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2024/03/03 胃カメラの日

健康診断で引っかかってしまって、胃カメラの検査を受けることになった。

一月中旬に診察を受けて、スケジュールの都合がなかなか合わなくて、検査の日程が三月になってしまった。

とても腕が良いと評判のクリニックで、なかなか空いている日がない、というのもあった。

今回、ちょっと気が重いのは、鼻からの胃カメラではなく、口から入れる胃カメラでの検査だということ。

鼻から入れるタイプの胃カメラは、コロナ以降使わなくなってしまったそう。

理由は、くしゃみが出てしまうことがあって、飛沫感染のリスクが高くなるから、とのことだった。

鎮静剤をしっかり使うので、口から入れる胃カメラでも楽に検査を受けられる、と、Googleでのコメントはとても良いものが多かったのだけれど……。

しかし、やっぱり不安だった。

少し早めに着いて、待合室に案内された。

待合室が個室になっていて、待っている間はテレビが見られるようになっていた。

自宅にテレビを置いていないので、こうしてテレビを見る機会があると嬉しい。

リモコンで電源を入れて、チャンネルを切り替えて番組を選んでいると、看護婦さんが小さなトレイを手にして戻ってきた。

鎮静剤の点滴を繋ぐ針を左手に入れるのだという。

針が少し太くて、刺す時だけは痛かったけれど、半透明の柔らかなテープで動かないように固定をすると大丈夫だった。

そのあとしばらくは、時間があった。

チャンネルを選んでいて、ふと目に止まったのは、ガラスでできた透明な椅子だった。

その番組は、日曜美術館だった。

インテリアデザイナーの倉俣 史朗の作品を紹介していたのだった。

透明な椅子は、野原に置かれていた。

座面も、肘掛けも、背もたれも、すべてが透明なガラスで出来ていた。

そのデザインの、非現実的な雰囲気に惹かれて、番組に引き込まれて見ていた。

倉俣さんは、子供の頃、東京都・本郷にある理化学研究所の社宅で育った、というエピソードに心を惹かれた。

身近に、本物のガラスの実験器具がある環境で育った、というのが、とてもいいな、と思った。

自分も、ガラスでできたビーカーやフラスコ、試験管を見ているのが大好きで、4歳から5歳くらいの頃はよく教育テレビの理科の実験の番組を見ていたからだった。

実験器具の不思議な形、透明なガラスが光を含んで輝く様子に心をときめかせて、テレビの真ん前に座って凝視していた。

それこそブラウン管から30センチくらいしか離れていないところまで近づいて見るので、よく、目が悪くなるから!と、母親に引きずられてテレビから引き離されていた。

私からすると、身の回りに本物のガラスの実験器具がたくさんある環境で過ごせるなんて、どれだけエキサイティングなことだろう!と、倉俣さんの生い立ちを聞いただけでわくわくしてしまった。

そうして、しばらく番組を見ていたら胃カメラの検査の時間になった。

(検査の様子は、あえて書きません。ひとつだけ言うと、本当にしっかり鎮静剤が効いて、全く意識がない状態で検査を受けたので、苦しい思いはしませんでした。とはいえ、多少なりとも検査室の様子を書いてしまうと、怖いなと感じる方もいらっしゃると思うので……。カットしておきます)

「検査が終わりましたよ」と、看護婦さんに声をかけられて、気がついたら本当に全てが終わっていたので、拍子抜けした。

本当に全然苦しい思いはしなかったので、検査日の当日になるまで、ずっとかすかに怖がっていたのは何だったんだろう……と思った。

一番大変なところは終わったので、あとはしばらく治療をすれば大丈夫。

いろいろ、少しずつ良くなってゆく。

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