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【Q&A】

【Q&A】

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●Q.国立奥多摩美術館は、どんな環境にあり、どんな会場なのか教えてください。

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佐塚:少し行くと山梨に抜けてしまうギリギリ東京にあります。最寄駅は「JR軍畑駅」です。このへんの観光のスタート地「御岳駅」の2つ手前の駅。都心から1・2時間という距離で自然豊かな山・川があり、都心の人が日帰りでアウトドアを楽しめる場所になっています。春・夏・秋などの気持のよいシーズンの休日には手軽に自然を楽しもうという方々で賑わいます。会場は、そのトレッキングルートの1つ、軍畑駅から高水山に行くルートの途中にあります。休日には会場前を、カラフルなアウトドアウェアに身を包んだ方々が「ここは何なんだ?」と不思議そうな顔をして通り過ぎていきます。

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●Q.会場である旧製作所は、かつて何をしていた場所ですか?

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佐塚:会場となる旧製材所では、山から切り出してきた木々を製材して、建築材の板材などにしていました。このあたりは、豊かな山々に囲まれ、昔は林業で栄えたと聞きます。しかし、木材が外国から輸入されるようになり、コストの面では勝てない日本の林業が、産業として成り立たなくなったという、どこでも聞く様な形で、この地の山々も人の手が入らなくなり、それに関わる施設もなくなっていったようです。

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●Q.会場は、自然とどのように共存しているのでしょうか。

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佐塚:蛍が飛び交う小川の上で、蛍光灯の灯りの下、暗闇の中を手探りで作品制作しているような場所が会場です。

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●Q.会場はどんな建物で、旧製作所からどのような空間に変わったのでしょうか。

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佐塚:会場となる元製材所は、時代の流れ、産業の拡大によって、増築・増築・また増築を繰り返し、そして廃業。フランケンシュタインのミイラの様になっていました。そこから「国立奥多摩美術館」という命の水を飲んでイキイキとしたゾンビになったという感じの会場です。

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●Q.観賞者が直接作家や作品と出合うことで、どのような“結びつき”を生む場にしたいとお考えですか?

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佐塚:作家は10・20・30年、もしくは一生をかけて、大きな作品・物語を作っていきます。

1回の展覧会、1つの作品で見れるのはその断片だと思います。だからこそ、この展覧会での出会いが次につながり、見る側も10・20・30年のスパンで作家が作る作品・物語を追いかけてもらえるような関係が生まれれば素敵な事だと思っています。

会期中、もちろん作家もできるだけ会場にいると思います。どんどん話しかけていただければ幸いです。

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●Q.国立奥多摩美術館で、観賞者には何を感じて、どんな可能性を見いだしてほしいとお考えですか。

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佐塚:すべてのモノに理由や理屈を求められ、ネットで検索してしまえば、わかった様な気になれる。情報であふれ、システムが整い、自分という存在を使わなくても物事が進んでいく世界。その中で作家たちは、自分という存在を賭けてこの世界にぶつかり、理由・理屈では手の届かないこの世界が隠し持つ秘密を探りだそうとしている。その秘密はこの世界をよりよい形にする鍵になりえると私は思っています。しかし、そもそも、その鍵は本当はだれもが手にすることができるはずで、その方法は、自分という一個人の心の動きを大切に見つめるという事だと思います。それを実践しその断片的な形を見せてくれているのが作家だと思う。だから、本当にいい作家のいい作品に出会うと、この世界が輝いて見えます。しかし、作家の作品・言葉は、テレビから流れてくる情報の様に親切な形はしていません。面白いところで、笑い声を入れて「ここで面白いこと言ってます。笑ってね。」とか、文字の大きさで情報の強弱を伝えたり。ぼーっとしていても、見る側が何も考えなくてもスルスル入ってくる様な形はしていません。見る側も向かっていって自分をフルに使わないとなにも気が付けない。作品と出合うとは、そんなふうに見る側も試されています。しかしもちろん向かって行っても、つまらない作家も作品もいくらでもある。だが今回の展覧会では、噛めば噛むほど、向かい合えば向かい合うほど、何かが染み出してくる作家を選んだつもりです。自信を持って紹介できる作家。その作品に出会ってほしい。そして、作品だけでわからなければ直接話かけてもらいたいです。それがこの世界の小さな秘密に触れる近道だと思っています。

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