羽菜と雄2

今日は始業の日と言うことで、あっさりやってきた放課後。
この後は部活動勧誘や委員会活動に充てられることになっている。
美化委員の会議室に向かいながら、羽菜は勇気を振り絞って声を出す。
少し前を行く雄に向かって。

「えと、立花、くん。改めまして…三島です。よろしくお願いします…」

雄は、立ち止まって少し振り返り、軽く目礼した。

「…よろしく。」

………。
落ちる沈黙。二人は再び歩き出した。

(どうしよう、何か喋った方がいいのかな。でも何を…)

羽菜が焦って考えていると、ふわり、目の前を何かが横切った。
顔を上げてみれば、二人は渡り廊下に出た所で、中庭には桜が咲き誇っていた。
ちらちらと、花びらが風に舞っている。

「…うわぁ…!」

それは八重咲きの枝垂桜で、高さはせいぜい人の背丈くらい。
特別立派!と言うわけではないが、やはりこの時期に見る桜は華やいだ気持ちになれる。
思わず歓声を上げて立ち止まった羽菜につられ、雄も足を止める。
不愛想な仏頂面が、桜を見て和らいだのに、羽菜はまだ気づかなかった。

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