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#SaveOurVoice - 山形県 酒田hope (ライブハウス)【前編】「沢山の人を巻き込めるようなものを作って全体を繋げていく」

Speaker : 酒井健太(酒田hope / FRIDAYZ)
Interview & Text : Nozomi Nobody

※このインタビューは2020年7月10日に収録したものです。

新型コロナウイルス感染拡大の影響

ーー最近はどんな感じですか?

ライブハウスの状況はやっぱり厳しくて、4月からデザインの仕事に切り替えて今自分に出来ることをやってる感じですね。箱としてはレコーディングやスタジオ営業の稼働はしています。他には6月の末に一度FRIDAYZ(酒井さんがヴォーカルを務めるバンド)で配信ライブをやりました。

ーー3月まではイベントはやってたんですか?

2月くらいから少しずつ「どうしようか」みたいな雰囲気になってきて、マスクを着けたりウイルス対策をしながら営業をしてたんですけど、3月にライブハウスでのクラスターの報道が出てから「イベントを止めて欲しい」っていう電話が来るようになりました。それでも主催の方と相談してやれるイベントはやってたんですけど、ツアー系のイベントや年齢層の幅が広いイベントはやっぱりキャンセルになって、3月のスケジュールの半分くらいは飛んじゃいましたね。

|誰のお店で買うかとか、誰が作ってくれたものを食べるのかとか、誰に髪を切ってもらいたいとか|

ーー4~6月はどういう営業をしてたんですか。

4月からは完全にデザインの仕事に切り替えてました。自分の仕事やhopeの維持にも繋がって、かつ街の人を元気付けられてサポートできるようなことはないかなと思って、似顔絵のシールを作り始めました。地元のお店もテイクアウトとかオンライン化が急激に増えていって、でもそうなってくるとやっぱり価格だけが主体になっていくというか、作ってる人とか売ってる人の顔が見えないなと思ったんですよね。ものを買う時に価格も大事だけど、誰のお店で買うかとか、誰が作ってくれたものを食べるのかとか、誰に髪を切ってもらいたいとか。そういう大事な部分が失われていくのが怖い気がして。地方は特にそういう部分で成り立っているところも大きいと思うので。

それで街のお店の人の似顔絵を描いてステッカーにして、テイクアウトやオンラインの発送の際のおまけに付けてもらえたら、そこにちゃんと顔が浮かぶんじゃないかなと思って。なるべく広がるように価格も限界まで下げて、地元の人を中心に4月はひたすら似顔絵描いて投稿してました。そうしたら小さい街なんで少しずつ話題になって、県内ニュースで取り上げてもらったりもしました。

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酒井さんは酒田の街を盛り上げサポートするために #ソックリマン と題し、地元の飲食店の方などを中心に似顔絵シールを作成している。

|「普通の人間がやってるんだよ」っていうことをわかってほしい|

世間でライブハウスに対する間違ったイメージが広まってしまっている気もしていたので、ライブハウスはある意味特殊な場所ではあるけど、「みんなと同じようにこの街で暮らしている普通の人間がやってるんだよ」っていうことをわかってほしくて積極的にテレビやメディアの取材も受けました。そこから少しずつ応援してくれる人が増えてきて、今度は深夜番組の天気予報の枠をhopeで使いませんかという話を頂きました。それで6月は毎日週替わりで地元バンドのMVを流してもらいました。ライブとかイベントが出来ない分、どうやって地元の音楽を届けられるか考えていたところだったので、サポートしていただいた局の方にも本当に感謝しています。

配信ライブの手応えと課題

5月半ばに山形の緊急事態宣言が解けて、その翌日からFRIDAYZのレコーディングに入って2曲レコーディングしました。6月からの天気予報の放送に向けてちょうど動いてるところだったので、その放送でまずできる限り県内の人に酒田hopeや地元のバンドやFRIDAYZを知ってもらう活動をして、そのひとつのゴールとして無料ライブをYouTubeで生配信しました。その際に投げ銭の代わりにFRIDAYZの新しいCDを用意して、その売り上げが配信ライブの経費だったり、hopeや取り扱ってくれてる地元や県外のお世話になっている店舗に渡ればいいなと考えました。

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緊急事態宣言が解除された5月18日から酒田hopeにてレコーディングされたFRIDAYZ/酒田hope DONATION EP「帰路EP」。制作費を除いた売り上げの全額が、酒田hopeやEP取扱店の支援金になる取り組み。

ーー配信ライブの手応えはどうでした?

いい反応をもらえましたね。視聴する側の電波環境の問題など課題はありましたけど。配信ライブに向けて県内の地上波にも出て盛り上げていったっていうのもあるんですけど、似顔絵を描いて新しく出会えた人や、お子さんがいて今はなかなかライブハウスには来られない人、20年前に自分のライブ観てくれてた人が天気予報で「まだやってんだ」って思い出して観てくれたり、いろんな角度の人に観て頂いて、広がりをすごく感じました。やっぱり普段ライブハウスには来ないような層からの反応があったのでそこはすごく良かったですね。ただ配信ライブってやっぱりめちゃくちゃお金かかるじゃないですか。

ーーそうですよね。機材は自分達で揃えたんですか?

最初それも考えたんですけど、地元のバンドでオリジナルやってるバンドって多くて15組とかなんですよ。その中で今仕事の制限がなく堂々とライブができるバンドは本当数バンドしかいなくて。それで数十万かけて機材を買い揃えるっていうのは中々踏ん切りがつかなかったので、地元の仲良くしてもらってる映像会社さんにお願いしました。でもやっぱり地方だと収益化するのって(都心よりも)さらに難しいのかなっていうのも思っていて…今有料で配信出来るプラットフォームっていくつかあるじゃないですか。でもそういう(馴染みのない)サイトで有料で配信やりますって言ってもまず見る人いないんじゃないかなっていう気がしていて。となるとやっぱりYouTubeしかないんですけど、YouTubeだと収益化はすごいハードルが高くて、でも投げ銭っていう文化自体もまだそんなに地方では浸透していないような気もしていて。

6月20日に酒田hopeで行われたFRIDAYZ無観客配信ライブ

|より多くの人を巻き込み全体を繋げていく|

8月2日に2回目の配信ライブを企画していて、それは配信ライブというかテレビの音楽番組みたいな方向にしようかなと思っています。地元のバンドに何組か出演してもらって、インタビューやコメントは生で放送して、演奏シーンは当日の日中に収録したものを流して。地元のラジオをやっている友達にMCを担当してもらって、エンタメや笑いの要素も詰め込みつつ。

オンラインショップでスポンサーを募って、番組の最後に提供読みをしたりその会社のロゴを入れたりしたいんです。例えばひと企業5千円とか3千円とか、個人名だったら千円とか、名前は読まなくてもいいけど応援しますっていう人には投げ銭をして頂くような形にして、それで配信の経費をペイできるようになればいいなと思って今動いてるところです。

これがもし軌道に乗るようだったら間に地元の企業のCMを挟んだりとか。そういうことが出来るようになったらコロナが終息したあとも地元の企業のPRと地元の音楽を絡められるような企画ができればいいなと思って動いてますね。人との距離が近い地方だから出来る可能性というか。あとはどこまで当日ふざけるか今悩んでます(笑)

ーーめっちゃ面白そう。hopeらしさが出ていて良いアイディアですね。

今サポートして頂いているいわゆる音楽好きの人だけを頼り続けてしまうとどうしても負担が大きかったり厳しい状況は続くと思うので、もっと沢山の人を巻き込めるようなものを作っていかなきゃいけないなと思ってます。例えば似顔絵で出会った人がhopeの音楽番組のスポンサーになってくれて、番組でそのお店のものを紹介して、それを見た人がお店で買い物していくれるとか、そうやって全体が繋がっていけば理想なんですけど、一つずつ丁寧にやっていきます。

|新しい人に出会うことと今まで出会った人に覚えていてもらうこと|

ーーうん、それはすごく理想的。あと配信は配信の良さがありますけど、やっぱり生は生だよなっていうところもあるじゃないですか。

それは絶対ありますね。生でやりたいですね。自分らみたいなバンドは特に濃厚接触ありきのバンドなんで。だから配信はまったく別物として考えていて、配信では普段ライブハウスと距離があるような新しい層に向けてやれることに振り切ってやりたいって思ってます。配信をキッカケにして、営業再開したときにライブに来てくれる人が増えるような状況になるのが理想ですよね。コロナがある程度落ち着いても、仕事の都合で来れなくなる人とかこの期間に離れちゃう人とかっていうのは絶対出てくるし、元々100だったポテンシャルが50とか70からのスタートになって、さらに融資を頂いてる分の返済とか経費がかかってくるわけじゃないですか。なので、今振り切って新しい人に出会えることと、今まで出会った人にもいかに離れないで覚えていてもらえるかっていうことをやってますね。

▶︎後編へつづく

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