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おすすめの古典――『徒然草』①(2018年3月25日)

 先に私はメルマガを発行していたことをお知らせしました(2018年1月5日「メルマガに関するお詫びと真実」)が、廃刊にともないその内容がまったく閲覧できなくなりました。よって、廃刊にしたメルマガの中で、もう一度みなさんにも読んでほしいと思う情報を本ブログにて再録したいと思います。

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 発行人が、古文で二番目に好きなのが『徒然草』です(一番好きな作品はかなりマニアックなものであるため、ここではとりあげられるかわかりません(苦笑))。

 『徒然草』は有名すぎて拍子抜けかもしれません。歯切れの良い文体で、文法的にはそれほど苦労なく読めるかもしれませんが、実は内容的になかなか手ごわい作品です。なぜなら、兼好を筆頭に曲者がたくさん登場するからです。しかし、それがおもしろい…。特に、第百五十二段~第百五十四段に登場する日野資朝がヤバい!

 実はこの資朝のヤバさ をかなり的確に表現しているのが、バロン吉元のマンガ日本の古典[17]『徒然草』(中央公論社/1996年8月、現在は中公文庫で購入可能)です。バロン氏は「あとがき」で、マンガを描くにあたって「『徒然草』のテーマが明確に絞られてこないし」、「吉田兼好のキャラクターもはっきり浮かんでこない」ので困ったとあります。しかしながら、初めて後醍醐天皇の存在を意識した時に、「『徒然草』はまさに後醍醐天皇とその治世に対する批判ではないか、それですべてが貫かれているのではないか、と思いあたった」そうです。バロン氏の『徒然草』は、揺らぐ時代の価値観と兼好の一貫した「保守的リベラリスト」の視点を見事に描き切った、秀逸な『徒然草』入門書かつ斬新な解釈を施した作品となっています。

 ちなみに資朝は、婆裟羅の帝王・後醍醐天皇の寵臣です。鎌倉末期の価値観の大きな転換の中で、これまでの人間としてあるべき〝型〟からは外れた、怪しいまでの個性の輝きを放った一人なのだと思います。
 この価値の転換ということについては、次のメルマガで触れてみようかと思います。
 ――『徒然草』しばらく続きそうです。


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