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漫才の台本『本気の教師』

ボケ→ボ
ツッコミ→ツ

ボ:いやあ、先生なりたいわー
ツ:お前みたいなもんが子どもにモノ教えられるんか。先生って大変やで
ボ:余裕余裕。だっておれ良い先生なりたくて、そのために人生経験つみたくて、いま漫才やってるから
ツ:遠回りし過ぎちゃう?
ボ:いや考えてみ。教師は公務員やん。この予測不可能な時代にあって、唯一の安定的職業やで。それが今や少子化の影響を受けて、先生のポストも減っていってる。競争率が年々高まる中で採用されるには、志望動機ならびに過去の経験はトリッキーな方がええやろが
ツ:たしかに
ボ:採用されたって、まだ油断できへん。2020年、ネットも5Gが登場して、ますます動画の時代やって言われてる。授業のめちゃくちゃ上手い、たった一人の先生の動画で、何十万人の生徒の需要がカバーされる戦国時代や。そこで生き抜くためには漫才で培った話術はひとつ確かな拠り所となるやろがい!
ツ:説得力が段違いやん。お前教師向いてるわ
ボ:せやろ
ツ:わかった。俺、生徒やるから、お前先生やって
ボ:え?
ツ:え?
ボ:お前みたいなもんが人様から、モノ教われんのか?
ツ:それは教われるやろ。生徒側に何を求めてんねん

ボ:夏休みの宿題回収するでー。ん、おい小山、なんで宿題やってきてないんや?え、昨日[ツッコミの名前]に答え借りようと頼んだら断られた?なんで断ったんや?
ツ:や、だって先生。本当の友達なら、ズルを手伝うなんてダメやんか
ボ:本当の友達って、宿題がどうとか小さいことでは決まらんと先生は思う。努力できへんヤツだって見捨てたらあかんとちゃうか?
ツ:己は強くあれ、されど人に優しくあれ。ってこと教えてくれてるー

ボ:ほな2時間目いくで

ボ:はーい、こないだの数学のテスト返すでー。名前呼ばれたら、取りに来ることー。新井、笹島、山本、[ツッコミの名前]
ツ:(プリントを受け取って)あれ、先生、採点がおかしい
ボ:どうした?
ツ:【1番】の答え合ってるのに△、【2番】は間違ってるのに△、僕の答案用紙、△ばっかりや
ボ:お前な、世の中、△なことばっかやぞ。○×つけられへんことばっかやぞ!
ツ:グレーゾーンの大切さに斬り込んでるやん

ボ:つぎ、3時間目いくで

ボ:はーい、合唱コンクール近いから、しっかり練習しよな(指揮棒を振り始める)

♪ たとえば君が傷ついて~くじけそうに~ Believe/ビリーブ(作詞・作曲:杉本竜一)

ツ:先生、小山君と足立君がうるさくて、歌に集中できへん。注意してや
ボ:間違ってるんは、お前の方や。小山と足立の会話ちゃんと聞いとけ
ツ:なんでなん。合唱と関係ない、しょうもないことばっかり喋ってるやんか
ボ:いずれお前らも卒業するねん。そしたら二度とこのクラスの全員が揃うことはない。合唱曲はYouTubeで聴き直せても、こいつらのくだらん馬鹿話はもう一生聞かれへんねんぞ
ツ:未来ベースで考えてくれてる
ボ:人生っていうもんはな。雑音の塊や!
ツ:深みのある名言も忘れてへん
ボ:人から言われたとおり歌うだけって、お前らは初音ミクか?
ツ:人間とは何か、本質を問いかけてきてるやん。AI時代の教育も任せられる

ツ:4時間目もお願いな
ボ:(ツッコミに向かってドヤ顔で指差す←お前もノッてきたねーという感じで)

ボ:(後ろ向きながら黒板書いてる演技をする)まず徳川家康が...
ツ:(ノート書くふりして、こっそりお絵描きしてる)
ボ:徳川幕府を開いて......って、おいそこー、何してんねん
ツ:(慌ててノート隠す)
ボ:(ノート奪って、開いて)絵描いてるやないか。いま美術の時間とちゃうやろ
ツ:…。先生ぼくどうしても将来、漫画家になりたくて、そしたら学校の授業も無駄に思えてきて、...ごめんなさい
ボ:反省するのそこちゃうやろ
ツ:え?
ボ:お前の大事な夢やろ。好きなだけ描いたらええ
ツ:先生...
ボ:俺はええ。けどな、国語の鬼教師・神埼にそれ通用すると思ってのんか
ツ:...。どういう意味?
ボ:バレずに描けって言ってるんや
ツ:そんなこと言ったって、今だってすぐ先生に見つかったし
ボ:はい、ステップ1、まずは授業をしている先生の絵を描く
ツ:(ささっと描く仕草)
ボ:ステップ2、その隣に自分の描きたい絵を描く
ツ:(ささっと描く仕草)
ボ:これで、いつ先生が内職に気づいても、ノートを見たら、自分の似顔絵を発見することになるやろ(台詞と並行してそれぞれの仕草を演じながら)
ツ:...(腕組みして考え込む)
ボ:神埼かて、人の子や。モデルにされてるって知ったら嬉しなって、スルーしてくれるやろがい!
ツ:先生!
ボ:激似の神埼、俺にも見してや

ツ:いや説得力が強すぎるねん。もうええわ
ボ・ツ:どうもありがとうございました

台本:西部湯瓜
監修:五次元レベル