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カサブランカ忌



昨日は亡母の誕生日だったようです。今日は27日か、家賃払わないと......あ、今日は27日ということは昨日は26日、あ、母の誕生日だった、という感じで思い出しました。仕方ない、わたくしは逆・林家ペーだから忘れちまっても。

あの人も望まれてこの世に生を受けたわけじゃないんだろうなぁ。戦後すぐとはいえ、父親の違う兄弟姉妹が何人もいる環境で育って。たった一度だけ顔を見たという船乗り(?)の父親のことは「気持ち悪かった」と言っていたっけね。まぁ、そんなことは子供に言うことじゃないよ。本当は父親が欲しかったんだろうなと思うけれど、いてもしょうがない親っていうのもいるわけでして。

不幸な女から生まれたわたくし、今日も空を眺めているーー「鷗が、「女」という字みたいな形で飛んでいました。」ってのは『人間失格』の葉蔵のセリフだけれども、今空を飛んでいるのは名前の分からない鳥と米軍の飛行機。ああ、飛行機は男性名詞か女性名詞か?

母が亡くなって少しして「おかあ、あいつ、生きてていいことなんかあったのかね?」と父が言った。

知らねぇよ、分からねーよ。でもさ、あんた、笑顔を一度も見たことない人と結婚したのかい?たまんねーや。

死ぬ数年前からなぜかカサブランカを育てていたらしい母、父は棺にはカサブランカを絶対に入れると言っていたけれども花が咲く前に死んだ。そして暑い暑い、誕生日前には花を落としてしまった、青々とした葉だけ残して。