卒業制作のこと

卒業制作の提出が終わった。
あれほど年末年始も休めないことを呪っていたのに、
区切りがついてしまうと、途端に祭りの後の虚しさみたいなのが押し寄せてくる。
ゼミの友達がしんどさのあまり鬱と躁を行ったり来たりしてる横で、
私は夜の2時過ぎに帰ってきて寝て起きてまた制作に向かう生活を
呪いつつも楽しんでいたのだと思う。
それで、高校の時の卒制が終わった後のことを思い出した。

高校が美術科だったので高校でも卒業制作があったのだが、
高校の時の卒制が終わったあとも同じような気持ちだった。
アトリエと呼んでるでかい教室で必死に絵を描く日々だった。
卒制の展示が終わった次の日に、
一個下の後輩たちに引き渡すために教室を掃除する時間があって、
みんなは何事もなかったように掃除を進めていた。
掃除が終わった後、自分はでかいイーゼルや作品や雑多な荷物が置いてあったはずのアトリエの白い床をぽつんと眺めていた。

周囲の友達は半分以上は受験が終わっていて、
好きなことしたり大学からの課題に取り組みはじめる。
受験がまだある人は、気持ちを切り替えて試験対策やデッサンに打ち込みはじめる。
厄介払いができて清々したと言わんばかりに、
みんな一斉に未来を向いて、歩き出していくような感じがした。
ちょっと待て、みんな歩き始めるの早すぎやしないか。
自分はまだもう少しだけ、あとちょっとだけ過去を見ていたい。
もう少し話をしよう、こんなことが楽しかったとかよかったとか
苦しかったこともあるけど、というか苦しかったことの方が多かったけどさ
何でみんな、そんなに終わったことを切り捨てるのが上手いんだ?

二度目の卒制が終わって、
私はまたあの空っぽになったアトリエの白い床を見ている。
みんなが前を向いて歩き始める中で一人だけ、何もなくなったアトリエに突っ立っている。

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