羽菜と雄9

お客さんが途切れ、休憩にしていいよと言われて、羽菜は店内の花を一つ一つ見て回っていた。
色を楽しみ、香りを楽しみ、形の違いを観察し。それはもう、楽しそうに花に触れる。
商品なので、本当に触ったりはしないが、心で触れ合っている。

そして、羽菜が目を止めたのは、マーガレットだった。

「…マーガレットって、いいですよね。特別豪華ってわけでもないですけど、心が洗われるっていうか…」

白い可憐な姿を見つめながら、ぽそんとそんな言葉を落とす。
それを聞いていた雄は、羽菜とマーガレットを見つめて、

「…ちょっと、三島に似てるな。」
「……えっ?すみません、何て?」

雄は首を横に振り、それっきり押し黙っていた。

(こんな可愛い花と、私が、似てる…?)

きっと聞き間違いに違いない。羽菜は、そう自分に言い聞かせて、落ち着かない休み時間を過ごした。

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