先生との再会②
今年度、わたしは役職が上がりそれと同時に研修部というところへ配属となった。
研修部といっても係みたいな感じ。
実際は、現場の仕事半分と管理業務半分+職員の研修の計画を立てたり、外部研修に誰を行かせるかといった手配をしている。
今年の八月。
わたしが担当した研修があった。そのお昼休みに皆で仕出し弁当を食べていた時に
会話の流れで、わたしが通っていた塾の名前を耳にした。
会話に加わってみると、どうやら事務の職員がそこの出身。
わたしも通っていた話をすると、衝撃の一言が。
その事務職員が一言。
「ここにいるYさん。Y先生の奥様です。」
Yさんは、今年の4月から中途で入職してくれたパートさん。
4月の一ヶ月だけはわたしの部署で働きその後異動。
関係性が複雑なので整理してお伝えしよう。
わたし
事務職員(わたしとはずっと一緒に仕事してる人で先輩。知らなかったけど塾の先輩でもあった。そして実は先生とずっと家族ぐるみで付き合っていたという人。)
Yさん(先生の奥様。4月からうちの職場に来てくれた。)
嘘でしょ。
先生の奥様がYさん?わたしの研修一日受けさせちゃってごめんなさい。
Yさんに「わたし、Y先生に教えてもらってました!!」と告げる。
しばらくの沈黙の後一言。
「厳しかったでしょう?」
厳しかった?全然そんなことなかった。
「いつも優しくご指導頂きました。」それで、先生は・・・。
これ以上、聞けなかった。
帰り際、事務職員のSさんに呼び止められる。
「先生、亡くなってるの。」
「実は、知ってました。ずっとお参りできたらなって思ってたんですけど、もう連絡先もわからないしなって、ずっと思ってたんです。」
「そっか。じゃあ、一緒にお線香あげに行く?」
「本当ですか?行きたいです!」
中学生の頃の恩師の奥様がうちの職場に4月から来ていたという偶然。
それは何%の確率?
もう引き合わされてるな、そうだよね、先生・・・。
こうして9月に内緒で先生のご自宅に伺った。
事務のSさんと一緒に。
先生の遺影に手を合わせた。
よかった。久しぶりに会えた。亡くなった悲しみよりもそんな気持ちになった。
遺影の先生は、わたしが知っている先生よりも年齢を重ねていたけれど
優しいお顔のままだった。
先生、わざと会わせたでしょう?
そう思った。
この事務のSさんはわたしとずっと仕事をしてきてわたしも何度も助けられた
頼れる姉さん。まさか先輩だったとは思わなかったけど。
Sさんは先生を本当に慕っていて卒後もずっとお付き合いを続け、嫁に行く時も
子どもを産んだ時もずっとずっと家族ぐるみで付き合ってきたのだという。
SさんとYさん(奥様)は本当の親子のよう。
リビングに飾られた、家族写真の数々をわたしに説明してくれる。
わたしが知らなかった、先生のその後の話。
ずっと教育に尽力されていたとのこと。
病気が見つかった時には、もう何もできなかったこと。
わたしがあの日偶然見つけたインスタグラムはやっぱり先生のものだったこと。
わたしが来るということで、手作りのお菓子を作って待っていてくださった奥様。
それをSさんと一緒に子どものように、食べる。
思い出話をするうちにわたしとSさんはすっかり子どもになっていた。
先生が歩み切った人生を写真を見ながら、少しだけ分けてもらった。
どういう偶然なんだろう。本当に偶然なのかな。
偶然じゃないよね。呼んでくれたんでしょう。
帰り際、奥様は手料理など持たせてくれた。
また、葬儀で配布したという先生が生前書いたという詩も頂いた。
中学生だったわたしに教えてくれたことが
ちゃんと素敵な詩になって現れていた。
また、少しだけ泣いた。
風が吹いても、飛ばされないように。
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