【連載小説】たましいのみなと vol.2
廊下を渡った角の台所に入って、冷蔵庫からオロナミンCを取り出した。
特別好きだと言ったこともないけれど、子供の頃からずっと、じいちゃんの家の冷蔵庫には僕のためにオロナミンCが常備されているのだ。
栓を開けて、ゴミ箱の横にぶら下がったコンビニ袋にそれを投げ入れ、暖簾をくぐり廊下の先を進んでいく。
中庭に射す陽の光は、いかにも古めかしい造作で植えられた草木を照らしている。
まるで、この家の中だけ、時が止まっていると錯覚しそうなほど閑静な佇まいで、この箱庭は今日も輝いている。
風の音も聴こえない渡り廊下に、僕の歩く音だけが響く。
踵の重さに床がずしりと音を鳴らし、つま先が離れる時には小さく囁く。
けれど不思議と、気味の悪さはどこにもない。
この家は、どこもかしこも、ただひたすらにあたたかい空気が漂っているのだ。
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