございます」「助かります」といつも仕事相手や仲間への感謝を口にし、決して微笑みを絶やさない。少…

澤田智洋
4年前
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足が速くなってはいけない仕事。

夜の東京を走る。丁寧に整備された陸上トラックでは、同じタイミングで、同じ場所で、走るという同じ目的をもって家を出た、幾重にも偶然が重なり合ったランナーたちが、だ…

澤田智洋
4年前
36

「意味の時代」から、「わかんないの時代」へ。

疲れました。意味に。 のっけからそうぼやいてしまうほどに、意味疲れしている。ここ数ヶ月ほど、なぜかみんな口にすることが増えた「意味」という言葉。「この事業の意味…

澤田智洋
4年前
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会社に自分を合わせるのではなく、社会を自分に合わせる働き方。

「僕、就活で120社から落とされたんだよね」 2017年がもうじき終わろうとしていた師走のある日。池袋にあるカフェで、コーヒーを一口飲んで初瀬勇輔さんは呟いた。今では…

澤田智洋
4年前
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ブレンドしているのは、コーヒー豆だけはない。

教会みたいだ。 はじめてそのカフェに入った瞬間、まっさきにそう思った。キリスト像があるわけではない。ステンドグラスも、燭台だってない。神保町駅から徒歩8分ほどの…

澤田智洋
4年前
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赤いビーズクッションは、永遠に沈んでいった。

赤いビーズクッションは、永遠に沈んでいった。

そう、確かに言った。

「岸田奈美さんとの対談、どんなシチュエーションがいいですか?」と文藝春秋の浅井さんから尋ねられたときに、「そうですね、リラックスできる雰囲気がいいです。掘りごたつ的な」と。僕は確かにそう言った。

11月4日に、「《できない》を武器にする、あたらしい生き延び方」という物々しいタイトルで対談することが決まり、できるだけゆるやかな空気感で挑みたいと思ったのだ。生配信もあるし。

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点字がついた一冊の本ができるまで

点字がついた一冊の本ができるまで

「はじめまして、御社が好きです。何か力になれることがあれば連絡ください」

できの悪いスパムメールでしょうか?
いいえ、僕が20代の頃に送っていたメールです。

必死でした。広告会社につとめていながら、自分が納得のいく仕事ができず、「好きな企業に、自分から連絡したら流れが変わるかもしれない」と不器用にメールを送っていたのです。

そのうちの一社が、このnoteの主役である、大塚啓志郎さんが当時つと

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コピーライターの思考法は、「褒める」に生かせる。

コピーライターの思考法は、「褒める」に生かせる。

ひょっとして、コピーライターの思考法って、
人を褒めることに生かせるんじゃないか…?

これは、僕が10年前にこっそりと立てた仮説です。

「コピーライターの思考法」とは、企業や商品の魅力を発見して、言語化して、発信する一連のプロセスです。

最大の特徴は、その結果として、自分が担当した企業や商品を大好きになること。それは、高度な「良いところ探しゲーム」をしているようなものだからです。

だとし

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一発屋転校生、透明人間になる。

一発屋転校生、透明人間になる。

この文章は、パナソニックがnoteで開催する「 #あの失敗があったから 」コンテストの参考作品として主催者の依頼により書いたものです

「僕が旅に出る理由はだいたい100個ぐらいあって」とくるりは歌った。

一方、僕が「パリのイギリス人学校」に転校する理由はだいたいほとんどなかった。

小学6年生のとき、フランスのパリに住んでいた。そして「パリの日本人学校」に通っていた。日本人のクラスメイトたちと

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ふと「自分宛」に企画書を書いてみたら、働き方が激変した

ふと「自分宛」に企画書を書いてみたら、働き方が激変した

人生で、いくつ企画書を書きましたか?

僕は、だいたい年に50回ぐらい企画書をつくっています(広告会社につとめているので平均より多いかもしれません)。これまで17年ほど社会人をやってきているので、つまりは合計800~900回も企画書を書いてきた計算になります。

いくらなんでも書きすぎだ。

僕は企画書を書くために生まれてきたのでしょうか?いや違う。僕を現世に送り出すときに神は、「生を受けたら、立

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はじめて車両広告が掲載された日、
僕は山手線に乗って1周した

はじめて車両広告が掲載された日、 僕は山手線に乗って1周した

2021年2月発売『マイノリティデザインー弱さを生かせる社会をつくろう』(ライツ社)
第1章「マイノリティデザインとは何か?——広告から福祉へ。「運命の課題」との出会い」より

最初は営業マン、お得意様の「お金の使い方」を決める仕事2004年、広告会社に入社して最初に配属されたのは営業局でした。

とあるカメラメーカーのメディア担当、の中の雑誌広告を任されました。年間予算額が数千万円あって、達成し

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マイノリティデザイン。それは、弱さを生かせる社会をつくる方法

マイノリティデザイン。それは、弱さを生かせる社会をつくる方法

2013年5月。息子の目が見えないことがわかった。

彼が生まれたのは、2013年1月。どうして4ヶ月の時差があるかというと、生後間もない赤ちゃんは、大なり小なり目が見えづらいからです。だから僕ら夫婦も、言ってみれば「普通の赤ちゃん」として息子を育てていた。

ところが、ふとしたことがきっかけで、彼が視覚障害児であることがわかりました。なんの前触れもなく、予兆や伏線もなく。頭が真っ白になり、目の前

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体育が嫌いだったすべての人に、「あなたは悪くない」と伝えたくて本を書いた。

体育が嫌いだったすべての人に、「あなたは悪くない」と伝えたくて本を書いた。

こんにちは、世界ゆるスポーツ協会の澤田智洋です。

これまで「イモムシラグビー」「ベビーバスケ」「トントンボイス相撲」など、90種類以上のスポーツを仲間たちとつくってきました。

と自分のことを紹介すると、「スポーツが好きなんですか?」「スポーツをやっていたんですか?」と質問されることがあります。

いえ。いいえ。

ぼく、世界で一番苦手なものがスポーツなんです。

なんでかというと、「体育」と全

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今だからこそ知ってほしい、香港のリアル。

今だからこそ知ってほしい、香港のリアル。

2020年7月1日、「香港国家安全維持法」が施行されました。

どういう内容かというと、「国の分裂や政権の転覆など、国の安全に危害を加えるものを犯罪行為と定める」というものです。その「程度」について説明がないまま7月1日をむかえ、蓋をあけてみると、「香港独立」の旗を掲げるだけでも逮捕されるレベルということが発覚しました。(実際には「香港独立反対」という旗だった)

つまり、中国に対して反抗的な態度

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広告とスポーツと福祉と音楽と漫画の仕事をしています。

広告とスポーツと福祉と音楽と漫画の仕事をしています。

こんにちは、澤田智洋です。

これまで一度もポートフォリオ(作品集)をまとめたことがなかったのですが、色々な場面で必要になってきたので、重い腰を上げてみます。正規のポートフォリオをつくろうと思ったまま数年が経っていたのですが、noteだとサクッとまとめられたので、noteフォリオおすすめです。

広告の仕事今も本業はコピーライターのつもりです。一時期、映画のキャッチコピーを多く書いていました。

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オリンピック銀メダリストは、なぜUberEats配達員を始めたのか?

オリンピック銀メダリストは、なぜUberEats配達員を始めたのか?

2015年8月、ある男をTwitterでフォローした。

男の名は、三宅諒。現役のフェンシング選手で、ロンドンオリンピック男子フルーレ団体の銀メダリスト。たまたま目に入ったプロフィールがキャッチーだった。

「生まれてこのかた5km以上の距離を走ったことがありません」

トップアスリートなのに、長距離を走ったことがないという矛盾に魅力を感じた。すぐにフォロバして頂き、ゆるやかに交流が始まった。

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カメラを持つと変身する男 –パラリンピックを撮りつづけて20年–

カメラを持つと変身する男 –パラリンピックを撮りつづけて20年–

ひょんなことからカメラマンにその男は、物腰が柔らかい。「ありがとうございます」「助かります」といつも仕事相手や仲間への感謝を口にし、決して微笑みを絶やさない。少し垂れた眉が、またなんとも言えない「いい人感」を際立たせている。
 
ところが、ひとたびカメラを持つと別人になる。突然頬を叩く。かと思いきや、素早く頷き、降ってもいないはずの雨を両手で受け止める仕草をし、一瞬天を仰いだかと思えば、矢継ぎ早に

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足が速くなってはいけない仕事。

足が速くなってはいけない仕事。

夜の東京を走る。丁寧に整備された陸上トラックでは、同じタイミングで、同じ場所で、走るという同じ目的をもって家を出た、幾重にも偶然が重なり合ったランナーたちが、だんご状になって走っている。一言も言葉を交わしたことのない同士たちと風を切りながら、私は心の中でつぶやく。

「ずるい」

いきなり何なんだ。私は口角を上げながら走るようにしている(その方が苦しくない気がするからだ)。そんな、微笑みの国タイか

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「意味の時代」から、「わかんないの時代」へ。

「意味の時代」から、「わかんないの時代」へ。

疲れました。意味に。

のっけからそうぼやいてしまうほどに、意味疲れしている。ここ数ヶ月ほど、なぜかみんな口にすることが増えた「意味」という言葉。「この事業の意味は」「この商品の意味は」・・・。何かの本の影響?なんなの?自分以外全ビジネスパーソンが受けているセミナーがあるの?

もはや食傷気味で、意味という言葉を相手が発したとたんに、

(意味ってローマ字で書くとIMIで、反対から読んでもIMIな

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会社に自分を合わせるのではなく、社会を自分に合わせる働き方。

会社に自分を合わせるのではなく、社会を自分に合わせる働き方。

「僕、就活で120社から落とされたんだよね」

2017年がもうじき終わろうとしていた師走のある日。池袋にあるカフェで、コーヒーを一口飲んで初瀬勇輔さんは呟いた。今では自分の会社を立ち上げ、多角経営を行っているバリバリのビジネスマンだ。

超がつくほど仕事ができる初瀬さんが、就活で失敗したのはどうしてか。

目が見えないからだ。

「企業側は考えるよね、視覚障害者を会社に入れてどんなメリットがある

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ブレンドしているのは、コーヒー豆だけはない。

ブレンドしているのは、コーヒー豆だけはない。

教会みたいだ。

はじめてそのカフェに入った瞬間、まっさきにそう思った。キリスト像があるわけではない。ステンドグラスも、燭台だってない。神保町駅から徒歩8分ほどの場所に位置する、千代田区にある都会のカフェだ。おおよそ教会とは不釣り合いな立地と言ってもいいだろう(偏見)。だけど、一歩そのカフェに入ったときから、あの聖なる異界に入り込んだような安堵感を覚えた。

そのカフェは奥に向かって長く伸びていく

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