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【ショートショート】伝書鳩パーティ ー ビジネス編

 ある会社が、創立十周年を迎えた。
 会社の業績は上々であったが、そんな中で社員役員の資質には変化があった。
 自ら考えて仕事をより良い形で進めるより、上役の指示を無難に実行しようという方向に傾いていた。

 いわば「伝書鳩」化していたのだ。

 その指示も、しばしば伝わる過程で本来の主旨を欠いたものになることがあったが、社内の人々は好調な業績に多少のことには目をつぶった。

 そんな時、社長は関係者を招待して創立十周年記念パーティーを開催しようと、腹心である専務に準備を指示した。
「出席者は100名の立食パーティー。予算は200万円」
 専務は同じ内容を部長に伝えたが、滑舌のせいで一部に変化が生じた。
「出席者は100名のいっしょくパーティー。予算は200万円」
 部長は「いっしょくパーティー」とは何かと思ったが、実行する者が調べればいいだろうとそのまま課長に伝えた。
 課長ば部長の指示を
「出席者は100名の一食パーティー。予算は200万円」
 と判断した。
 客に提供するメニューは一品だけで、その分金をかけるという意味だと考えたのだ。
 課長は新入社員にそのまま指示を伝えた。
 新入社員は指示の前半については課長の意図を正確に受け止めたが、後半に独自の注釈を付けてしまった。
「出席者は100名の一食パーティー。予算は200万円(一人前)」

 かくして、パーティー会場には贅沢に純金を散らした鯛の尾頭付きだけが並び、後日会社には2億円の請求書が届いて…

 …債務超過に陥り、そのまま倒産した。 


たはらかにさんの「#毎週ショートショートnote」企画参加作です。
お題は「伝書鳩パーティー」。
誰が考えても、伝書鳩が集ってパーティーをする話になりそうで、そこからなんとか離れつつ、お題に沿った内容にするのが難しかったです。
😣

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完読してくださる読者様も現れ、とても嬉しいです。
1話目だけでもいいので読んでいただければ幸いです。
よろしくお願いします!

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