見出し画像

少女革命ウテナ感想 今更観て全身に「革命」を受けた話

※超ネタバレあり

私は、今まで少年漫画、映画や時代劇などを通って生きてきました。男性的と言われるものを好み、私が生来男性だったらよかったのにとさえ思いました。

その事情から少女漫画的なコンテンツに距離を置いていたのですが、      時が経ち「ガラスの仮面」「エースをねらえ」に相対することになった時、「少女漫画は戦わない」という偏見がバッキバキに崩れ、その戦いと心情の美麗なる記録である少女漫画に深い憧れと魅力を感じるようになりました。

その一環で、あまりの有名さに尻込みしていた、かの名高き「少女革命ウテナ」(1997)の世界に足を踏み入れる決意をしたのです。

ちなみにアニメ版をさっき、見終わりました。見たてホヤホヤの感想です。

画像1

少女革命ウテナ」(1997)原作「ビーパパス」監督・幾原邦彦

※画像引用(ヘッダー) dアニメストア

あらすじ
幼い頃に自分を助けてくれた王子様に憧れ、自分も王子様になりたいと願うようになった少女・天上ウテナは、入学した鳳学園で「薔薇の花嫁」と呼ばれる少女・姫宮アンシーと出会う。エンゲージした者に「永遠」に至る「世界を革命する力」を与えるという「薔薇の花嫁」をかけて戦い続ける生徒会役員(デュエリスト)たちは、ウテナがかつて王子様から貰った指輪と同じ「薔薇の刻印」と呼ばれる指輪を持っていた。ウテナもまたこの決闘ゲームに巻き込まれ、その背後にある「世界の果て」へと迫っていく…。(wiki)より

世界を革命した物語

「決闘」「薔薇」「学園・生徒会」「王子様・お姫様」という、コテコテのワードが立ち並ぶこの物語世界を軸として、もう一つ「現実社会」を描いているのがこの作品でした。学園のみを舞台とした人間関係が続いていきます。

王子様とお姫様の幻想的なシステムと、恋愛や依存が一緒くたになってしまっているのがこの世界のミソです。性欲も恋愛も庇護欲も依存も、全てこのシステムの中で運営されていき、その結果、やはりボロが出るのです。

関係や認識は歪み、樹里や枝織、ウテナやアンシーらは苦しみます。登場人物は全員、世界のシステムの中で苦しみながら受け入れようとしています。これがもう現実の社会ですよね。兄と妹の恋愛が多いのは、そのシステムから一番にはじき出されるものだからだろうと思います。お姫様であるために誰かを利用し、王子様であるために誰かを利用する、

そうしなければ生きられない世界で、しかしウテナが最後に教えてくれるのはタイトル通り「革命」でした。

当初ウテナは女の子でありながら王子様たろうとし、システムの逆を突こうとしましたが、38話でそれは失敗しました。なぜなら、王子様もまた強固で変化を寄せ付けず、永遠に続くシステムの一部でしかないからです。

しかし最後までウテナは王子様になろうとした。そして最後は、華麗にお姫様を助けて守る王子様ではなく、手をボロボロにして泣きながら友人に手を伸ばした一人の人間になった。その手を伸ばしたという事実がアンシーの世界に「革命」を起こしたのです。「薔薇の花嫁」=「魔女」という役割を自ら預かり、システムの礎として生きてきたアンシーの世界からシステムを取り除き、一人の人間にした。

この「助かりたいと望んでいるだろうから助ける」じゃなくて、「自分がどうしても助けたいと思うから助けようとする」ってのもミソなんですよ〜〜〜そして失敗する。助けたいと思って助けられなかった。守ろうと思って守れなかった。

そうなんですよ!ウテナは失敗するんです。王子様になれなかった。アンシーを救えなかった。

しかし「救う」=「救われる」がイコールになるのって、おとぎ話なシステム上のものなんですよ。ウテナから見たら「救えなかった」のに、アンシーは「救われている」んですよね。つまり、ウテナはひたむきに努力した結果、アンシーの心に変化を促し、自立を促すきっかけになったんです。

それって、王子様でもお姫様でもなく「友人」ですよね。


学園は多分永遠にあのままで、アンシーだけが歳をとっていくんでしょう。関係はあまり変わる事なく、暁生のような意味でない、いつか本当の意味で「大人になる」その日が来るまで。

メタファーのような、そうでないようなものが沢山出てくる世界でしたが、多分全てはあの世界の常識なのだろうと思います。だって「この世界は君の見ている世界でしかない」から。そんな不安定だけど緻密な世界観がなんとも言えず魅力的でした。そしてウテナとアンシーの物語にあのような形で幕を下ろしてくれたことが、本当に嬉しい。

見終わったばかりで全く纏まらないですが、これをもって感想とさせていただきたいです。ウテナを作ってくれた人々、本当にありがとうございました。23年後に38話と最終回を観てボロ泣きしています。

おまけ

ウテナを私なりにまとめるとこうなります。

男は王子様になり、女はお姫様になるしかない世界に、王子様になりたいと願う女の子が現れます。そこには救いを求めているであろうお姫様がいました。

女の子はお姫様を守ろうとします。そうすることによって、自分は王子様になれるからです。しかし、お姫様の兄である世界の王子様は、女の子をお姫様にしようと思っていました。

世界の王子様は、世界の全ての女の子を守ろうと思っていました。だからお姫様にしようと思っていました。妹のことも。

女の子は世界の王子様に魅力を感じました。しかし、後ろ髪を引かれながらもお姫様でなく、お姫様のための王子様でいようとしました。

しかし王子様の妹であるお姫様は「救われなくていい、守られなくていい」とそれを拒みました。お姫様は魔女だったのです。

王子様であることを拒まれ絶望する女の子。しかし女の子はそこで世界に革命を起こしました。王子様でなくとも、お姫様でなくとも、ただ一人の女の子として友人である魔女を救おうとして消えてしまいました。

しかし魔女は救われました。ただ一人の女の子になったのです。

お姫様であり魔女であったただ一人の女の子は、王子様とお姫様しか生きられない世界を後にして、対等な友情だけを持ち、かけがえのない友人であるもう一人の女の子を探す旅に出ました。

つづく




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?