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語彙を増やし、語彙力を高める、そしてその重要性②(2020年5月10日)

 "高校生の「探究的な学習活動」への取り組みは「語彙力」の高さに影響”

 ――これは、ベネッセコーポレーションが2016年から実施している全国の高校生から社会人までを対象とした「現代人の語彙に関する調査」の結果分析によるものです。

 ※回答者は3,000人。辞書語彙230語、新聞語彙220語を選定、各回答者が「知っている」と答えた語の割合を「語彙力」としています。詳しくは「現代人の語彙に関する調査(下記リンク)をご確認ください。

 まず、学校で探究的な取り組み(自分で課題を立てて情報を集めて整理して、調べたことを発表する)を行っている高校生は、調査対象の半数であったということですが、そのような学習活動に取り組んでいる高校生の「語彙力」(500人、55.2%)は、取り組んでいない高校生の「語彙力」(500人、43.9%)よりも高いという結果が出ています。

 さらに、「探究的な学習活動」を4つのステップに分けて「語彙力」を見たところ、「すべてしている」高校生の「語彙力」(277人、60.5%)は、「一部している」高校生の「語彙力」(223人、48.5%)よりも12.0ポイント高く、下記の4ステップの取り組みが、高校生の「語彙力」を高める可能性があるとしています。

 「探究的な学習活動」の4ステップ

 ①自分の関心に合ったテーマや課題を設定する
 ②どのように調べればいいかを考え、インターネットや書籍などで必要な情報を集める
 ③集めた情報を分析し、整理する
 ④調べたことや自分の考えを、図表や文章でまとめたり、発表したりする

 私としては、②で大きく差がついていることが気になります。

 「する」(445人、57.1%)に対して、「しない」(55人、39.8%)という結果は、「語彙力」のポイントの差以上に、「する」生徒と「しない」生徒との人数の差の大きさが他の3ステップよりもはるかに大きいのです(他の3ステップの「する」は平均384人、「しない」は平均116人です)。

 おそらく、「どのように調べればいいかを考え」の段階で「わからない」「難しい」というハードルがあり、「インターネットや書籍などで必要な情報を集める」の段階で「わからない」「難しい」に加えて「面倒くさい」というハードルがあるのだと思います。

 ②のステップでの困難のある学校、生徒に関しては、以下のような働きかけが必要と考えます。

(1)探究的な学習活動の課題として与える内容(興味・関心を持つことのできるテーマの設定)
(2)どのように調べるかの具体的方法を提示(端末のない学校などは、ルールを決めてスマートフォンの授業での使用を許可する等の工夫)
(3)どこまでの取り組みを合格ラインとするかの線引き(一方的に与えるのではなく、課題の意義を伝え、生徒と一緒に合格ラインを決める)

 学校教育が主体的な学びに移行していく中で、これまで以上に格差の広がる可能性も指摘されています。
 すべての子供たちが、将来それぞれが社会生活を営むであろう場に必要な「語彙力」を身につけるために、必要なスキルと経験を積み重ねていくことができてほしいと思っています。(つづく)

【追記】
 先日ネットで、「娘(小4)に漫画のドラえもんを大量に読ませたら通信教材の国語の点数が2ヶ月くらいで爆上がりした」――といった記事を読みました。確かに、『ドラえもん』の作者の藤子不二雄さんがセリフで書き込んでいる日本語は崩れていませんし(ドラえもんやのび太くんはとても丁寧な言葉遣いです)、読み進めるのに理科や社会の知識も必要です。私自身も小学校の時に『サザエさん』の原作を読んで、「堀口大学」がわからなくてオチがわからないので、親に聞きたことを思い出します。
 我々大人がやはり主体性を持って、――子どもにどのような「語彙力」をつけてほしいか、どのようなことを学び、どのように生きてほしいかといった「軸」を持って――子どもたちの学びに関わっていきたいものだと感じました。


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 なお、他者への共感や、自己の置かれた状況を理解し、受け入れ、歩を前に進めるための「ことば」の役割については、本ブログの4月5日の記事で自らの考えを述べました。

 ※Youtubeで動画にもまとめています。参考にしていただければ幸いです。


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