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すべては紙一重。#読書記録21

『夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録』,  V.E.フランクル (著), 霜山 徳爾 (翻訳), 1985/1/23


 昨夜9時ごろに読み始め、深夜1時に読み終える。読み切る予定じゃなかったのだけれど、まさに没頭して読んだ。

 本書は、ドイツにおける強制収容所の解説と、フランクルによる体験記録が書かれている。

 強制収容所の解説は、身体が想像するのを拒否するような内容ばかり。人間の残虐さを見せつけられた。湧いてきた気持ちは、批判や嫌悪よりも、人間の残虐性への恐怖。
 囚人と、殺していた人々は本当に紙一重だと思った。何が違うのだろうと。ただただ同じ人間の姿が書かれていたように感じた。そして、私はこの人たちとなにが違うのだろうと。一歩違えば、囚人にも、殺す側にもなりうると思った。心から嫌悪感と、のどの奥にわきあがる感情を感じながらも、自分人を殺さない自信なんてないのである。ああ、ほんとうに紙一重。

 それに対し、フランクルの文章からは、人間の精神の美を感じた。強制収容所の体験記録とは思えないほどの、人間の尊厳の美しさが綴られていた。強制収容所という究極の環境にいながらも、精神を保ち続ける姿勢。それは、壮絶な苦しみをも受け入れる崇高さを感じさせるものだった。

 本書は私に、人間と精神について強く訴えてきた。残虐性と美。私たちが生きている世界は、すべてにおいて紙一重なのである。

 また自分の感性に大きなうねりをともなう変化があった。この本に出会えて、いま読むことができたことに感謝。



強制収容所で死を迎えた魂が、自然に、宇宙に還り、輝いていますように。時空を超えて、私の願いが届きますように。




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