深海魚の如く②

前回の①では、私のアモーレKとの出会いの話をした。
その出会いは衝撃的だった。
今まで同性の友達というものに対して、どこか冷めた所があった。
同じ職場の女の子。ただそれだけのKを、私は物凄く好きになり、猛アタックしてかれこれ10数年の仲になる。
その職場をお互いが辞めたあとも付き合いは続き…
私たちは知り合ったばかりの時、毎週末一緒に遊んだり、ただただ座って話す事があった。
しかし週末が終わり「自分の時間」になると、お互いメールもLINEも、それこそ電話もしなかった。
Kのそういう所も私には合っていて、お互い「自分の時間」と「2人の時間」がきっちりしていた。
Kと知り合って数年後、ふとしたことがきっかけで私はイタリアへ行く事となる。
Kは「行ってらっしゃい」と送り出してくれた。
他の友達は「もしかしたらさわちゃん帰ってこないかも」とか言っていたらしい。
私もそのつもりだった。
が、突然の帰国。
心に少しばかりの傷を負って。
帰国後初めて会ったKは、ただ「お帰り。お疲れ!」と言った。
皆が腫れ物に触るような態度で、なのにズケズケと聞かれたくない様な質問する中、Kは私に何も聞かず、ただただ隣で黙って常温のビールを美味しそうに飲んで、酔っ払っていた。
Kに彼氏が出来たと聞き、紹介もしてくれた。
でもドライブや小旅行は何故か3人で行く事も多かった。
運転が好きなKは彼氏を後部座席に座らせ、「さわさん前座って」と、居心地の悪さを感じさせなくしていた。
Kとしてはなにも考えてなかったと思うけど。

別々の仕事を始め、段々会える週末が減ってしまっても、寂しさはなく、でも「楽しい」が減っていくような気がしていた。

Kは色々な習い事に挑戦する人だった。
「習い事始めた。発表会あるから来て」と言われたかと思うと、「違う習い事も始めた。年越しにお寺でやるから見に来て」とか。
そんなKがずっと好き。
その1つでKにとっての1つの出会いがあった。
もちろんKは、その出会いも私に知らせてくれて、その人も紹介してくれた。
結論から言うと、Kはある所にに引越しをした。
前々から「いつかそこに住みたい」と話していた。
そしてKはコロナが少し落ち着いた約1年前、お引越しした。
その選択はあまりにもあっけなくて、だからこそKらしくもあった。
引越し前に会う予定でいたが、会う予定を立てると職場でコロナが出て…会えないままKは引越し。
私は「行ってらっしゃい」とLINEを送った。

会ったばかりの頃は、今までKが居なかった人生ってどんなだったかな?って思い出せないくらいだったのに、実際いなくなってしまっても、人生は続くのだと知った。
そして今年9月。
「仕事で2週間そっちへ帰ります」とKからのLINE。
私は「お互い時間が合ったらご飯でも食べよう」と返す。

本当に何年ぶりかにKとご飯を食べた。

2人が出会って10数年、「アモーレ」として食べに行ったご飯は、10数年前初めて「まだ何も知らない友達」として食べに行ったベトナム料理だった。

そして今日、Kは帰って行った。
最後の日に会うのって野暮ったいかもなと思いつつ、私はどうしてもKに会いたくて。
思い出話なんてせず、最後までお互いの仕事の話や最近あった出来事なんかで笑い合って別れた。
次に会えるのはまた1年後。
また「自分の時間」が始まる。
Kがそばにいなくても、また1年後に何かが起こって会えなかったとしても、深海魚の2人はちゃんと人生を歩んで行く。
そしていつかまた深海魚達は浅瀬に出てきて笑い合うんだろう。

※この記事は1度公開したのですが、色々詳細を書きすぎたので、手直ししてもう一度出しました。


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