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カフェ活

ぜってえ俺のこと好きだろと思われる店員のいるカフェに朝昼晩と通い、彼女は彼女で俺が来るのを楽しみにしている様子、店に入るなり「いつもの」カフェを既に用意して待っているほど、もうどれだけ俺のこと知ってんだよ、俺のこと詳し過ぎだろと仕事の合間を縫ってはそこに入り浸っていたのだが、そんな彼女がお話があるんですとカウンターから出てきて店の端へと連れて行かれ、おいおいおいまじかよ、ついにきたかよこんな店の中でと、これが人生初の「女子から告白」になるだろうとあふあふしてしていると、「お世話になりました、来週から産休に入るんです」と俺のことが好きどころか彼氏をすっ飛ばして結婚していて子供までできたという報告、これ以上ない勘違いと恥ずかしさで平静を装おうとするも顔面がねじ曲がってまともに喋れそうもなく、「おめへほ!」と言って店を飛び出してしまったのだが、だからといってそのカフェに行かなくなるのは更にカッコ悪すぎ、彼女が産休に入るまでの我慢だと地獄のカフェタイムを経てやっと産休に入ると、かねてから俺の様子をチラ見していた店長がちゃんと俺のメニューを覚えていてくれて、そうだよ、俺はコーヒーを飲み来てんだよ、女目当てなんかじゃねえよと彼と仲良くなったところで、「そういえば、産休入っちゃ子、なんか思わせぶりな子でしたねえ」と、ここで男同士、軽口叩いて一発笑い話に昇華させようとしたが、まさかの店長が、「その節は妻がお世話になりました」と頭を下げるので、結局、その店には行けなくなってしまった。

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