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「おかえりアリス」のあとがきを読んで

昨日「おかえりアリス」を読んで大変滾った。しかし巻末のあとがきを読んで、少しハッとした。


作者の押見さんは「性」についての漫画を沢山描いている。彼の作品を初めて読んだのは中学生のとき。「悪の華」を古本屋で立ち読みし、かつて感じたことのない興奮を感じたのを未だに覚えている。


当時の私の中の押見像は「性への興味が並外れている」人だった。性に関するドキドキとか、妖しさとか、そういうものがとても好きで、だからこそドキドキするような作品を沢山描いているんだと思っていた。でも大きく違ったみたいだ。


あとがきを読んで、どうも押見さんの性を描く原動力は「性への興味」というよりも「性への恐怖」と言った方が正しいことに気付く。押見さんは自分が「性欲を持った男」であることが辛い、とあとがきで語っていた。彼は性欲が旺盛なのではなく、むしろ逆で、不能で悩んでいたのだった。

イメージがひっくり返されて驚いた。結果的に「性に執着している」という点では一緒だけれど、根本が全然違う。喜び、では無く苦しみ。「傷ついた記憶」で押見さんは漫画を描いていたのだった。


この発見は、私の中で光明だった。私も漫画を描いているが、自分の一番伝えたいこと、表現したいことが分からず、長い間筆が止まっていた。キラキラした人間であると思われたかったため、キラキラした漫画を描こうとし、上手くいってなかった。

でも押見さんのあとがきを読んで、自身の苦しみを生涯のテーマにする方法もあるのか…!と思った。自分の弱さを人に晒すのはとても勇気がいるけれど、そっちの方が「真実」が書ける。深みのある、良い漫画が描けるのだな、と思った。


とりあえず「おかえりアリス」二巻が楽しみ。


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