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小滝橋異聞 その1

最初に断っておくが、大した話ではない。

いつだったか、稲川淳二氏がtwitterでつぶやいていた怪談の中に、タクシーの運転手が女幽霊を乗せて云々というのがあった。
その場所の描写にどうも聞き覚えがある。

おお、そこ当時住んでいた近所!その幽霊がタクシーから降りた場所って私がよく使ってた道!
よくよく馴染みの、小滝橋のとあるポイントであった。

その大通りのポイントから小道を下って踏切を越えた辺りに、当時住んでいたマンションがあった。
地形的に谷の底に位置するその建物は、ちょっとだけ変わっていたが、その詳細は伏せておく。
こちらで前に『屋根の上』という漫画をアップしているが、その舞台となった建物である。

このマンション、一階でよく住人が変わる部屋があった。
別に妙なことがあるなどの話しは聞かないが、住環境的な要因でもあるのか頻繁に入れ替わる。

ある日帰宅すると、引越しのトラックが横付けになっていた。
また新しい人が入ったようだ。
荷物の搬入で、ちらっと見かけたのは二人の若い女の子。
学生っぽい。
ふうんぐらいの印象で、自分の部屋に戻ってしばらくすると、ドアホンが鳴った。

モニターは無いので、音声のみで応対する。
「下に越してきたものですがご挨拶に」
老人男性の声に聞こえた。
女の子たちの保護者かな?
しかしここは四階である。
普通は両隣り上下階ぐらいの挨拶回りで済ますんじゃないかなあ。
律儀な人だなあ。
などと思いつつ、他人と関わるのが苦手なこともあって、いま手が離せないのでーとか適当に理由をつけてドアホン越しで挨拶を済ませた。

「また改めまして・・・」とその老人は降りて行ったようだったが、そこで、あれ?と思った。
わざわざ四階まで上がってきて、他の部屋は回らないのだろうか?
まるでピンポイントで私の部屋だけに来たみたいだが、この部屋が在宅であることをどうやって知ったんだろうか?
私が帰宅した時、一階で見たのは二人の女の子だけで、他の人間の姿は見ていない。
クローズドな造りなので、外から見ていたとしても、誰がどの部屋に入ったかは分からない。

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そもそも、本当に一階の女の子たちの家族だったんだろうか。
どうやら住んでいるのは彼女たちだけのようだし、それ以降改めて挨拶に来る者もいなかった。

果たしてあの時ドアを開けていたら、誰が立っていたのだろう。


話はこれで終わりではない。
後日、ゾッとする事が起きるのだ。

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