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私立恵比寿中学vs claquepot

エビ中にハマっている。

この書き出しを始めた頃、まだ季節は夏に入る前。クーラをつけるか付けないか。そんなことを考えているような季節だった。
気がつけばこたつを出し、冬布団も出し、冬の訪れを肌で感じている。

先日、今年初めてのヒートテックに袖を通し、少しの静電気で『あぁ、冬が来るな』と、そんなところでも季節の移ろいを感じた。

エビ中にハマっている。

今年最初のヒートテックで出かけた先は、私立恵比寿中学 対バンZeppツアーの東京公演。
羽田で岡崎体育を見て、今回はクラポ兄さんとの対バンを拝見した。対バン発表が出た時、本当に存じ上げなくて曲もほぼ予習無しで望んだがまぁ、楽しかった。

エビ中は端的に言うと『俺の好きなエビ中』が詰まっていて、その一端をになったのがクラポ兄さんだった。

Da-iCEさんのイメージから、ダンスミュージックをイメージして言ったし、実際と大きな括りで言えばそうなのだろう。でも、曲の中に一癖も二癖もあって、ほぼ曲名が分からないながらも言葉にしようと思う。

【claquepot】
まず、いい音楽とはなんだろう。
歌詞、リズム感、アーティスト、価値観や背景、ライブ演出、その全てが正解だが、個人的に『うわっ、めっちゃいい』となるのは、酒が飲みたくなるかどうかだ。

前述した『好き』は個人の価値観、あるいはアーティストの才能や努力に対して賛美が送られる中、その全てをとっぱらい『気持ちいいから酒が飲みたい』になる音楽は、DNAレベルで音楽の細胞が刺激される。
SNSで多く発信され、再生数が多い曲もいい曲なのだろうが、ラジオなどを流していた時に、イントロ1秒で耳を惹き付けられる曲は言語の範疇を簡単に超えてしまう何かがある。

クラポ兄さんは完全にそれだった。
体が動く。押し付けがましいキックも少なく、心地よいドラムと、めちゃくちゃ上手いベースが全部引っ張っていく。
ドラムとベースとキーボード主体で、多少のかぶせはあったにせよ、あれだけ多彩なアプローチができることに驚いた。

完璧なリズムに完璧に入ってくるご本人様。
メンバー含めて天才しかいなかったステージ。

作曲をクラポ兄さんが全て担っていると考えると、神の領域の話になってくる。(実際どこまでタッチしてるんですか?まさかアレンジまでやってないですよね??)
基本四つ打ちなのだけど、ベースとなるリズムに対するアプローチにびっくりしたし、安本さんも言ってたsweet spotとかなんなんですかあの曲は。最高じゃないっすか。

あと、歌。歌が上手。
上手というか主張が強くなく、全部ひっくるめて音楽になってる。

ライブを見ている最中にライブハウスの閉鎖的空間で聞くのも、部屋でうっすら流して聞くのもどちらも正解だなと思った。
音楽は自分から進んでき聞きに行く人と、なんとなく生活の中で流れる人がいて、後者の方が大半なんだろうと思う。

どちらかが際立つと、どちらかの要素が薄くなり、ライブで好きな曲はその感情の延長線で聞くことが多い自分にとって、そのどちらも成り立つ曲があるということは結構な衝撃だった。

ほんで、パッケージとしての曲としてもいいもんだからずるい。マジでずるい。
酒が飲みたい。でかい音で聴きながらいっぱい600円のたっかいビールに課金して、『音楽って実は最高なんじゃないか?』と自分の価値観と向き合い、その先で固い握手を交わしたい。
好きなアーティストは沢山いるが、自分がそう感じたのは、lyrical schoolと春先の野音でみたくるり。3人目がクラポだった。

東京在住でよかった。
未だ地元に住んでいたら、広大な田畑を耕し畑いっぱいピーマンを作っているところだった。

近々アルバムが出るということですが、恐らくワンマン行くと思います。

【私立恵比寿中学】
いい音楽の条件として『酒が飲みたい』をあげたが、対していいアイドルとはなんだろうか?と言う質問を投げかける。アルコールはあかんよ。中学生だしね。(今度日本酒出るけどね)

自分の中でいいアイドルは『メディアとして機能してるか』が大きい。
ジャンルとしてアイドルが語られる場面が数多くあるが、アイドルって形態のひとつじゃないですか。
チープなアイドルソングで浮かぶのっていわゆるポップスの部類であり、細分化され様々なジャンルをやるアイドルがいるのに、そのすべでか『アイドル』として括られる。どのジャンルの曲をやっていても『アイドル』と括られるのは面白いし、そこがアイドルの大きな魅力だ。

自分が興味なかったようなジャンルにアイドルを通して触れ、そこのルーツを探ることで好きな音楽が増える。この構図は『メディア』と言って差し支えないと思う。

エビ中にはメディアたる側面を強く感じているし、実際色んなジャンルの曲持ってるし、それを本人たちのポテンシャルでしっかりオリジナルにしてるからすごい。だから好き。

1曲目のラブスマと、2曲目のSHAKE!SHAKE!はジャンル分けすると全然違うわけだけど、等しく好きだし等しく最高だし等しく泣ける。
SHAKE!SHAKE!号泣しましたからね。

SHAKE!SHAKE!は小林歌穂さん大活躍な曲で、『あ、小林歌穂さんのパートだ!あ、ここもだ。え次も?』と頭が混乱しながら、楽しそうに歌う姿を見て号泣した。

9人の完璧な状態で見たエビ中って、実は初めてライブを見たハマフェス以来で、ライブに復帰した小林歌穂さんと、歌唱をしている真山が見れた事が嬉しかった。

SHAKE!SHAKE!ライブ映像では繰り返し見ていたけど、実際ライブで聞いた時の気持ちよさがエグかった。
体動いちゃう。ライブ未体験の状態でも大概好きだったけど、ライブ経験しちゃったらダメだね。毎回セトリに入れて欲しい。

9人のジャンプも凄かった。
ジャンプもライブで見るのは初めてだった。

話は変わりますが、安本彩花さんって凄いんですよ?(話変わってない)
ジャンプのBメロ。あんな矢継ぎ早に言葉が並ぶ歌詞をしっかり聞き取れる状態で、感情を乗せて歌うって本当にすごい。
歌が上手いのはもちろん知ってたんですけど、彼女に対する歌のうまさのベクトルが増えてしまいました。

あと、9人で歌うジャンプの力強さに圧倒されてジャンプでもずっと泣いてた。本当に。たくさんのオタクたちに言われて来ただろうけど、本当にジャンプがエビ中の所に来たのは、運命だしその運命に最大限の感謝を送りたい。

MCはいつもながらグダグダで、その空気感が本当に楽しくてMCだけ集めた音源販売して欲しい。絶対買う。
手からサラミの匂いがしてる話を冒頭でして、それを最後まで引っ張るアイドルって最高じゃない?
そんな話をしていた小久保ですが、70点で笑顔で運ばれていきました。

1番泣いたのは宇宙は砂時計です。ありがとうこざいます。
チャットモンチーに染まるよという曲があって、その曲はラストの『嫌わないでよ。忘れないでよ。』の歌詞に向けて、序盤から感情を高めていく曲だ。

積み重ねがあるからこそ、シンプルな言葉に重みがあるし、響いてしまうのだが、宇宙は砂時計の『意味の無い空想を僕はまだ描けるんだな』の歌詞に向けて感情が高ぶる。

希望にも取れるし、諦めやそれに近似した達観にも取れる。

そこの歌詞は真山のパートなのだけど、その日1番の気合いの入った歌唱だったし、完璧真山ちゃんだった。
ライブへの復帰もあるが、真山の年齢的な所を踏まえて響いてしまった。

真山は1度アイドルを辞めることを辞め、今もまだ活動してくれている(本当に、本当に辞めることを辞めてくれてありがとう)
1度辞めることを考えた先、後輩達が多く入ってきて、新陳代謝の途中にいる真山。
1度答えを出し切ろうとして、まだ留まることにした真山。

1度諦めた立ち位置から、見える景色は変わっているはずなのだが、ひなたが卒業してしまう空白を見つめていている。
その「意味の無い空想」を「意味の無い」でとめず、「描けたこと」に賛美を送る歌詞が、ご本人の中に色濃く残っていたらいいなと思う。

というクソデカ感情を抱えて、禁断のカルマに突入する訳だが、イントロがなった瞬間に会場がざわめいた。そのざわめきの1部は紛れもない私だ。ひぇぇぇぇ、カルマ...。

禁断のカルマの逆説的引用がめちゃくちゃ好きです。
世間的に「心が動いたら浮気」とか「意地悪だけど気持ちは私にあるから」とか、心の方が重視されがちだし、実際に本心より価値のあるものは無いし、それと同じくらい残酷なこともない。

この価値観を持った人間が「心だけだったら許してくれますか」と聞いたらぶっ刺さってしまうに決まってる。
これはまぁ、恋愛禁止のアイドルに歌わせる事でメタ表現になっているわけだけど、全部の要素が噛み合って最高だなと改めて思った。

そして小林歌穂さんですよ!おまたせしました。小林歌穂さんのターンでした!

ピックアップする点は1つ。
横顔、首筋に手で作った牙を当てる振り。ヴァンパイアなので首筋に噛み付いて血を吸うわけですが、美しかった。

髪で表情が見えないけれど、その向こうの表情を想像してしまい、1人でドキドキしていました。
受け入れているのか、笑っているのか。
髪の長さに関わらず、表情が見えないってところがポイントで、同じように表情を想像したファミリーは多いと思うのだけど、その想像は実際より多くのことを考え、背景を見ようとし、現実異常の情報を脳内に流す。

ひとつを見せないことで、多くを見せる。

もうここだけとっても芸術じゃん。
最高じゃん。

って思っていたら、本編が終わってました。
タイムパラドックス起こしてもいいからライブの冒頭に連れ戻してくれないかな。

最後はクラポ兄さんを引き込んでのヘローだったんだけど、ヘローの曲がいいのは周知の事実なので、多くは語りません。

聞けって話です。

曲の構造的にソロパートが多くて、全員で歌を回しながらクラポさんがハモリなどで入ってくる形でのコラボだったんですが、メンバー一人一人との向き合い方が違ってとても良かったです。

あやちゃんに対しては真正面から。
ののかに対しては少し屈んで目線を合わせて。

美怜ちゃんが言ってたけど、私もこの人に曲を書いてもらいたいです。

対バンイベントってアーティスト単位で言ったら短い時間で、同じ金額払うならワンマンに行った方がいいと思うし、『ワンマンの焼き増しだったな』という印象を受けるライブも多い中、ここまで対バンとしての意味を見出すイベントってほんとに貴重だと思いました。

ほんとに行ってよかった。
行けてよかった。

クラポさんには本当に曲を書いて欲しいし、また対バンして欲しい。

『クラポ知らないからチケットあるけど干すか』

って声をTwitterでちらほら見かけたんだけど、本当に。ご愁傷さまでした。最高of最高でした。

いい音楽とは
って永遠のテーマだと思うし、それは好きなジャンルやアーティストに固執すればする程本質から遠ざかっていく気がするけど、今回の対バンを見て、自分のいい音楽の形が昨日の2時間に詰まっていたなと強く感じた次第です。

手からサラミの匂いがするので寝ます
皆様の手からもサラミの匂いがしますように。

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