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国立奥多摩美術館館長の他の美術館に行ってきた!(Vol.15)東京国立近代美術館『重要文化財の秘密』


他の美術館に行ってきた!(Vol.15)

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東京国立近代美術館
『重要文化財の秘密』
会期:2023年3月17日〜5月14日
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2023年4月4日(火)晴れ。桜がヒラヒラ舞うなか、国立近代美術館でやっている「重要文化財の秘密」という展覧会に行ってきた。今回のテーマである重要文化財とは、1950年に公布された文化財保護法に基づき、日本国にとって価値があり、永続的に国として守っていく必要があると定めた物を指す。明治以降の絵画・彫刻・工芸で、重要文化財に指定されているのは現在68件。そのうち今回は51作品が展示されている。いまでは美術の教科書で見るような有名な作品ばかりだが、これらが制作された時には、もちろんまだ重要な文化財などではなかった。なかには発表された当初、あまり評価されていなかった作品もある。それが時を経てある時、重要文化財に指定され、国が守るべき宝物になった。いつ、だれが、どのように作り、どのような評価の変遷を得て、いつ重要文化財に指定されたのか。それを知るという事は、その時その時の日本という国の価値観のありようを知る事に繋がる。そもそもこの世に絶対的に普遍的な価値のある物などは存在しない。誤解を恐れず言うなら、価値とは、それにかかわる人々が恣意的につくり出して来たものだし、つくり出して行くものだ。価値は、時代や社会と共に移ろう捉えどころがないもの。その捉えどころがない価値を、国として留める制度として重要文化財指定事業は存在している。だから正直、これが素晴らしいのか、と現在の僕個人の価値観では実感を持てない作品も多数ある。もちろん逆も然り。今の僕が大きく感動する作品も当然ある。美術史とは、人が何に心を動かしてきたのかという心の歴史。それを感じる事ができる面白い展覧会だ。日本国にとって価値あるものとされる作品ばかりが並んでいる今回の展覧会だが、個人の価値観で、これは良い、あれは良くない、と勝手に鑑賞すれば良いと思う。個人的に今回の展覧会では、川合玉堂の「行く春」という作品にとても心動かされた。ちょうど、桜が舞うなか美術館に行ったので、その桜がなんだかこの絵の中から飛び出してきたもののような気がした。【☆9.0】(佐塚真啓)
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「西の風新聞」2023年4月27日 掲載
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