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久しぶりに漫画(2014年6月8日)

 ここ数か月の間に久しぶりに何冊か漫画を購入しました。…とは言っても、最近は漫画もジャンルがおそろしく拡大していて、気づけば、継続的に購入している漫画は歴史や古典に関係するものばかりになっていました。
 さて、購入した漫画は以下の通りです。

① 山田芳裕『へうげもの』(講談社) ※『モーニング』連載中
 戦国武将・古田織部(ふるたおりべ)が主人公です。数年前にNHKでもアニメ放映がされていました。

*NHKアニメワールド「へうげもの」

 「へうげ」とは、「ひょうげ」です。「ふざけおどけること。また、その人」(広辞苑)の意味です。
 刀や槍、鉄砲を用いた実際の合戦と並行してあったであろう、武将たちの精神世界における戦いをリアルに描いていてとても興味深い作品です。骨太の画風も個人的には好きです。どの武将(千利休や茶々を含む)も個性的でいいのですが、「へうげ」を愛する織部への作者の眼差しがやはり気になります。織部についての本も読んだ私は、織部の最期を知っているので(どこかで切なさを覚えつつも)、よけいに彼の全力ぶりに対して、大笑いしてしまいます。
 ブームを狙ってなのでしょうが、数年前に東京の国立博物館の常設展示で「織部好み」の歪んだ器が展示されていた時は、器が放つ織部の人柄がしのばれて、しばらくその場にたたずみました。
 私はこの作品を読まなければ古田織部を知ることもなかったと思います。たかが漫画、されど漫画、山田芳裕氏の卓眼に敬服します。この作品のエピソードを、「名づけの魔力」(評論)で必ず出してもいます(評論の方は、いずれメルマガの方で紹介できればと思います)。


② 杉田圭『うた恋い。』(メディアファクトリー)
 こちらは以前、本ブログでも話題にした漫画です。『へうげもの』と同じく、アニメも放映されていました。

*「超訳百人一首 うた恋い。」公式サイト

 藤原定家を案内役として、フィクションを交えながら、百人一首のそれぞれの歌の背景が紹介されています。最新刊4巻はDMが届いたにも関わらず、発売直前に本屋に予約しても購入できず(しかも再版の予定立たずとかで…)、やっと店頭で見つけたものを購入しました。
 先日も授業で『竹取物語』を勉強した時に、藤原氏以前の有力貴族の話題になりましたが、冒頭と結末で定家がそのことに触れているシーン・コラムがあり、自分としては“タイムリー!”と思いました。


➂『聖(セイント)☆おにいさん』(講談社) ※『月刊モーニングTwo』連載中
 日本の古典や歴史に拠る作品ではありませんが、キリストとブッタが日本の立川で生活するという奇天烈な設定の漫画です。聖書や仏典の元ネタを知っているとかなり笑えます(フランスで大人気だという話を聞いたこともあります)。
 最新刊の10巻で何度読んでも笑ってしまうのが、マリア様がイエスに涙ながら訴えた出産の思い出です。

 マリア「忘れもしない今日みたいな寒い夜に…どこの宿もあいてなくて…まさかの馬小屋で出産だったのよ…」「しかも生んだその日のグッタリしてる時に…知らないおじさんが3人も訪ねてきて…ふつう身内以外は遠慮するわよね!? 発言小町で訊いても皆おかしいって言ってたわ!!」

 「三人のおじさん」は、イエスを祝福に来た「東方の三博士(三賢者)」なのに、「発言小町」は、現在の読売新聞主催の女性向け情報サイト「大手小町」内の掲示板(投稿で意見を交わします)です。このギャップがおかしいのですが、知らないとそのままになってしまうという、かなりの知的レベルを要求される漫画でもあります(実は私自身、見過ごしているネタも多いのかもしれませんが…。キリスト教の学校に通った後に、中世日本文学や鎌倉仏教を勉強してよかったと、この漫画を読むたびにつくづく思ったりします)。
 聖書や仏典に基づくシーンについて、何が面白いのかを子どもたち自身が疑問に思ってくれると嬉しいですね。私たちがすらっとそれに答えられたり、ヒントを与えて調べたりさせられたら楽しいものです。


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