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実はわかってません(2018年5月6日)

 先日、高校1年生の古典の授業で「元服」という言葉を説明の中に何の気なしに用いたところ《元服って何ですか?》という質問が出ました。――危ない、危ない。私は昭和40年代生まれ。自分が中高生の頃は、『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』などの時代劇も人気番組で、友だちとの学校での会話にもそうした内容が普通に出た世代です。「元服」などは、ほぼ常識の範疇の用語として知っている世代です。
 しかし、現代っ子は違います。大河ドラマの視聴率の凋落もいちじるしく(『西郷どん』など大河ドラマのシーンを話題にしても、ほとんどの生徒が見ていなかった……)、私たち世代が当然知っているだろうと思うもの(もっと言えば、当たり前すぎてそんな考えにも及ばないもの)を、知らない可能性が高いことは常に頭の片隅に置いておくべきだと痛感しました。
 そういう意味では、質問が出るのは本当にありがたいことです。
 昨年度は、高校2年生の授業で「浮舟」を扱った際に、《恋愛とかのいざこざから逃げるのになぜ出家するんですか》という質問が出ました。寺院の持つアジール的な存在意義、出家をすれば仏弟子となって世俗からは隔絶した生活を送る(男女の色恋などもってのほか)という原理原則、そこからの説明が必要だったのです。しかしこれも、質問が出て本当に良かったです。生徒たちがそれだけ熱心に授業を受けて、素直な気持ちを持っていたから気づけたことだと感謝しています。
 昭和世代の先生方が私のように注意をしなければいけないのはもちろんですが、若い世代の先生方の中で、古典に対して苦手意識や面白くないという思いがあるとすれば、今授業を受けている生徒たちと同じところでつまずきがあるのかもしれません。恥ずかしがらずに先輩の先生方に聞いてみてほしいですし、どんどん勉強してほしいと思います。
 今回は「元服」「出家」 だけでしたが、今後も授業をしていて気づいたことがあれば、このブログで採り上げたいと思います。

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