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プリンセスオブザイヤー2022

対局は終電間際に終わった。熱がこもっていた事が気持ちよくて、もう少し彼女と居たいと思った。
「お店の歓迎会なんだけど、飲む?佐月もおいでよ!」
悔しいはずなのに、明るく声を掛けてくれた先輩に甘えて、夜も深い中ついて行った。

その飲み会はとても楽しくて、彼女がお店で愛されている様子が伝わってきた。彼女も楽しそうだった。
眠くなった私は、タクシーで帰りながら今日を振り返っていた。普段振り返りが終わるまで眠ることが出来ないが、この日はストンと眠りに落ちた────


もう十何年プロやってきて、
まだタイトル…とれません。
また勉強します。応援お願いします。

朝起きて、水崎ともみのその言葉を声に出して繰り返してみると何故か泣けてきた。

自分の事じゃないのに。

一番になれなければ意味が無いことを私たちは知っている。
タイトルは特別だ。

優勝争いに絡んでいればいるだけ、目の前で手からこぼれ落ちるその瞬間がはっきりすればするだけ「悔しい」「不甲斐ない」という気持ちが増幅することを知っている。

水崎が優勝を手放したのは、きっとこの放銃だった。

最終戦少し不利だが田なべとの着順勝負東2局。
自身はリーチ赤ドラの5200点のテンパイ。
あがれば田なべを躱して一気に優勝が見える。
しかし、優勝争いの相手ですらない私のリーチの一発目。
かなり危険な3mを切るかどうか。


水崎の選択は勝負を決めに行く打3m。
この選択が間違っているとは思えないのだけれど…
結果は12000の放銃となった。

ここじゃなかった勝負どころで打ってしまい眠れない夜を過ごし、自分を責め続けた経験が私にも数え切れない程ある。
だから、痛いほどに分かるこの気持ちを、同卓者でありながらも自分に重ね合わせて私は胸をギュッと掴まれたような気持ちになってしまった。


プリンセスオブザイヤー2022決勝戦

何枚でも
ほら何枚でも
自信がないから描いてきたんだよ
何回でも
ほら何回でも
積み上げてきたことが武器になる
周りを見たって
誰と比べたって
僕にしかできないことはなんだ
今でも自信なんかない
それでも
YOASOBI 群青

https://youtu.be/Y4nEEZwckuU

不安になると、この歌詞が頭の中で再生される。

全然関係ないけど、年末の紅白歌合戦でこの曲を聴いて泣いていたら「普通のサラリーマンにはこの曲の良さは全くわからない」と冷静に返されたことを思い出して、少し機嫌が悪くなってきた。

話を戻そう。

私はとにかく自分の麻雀に自信がない。

いつまで経っても同じミスを繰り返す。
間違えているんじゃないか?
何を切ればいいんだろうか?どこへ向かえばいいんだろうか?押していいのか?引かないといけないのか?手組はこれでいいのか?
あ、字の切り順間違えた。あ、こっちを切らないとだめだった。見合ってない手で押してしまった...なにを、やってるんだ!
そうして私は自分が崩れていく姿を何度も何度も反覆してきた。


プリンセスリーグという名前で始まったこの対局は今年からオールカマーとなった。その始まりから比べると私の麻雀はずいぶんと成長したように思う。

自分が今どういう打ち手かは分からないけれど、どういう打ち手「だった」かは知っている。

ドラポンに「私がみんなを守るんだ!」と1000点の二向聴から押して押して押していた。
アガりに積極的に向かいすぎて、見合ってないところから放銃していた。
打点の見える手組をしていなかった。
反対に追えない三色や一通にこだわりすぎていた。

麻雀のことを少しずつ理解していく中で一つ一つを完璧ではないけれど、修正できてきた…と信じたい。
その中でどうしても直らないものがある。

大事なところで打ってはいけない牌を河に放ってしまう見合ってない押しだ。

タチが悪いのは、自分でも危ない。と気づいているところだ。だいたいの場合、打って痛い思いをしてから
「あぁ…今日もやってしまった…」
なぜ今日は通ると思ったのか。
5秒前の自分の頭をバチンと叩く。
同卓者をギョッとさせるであろうから実際には叩かないのだけれど。


直近3回の私の大ミスをあげるとする。

先日の女流リーグ

リーチも入っていて、
索子の染め手の押しも入っているにも関わらず、
「今なら間に合うかもしれない」
というよく分からない希望的観測から、9sを切る図



「ロン。8000」

わ!わわ!やってしまった!!わーー!
ってなってるけど冷静を装っている図


夕刊フジ杯

親がマンズの染め手で、上家はとても変な捨て牌で国士もあるなあ。と思っていたら、上家から白のポンがはいって「国士じゃないのかあー」

さっきまで降りようと思っていたのに何故か手を進めたくなってしまい、ドラも切られているから気をつけないとと思っていたことを忘れて、
親に先に!と9mで上家に役2混一色チャンタに打ち上げてしまう。

もう一度みてみても、捨て牌めちゃめちゃヤバそうだよねw

先日のプリンセスオブザイヤーベスト8

トップをとることが出来れば1戦目のラスを帳消しにしてトーナメントの2位争いに参加出来る場面。
私は自分の頭の中で3回自分に言い聞かせた。
「今日はこのトップを逃さないように注意しないとダメだよ?」
嵌4mのチーが入って、とにかくなんか早そうでヤバそうな捨て牌に…

「まだでありますように。まだなら平気」
とテンパイなら危険過ぎる1枚を切る図



「ロン。8000!」

みんなは仕方ないというけれど、
私はこういうのを気をつけよう気をつけようと思っているのだから、
いつまで経っても出来ないのは本当にダメだと思う。


結果がすべてどれも最悪なのだけれど、どの半荘でも私は後悔の残る一打を選択し続けてしまう。

水崎さんが涙ながらにカメラに向かってしゃべるその言葉が、だからこそ私の胸に刺さった。


さて、冒頭のセリフからみてわかる通り、優勝者一人を除く我々敗者の暗い雰囲気が続くインタビューだったが、負けたにも関わらず私は妙にスッキリしていた。
負けて、スッキリとしていたのは多分今までの麻雀人生の中で初めてだと思う。
私のアガりは4半荘中僅か5回だったのだけれど、今回プリンセスオブザイヤーで、私は珍しく自分に悔いが残る選択をほとんどしなかったように思う。

結果的に手痛い放銃をしなかったからなのかもしれないが、間違えたと思える選択をした後もそれを立て直すにはどうしたらいいかを一度頭の中でゆっくりと考えられたのだ。


実らなかったたくさんの勝負手の裏側で、

2つくらいあがれてたら優勝あったなー。の思い出のテンパイ達
(反省点探しのスクショのついでに撮りましたw)

私の中で何回も何回も積み上げてきた押し引きや手組をきちんと出せた4半荘だったように思った。

成長は終わりではないし、きっとこれからもたくさんの後悔をしてしまうと思う。

それでも、これからも何枚も何枚も描き続けたいし、まだまだ足りないことは沢山あるのだけど、いつか自信をもって麻雀を打てるようになれる日が来るかもしれないな。
と、初めてそう自分で思える決勝戦となった。


最後になりましたが、前半しっかりと押し切り、最後は有利な条件になってからは守りを徹底して優勝を自らの手で掴み取った田なべさん、強かったです!
改めてプリンセスオブザイヤー2022に輝いた田なべもえプロおめでとうございます😊

そして、ご視聴頂いた皆様、応援くださった皆様、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

私も桃さんにティアラつけてもらいたかったっ!やきもち!笑
田なべさんおめでとー!

なんだかまとまりの無い文章になってしまった…。
最後までお読みいただいてありがとうございました💦

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