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#SaveOurVoice - 山形県 酒田hope (ライブハウス)【後編】「ライブハウスがより生活に根差した場所として認知される未来があったらいい」

Speaker : 酒井健太(酒田hope / FRIDAYZ)
Interview & Text : Nozomi Nobody

※このインタビューは2020年7月10日に収録したものです。

▶︎前編はこちら

営業再開への見通し

ーー営業再開はいつ頃の予定なんですか?

一番近いところだと9月の中旬にLAUGHIN' NOSEとFRIDAYZのツーマンが決まっていて、それは人数制限でやろうと思ってます。チャンスがあればそれより先にアコースティックとかで再開するかもしれないですけど。あとライブハウスが状況的に難しいなら野外でやれないかなと思って今行政で貸して頂ける場所を探しています。スキー場とか広いところで、立派なステージはなくても最小限の機材を入れて入場無料で県内の人のみっていう形ででもやれれば。

ーー箱として再開するときはどういう形を想定してますか?

hopeのキャパが150人なので、現状9月はその1/3、50人で、県内の方のみでやろうと思ってます。国のガイドラインの(対人距離)2mっていうのは流石に難しいのでキャパの1/3っていう方向で、まずは日程や出演者の告知を先にして、感染状況をみながらチケットの販売枚数を決めて直前に販売するっていう形にしようかなって今思ってるんですけど。あとは延期になってたイベントも11月くらいから振替で入ってきたので、それをどういう形でやるのかはイベント会社さんと相談中ですね。

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2018年6月、酒田hopeで行われたFRIDAYZのライブ

|会社で「ライブハウス禁止」|

ーーじゃぁ年内中にだいぶ戻ってきたらいいなっていう感じですね。

そうですね。まずは融資もありますし、元々デザインの仕事とか物販作る仕事も並行してやっていたので、幸い今すぐにhopeが無くなるってことにはならないとは思うので、感染状況など様子を見ながらですね。今はやれること全部ぶっ込んでやって、定期的に配信ライブをやっていって、ここぞっていうイベントの日には出来る限り人数制限でもやっていきたいなと思ってます。あとは実際営業再開したときに周りからどういう反応がくるかですよね。やっぱり今、会社で「ライブハウス禁止」っていうのも結構多いんですよね。

ーーやっぱりそれあるんですね…でもそれ言われちゃうと厳しいですよね。けっこう広い範囲で「ライブハウスには行くな」っていう風になってるんですか?

割と多いですね。こっちはやっぱりそんなにたくさんの業種の仕事がある訳ではないので。大きい工場とか大手の関連会社とか、何千人って働いてる工場地帯があって、そこから感染者出てしまったりした経緯もあるので。

|なんでライブハウスだけこんな時が止まったみたいになってるんだろう|

ーーでも例えば飲食店で対面で喋りながらご飯食べてるのと、ライブハウスでみんな同じ方向向いてマスクして静かに観てるのとどっちのリスクが高いかと言ったら答えは明白なわけじゃないですか。

100%思うっす。

ーーだからそういうガイドラインの出し方とか、行政がどういう風にライブハウスっていうものを扱うかとか、そういう世の中の根拠のない雰囲気みたいなものによってすごく追い詰められてる現状があるわけですよね。その辺りをクリアにしてくことが必要だなと思ってるんですけど。

やっぱり今のガイドラインを全部守ったら営業出来ないと思うんですよね。(お客さん同士の距離を)1mっていう距離にするのか、相手と体が触れ合わないっていう距離にするのか、その表現の違いでやれることが全然変わってくると思うのでその辺りを明確にしていくのが大事かなって思います。営業するにも選択肢がないとどうしたって無理だと思うので。

5月の後半からこっちのお店も少しずつ動きはじめて、勿論それ自体は自分にとってもすごく嬉しい事なんですけど。ただそうやって街が少しずつ日常を取り戻し始めている中で「なんでライブハウスだけこんな時が止まったみたいになってるんだろう」って置いて行かれてる感じがしてすごい抉られたんですよね。3月から更新されない店のポスターを眺めながらどうしようもない気持ちになる瞬間があるというか。なのでやっぱりその辺りのガイドラインをしっかりしてもらいたいですよね。

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酒井さんが主催する山形のDIYフェス〈YAMAGATA MUSIC FES. DO IT 2018」

ライブハウスは飲食店なのか

ーーガイドライン以外にも、メディアのあり方とか国の支援のこととか、問題だったり課題に感じていることはありますか?

ライブハウスも基本的には飲食店じゃないですか。その認知度がないなっていうことは感じました。4月に融資の相談に行った時に、銀行の人はすごく良くしてくれて動いてくれるんですけど、最後の保証協会の申請がなかなかおりなくて。最初ライブハウスで申請を出したら、ライブハウスである証明をしてくれと言われて、でもライブハウスの営業許可が特別にある訳じゃないので。だから飲食店で出すしかなくて、そうしたら今度はバーだと保証が下りないって言われて、食品衛生許可書以外にも飲食店である証明が必要だと。

そこからhopeで出した打ち上げの料理の写真をめちゃくちゃ集めて普段どんだけ料理出してるかってことを証明して、2か月くらいかかって最終的に飲食店でやっとこの間融資が下りたんですけど。ライブハウスは飲食店でもあるのに、証明も出来ないライブハウスだからと営業を止められて、でも飲食店だって言えばライブハウスは飲食店じゃないって言われるし、何なんだろうなっていう…ライブハウスっていう営業許可は日本にはない訳で。

日本ではライブハウス特有の営業許可というものは存在せず、飲食店、特定遊興飲食店、興行場などの各種営業形態にて営業を行っている場合が多い。

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酒田hopeのバースペース

|こういう場所が「街にちゃんと存在してる」|

ーーそうですよね。国からの助成に関しても、ライブハウスはどこの枠組みからも漏れてしまっているようなところがありますよね。ライブハウスはそれぞれがそれぞれの形でやってきたもので、それが良さだしそういう文化だっていうこともあるとは思うんですけど、ただ今回のようなことがあった時にずっとこのままでいいのかってすごく考えるところがあるというか。今回のことをきっかけに今までライブハウスっていうものが世間からどういう風に見られていたかっていうことがわかってきて、だから今後「ライブハウスはどういう場所なのか」っていうことを広めていくこととか、何かしら良い方向に動いていける可能性もあるんじゃないかなっていうことは希望としても思ってはいるんですけど…そういうことも含めて今後どういう風になっていったらいいとか、どういうことが必要とか、何かありますか?

そうですね。まずhopeとしては、やっぱりもっと色んな層の人と繋がって色んな層の人が集まれる場所として認知されることが大事だなと思ってます。やってることを今まで以上に発信して、音楽だけじゃなくて飲食店もやってるし、デザインもやってるし、こういう場所が「街にちゃんと存在してる」っていうことを知ってもらう必要があるなっていう感じがしてますね。イベントが再開出来るようになっても実際の本数自体はすごい減ると思うので、減った分を別の視点から補っていかないといけないと思っていて、例えばすごい極端なこと言ったら似顔絵のシールの交換会とか。

ーーあはは。めっちゃいい。

うちでしか多分やれないことだと思うし、街で100〜200人の人を描いたんで、それを名刺交換みたいにして交換して集めていったら、その人のお店にも行ってくれるようになんじゃないかなと思ってて。今だからこそもっと密につながっていきたいです。

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酒井さんは酒田の街を盛り上げサポートするために #ソックリマン と題し、地元の飲食店の方などを中心に似顔絵シールを作成している。

|ライブハウスがより生活に根差した場所としてまず認知される未来|

ーーいいですね、スタンプラリーみたいな。

そうですそうです。そういうところで拡がっていけば、例えば会議で使いたいとか、CMを撮りたいとか、音も出せて色んなことをやれる場所として街の人にも使ってもらえる要素を増やしていけたらいいなと思っていて。特に地方だと今、人と繋がることでやれることは増えるんじゃないかとは思って、例えばいわきSONICは今度駐車場のスペースでビアガーデンするみたいなんですけど、そうやってライブ以外でも人と集まってコミュニケーション取れる場所として認知してもらえれば、結果それがライブのイベントの日にも集客に繋がるのかなと思うんですよ。ライブハウスがより生活に根差した場所としてまず認知される未来があったらいいなと思ってます。

|色んな人が来れる場所っていう可能性を追及したい|

今(ライブハウスに対して)色んなイメージがある中でも、行きたい人は絶対に行きたいし、再開したときにもっと友達を誘いやすい場所になっていれば爆発できるんじゃないかなと思うんです。個人的には「ダンプカーがライブハウスに来た」みたいなアングラな箱が元々好きで憧れてたんですけど、実際この期間にどれだけ人に支えられてるかっていうのも本当身に染みて実感したんで、色んな人が来れる場所っていう可能性は追及したいなと思ってます。hopeのオンラインショップも地元の方だけに限らず県外からも沢山注文を頂いて、いざ注文書の名前見てみると前にツアーで来てくれたバンドだったりするんですよね。本当に助けられてます。

だからそういう人たちが帰ってこれる場所としてもちゃんと残せるようにっていうのと、やっぱりこちらもただサポートしてもらっているだけでいいのかなっていうのもあって、それで自分も何か負荷かけようと思ってとにかく今似顔絵を描いてるんですよね。ただ支援してもらってるっていうのがどうしても納得いかないっていうか受け入れきれないっていう気持ちもあって、なので自分もとにかくやれる仕事をしようっていうスタンスで、それで誰かが喜ぶんであればさらにいいなと思って、それで似顔絵っていう謎の選択肢なんですけど(笑)

ーーいやめっちゃいいと思います。

やっと慣れてきましたね、自分でソックリマンとか言って(笑)

ーーあはは。じゃぁ最後に今後に向けて一言お願いします。
 
今まで出会った人が全員再会できる場所としてこの街にhopeを残していこうと思っています。だからそれまで皆さんライブハウスや音楽を生活の側に置いておいてください。必ず音が鳴って再会できる日は来るので、それまで生活に音楽を。ちゃんとそのスペース・場所を残しておいてもらえたら嬉しいです。

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