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名づけて「助動詞ハンター」(2019年4月14日)

 助動詞の指導には骨が折れます。受験で使うというのであれば話は別ですが、そうでないクラスの場合、どこまでそのように教えるかは常に試行錯誤です。

 数年前に移った学校で、私は念願かなって(?)、受験で古典は使わないけれども、学校の方針として古典を設置しているというクラスを教えています。しかも、古典嫌い、古典苦手という猛者ぞろいのアウェイなクラスでやりがいがあります(笑)。

 そこでとっているのが「助動詞ハンター」という方法です(これは最初にいた学校で考案したもので、10年くらいたった今またリバイバルしています)。

 まず教材研究の段階で作品をよく読み、対象となる助動詞をいくつかピックアップします。他の助動詞については現代語訳の時にその存在を示し、訳との対照をするにとどめますが、ピックアップした助動詞は授業の最初のところで探し出させてしまいます。その時に、その助動詞の意味と活用形に触れてしまいます。

 例えば、今扱っている古今著聞集の「小式部内侍が大江山の歌のこと」であれば、過去の助動詞「けり」と完了の助動詞「ぬ」「たり」だけに絞りました。ます、けりが8つ、「ぬ」が3つ、「たり」が1つあるので探し出してみようと言って時間を与えます。その後、順番に生徒をあてて、見つけ出した助動詞をできるだけ出てくる順に拾い上げて板書で示します。

 その際、間違いも積極的に活用できます。「遠ければ」の「けれ」はものの状態や様子を表す形容詞の一部であること、助詞の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形とはまったく違う使われ方をしていることなどがわかります。期せずして、識別の学習にもつながっていきます。

 探し出してしばらく時間が経った時はヒントも出します。「けり」はそっくりさんがいるから気をつけてね、とか、完了と過去の助動詞は仲良しさんだよ、というものです。

 ピックアップする助動詞をどれにするかが肝ですが、教えたい助動詞を先にして、作品を教科書から選びだしていくこともありだと思います。ちなみに、ずいぶん前に論文を教えていただきその論文をどこにやってしまったか忘れていまったのですが、代表的な古典作品に頻出する助動詞の調査研究が参考になりました。経験がおありの先生ならばそれで検討もつくと思いますが、打消「ず」、推量・意志「む」、断定「なり」、推量「べし」、過去「き」「けり」、完了「つ」「ぬ」「たり」「り」の出現率は高いので、学習の優先順位をつけるならばそこからでいいだろうというものです(「る」「らる」、「す」「さす」や「ごとし」などについていえば、現代語にも名残りがあるので比較的教えやすくありますね)。

 東京書籍の「新精選 古典文法」は上記を意識して編集しているということを監修された先生から伺ってもいます。

国語 標準教材 | 令和5年度用高等学校教科書・シラバス | 東京書籍 (tokyo-shoseki.co.jp)

 バリエーションのある推量・推定の助動詞などは、逆にすべての解説・現代語訳が終わった後で、特に「注意すべき助動詞」などとして取り出したりして効果のあったこともあります。

 学校の方針もありますが、学校のカリキュラムや生徒たちの実態に沿って、授業をつくり出していくヒントになればと思います。


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